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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第57話 転生者、新たな魔道具を考える

 僕たちはアルスブルクの村へ戻って来た。およそ二週間であるが、前回のフジャイラの民を探す旅と変わらないのに、やけに懐かしい気がした。

 村の入口にはスコッテイ王女とトーリさんが待っていた。カミーラ王女が念話でスコッテイ王女に伝えていたらしい。

 彼らの笑顔で迎えられた。


 「おかえりなさい」

 スコッテイ王女がカミーラ王女と僕に微笑みを向けた。そして、続くカルロスさん、クロードさんに向けられた。眩しい笑顔だった。

 「村は変わりなく?」

 僕が言うと、トーリさんがしっかりした声で答えた。

 「はい、一部、新しく入植した人と最初からいたフジャイラの民で些細な言い争いがありました。どうも、礼儀に対しての考え方に違いがあったようです。とりあえず、私で裁定せず、陛下の帰還を待って沙汰すると言っております」

 「分かりました。詳しいことはトーリさん、後で聞きます。では、それ以外のファビオさんの魔道具とエルザさんの食堂事業はどうですか?」

 「順調のようです。今日あたり、戻られるのではないでしょうか?私が話すより、直接お聞きになった方が早いかもしれません。作業上の問題は発生しておりません」

 「ご苦労様でした。我儘言ってお任せしてすいませんでした。僕個人の問題もこの村の障害も取り除けたと思います」

 「それは良かった。では、少しはゆっくり出来るのですね」

 「はい、そのつもりであります。冬も近づいております。その準備もしなければなりません。手伝ってもらう事は沢山あります」

 僕はトーリさんに笑いかけながら、スコッテイ王女に声をかけた。

 「お留守番、お疲れ様でした。助かりました。ありがとうございます」

 「アルス様、大変でしたって言いたいのですけど、本当に何にもありませんでした。楽しかったですよ」

 「そう言っていただければ心休まります」

 僕はスコッテイ王女にも笑顔を向けた。皆の笑顔を見ているうちに、気持ちも落ち着いてきた。自分を大切にしてくれる村に帰って来た。

 

 家に帰り、カミーラ王女とゆっくりお茶をしていた。

 「やはり、この村は良いですね。村民に笑顔がある。それに活力がある」

 僕はカミーラ王女に話した。王女は答えた。

 「そうだな、昨日見た王都はこの村とは違い、ひいき目もあるかもしれないが、人々の顔が生活に疲れているように見えた。そうならないような国に出来ると良いな」

 「そうですね。僕の住んでいた屋敷の部屋は昼間も家の中がうす暗く、灯りの魔道具がないと部屋全体を見渡せませんでした。窓があっても、風で枯れ葉が入ってきたりで窓を開け放てないこともありますが、この村の家は昼間も明るくしたいと考えていました」

 「灯りの魔道具をいつもつけていれば良いではないか?」

 「夜はそうですけど、朝は陽が昇ります。その光が家へ取り込めれば明るくなるのではと考えていました」

 「それは、答えが出たのか?」

 「ガラスです」

 「ガラス?」

 「はい、こういったモノです」

 と言って、王都で試しに購入したガラスの器を出した。机に軽くぶつけて、カーンと乾いた音をたてた。

 「ほう、でも、それは飲み物を入れるものだろう?」

 「はい、このガラスを器としてでなく窓に嵌めます。このガラスは陽の光を通すので部屋は明るくなります」

 僕はカミーラ王女にガラスの器に陽の光を当ててみせた。

 「なるほど、明るくはなるな。良いかもしれぬ」

 「はい、実は王女たちがいた洞窟で珪砂というガラスの元が採れそうなのです」

 「そうか、では、アルスはそれを作りたいということか?」

 「はい」

 「そうか、アルスは私を一人にするということだな。どれくらいでできるのだ」

 「そうですね、今回はできるかどうかの試作なので、今日の夕方までです」

 「そうか、寂しいな。でも、許そう。アルスも故郷を捨てたのだ。その悲しみを忘れる時間も必要だ。私は我慢する。アルス、開発に籠れ」

 「分かりました」


 僕は以前王女たちがいた洞窟に行き、灯りの魔道具で壁を照らし、土魔法で珪砂のある壁を壊していった。その集めた土の中から、珪砂だけをさらに土魔法で集めた。それを一旦、異次元収納に入れた。

 さらに土魔法で長方形の枠を作り、そこに珪砂を入れ、火魔法で温度を加え、溶かし、まんべんなく長方形の枠に広がるようにした。割れないようにゆっくり風魔法で冷やしていった。透明度はいまいちだが、ガラス板ができた。これを20枚ほど作った。

 それから、大工を訪ね、このガラスの大きさに合う木枠を作ってもらい、それにガラスを嵌めた。

 意気揚々と家に帰り、一階の広間に大きなガラス窓を入口に取り付けた。移動は取っ手に風の魔法陣を描き、取っ手に魔力を流すとガラス戸が風の力で浮くので、軽い力で動かすことができた。一階の全面がガラス張りとなった。

 

 明るくなった。夕焼けの光が一階に差し込んできていた。灯りの魔道具も要らないくらい明るかった。良かった。上手くできた。

 「おっ、できたのか?」

 カミーラ王女が声をかけて来た。

 「はい」

 僕は満足いく結果に力強く答えた。

 「しかし、昼間は良いが、夜は外から覗かれるな、隠し事もないから構わないが」

 カミーラ王女は思ったことを言った。

 僕は、その疑問を待ってたかのように、ガラス窓に近づいた。少し、魔力を流すと、あっという間にガラスが曇り、外が見えなくなった。

 「何をしたのだ?」

 「はい、このガラスに魔力を流しました。それで変化したのです。これには魔力で透明度を変える仕組みを取り入れております。面倒ですが、魔力を使えば、昼間用とか夜用とかに変更することができます」

 また、魔力を流すと、ガラス窓が透明になり、夕陽が差し込んできた。

 「そうか?良いものを考えたな。この広間がみちがえるように明るくなった」

 「そうですね、使い方しだいでは、村の雰囲気も変わるのではないでしょうか?」

 僕が言うと、王女は言葉を返した。

 「ファビオが見たら、売りたいと言って煩いだろうな」

 その言葉に僕は嫌な予感がした。


 「アルス様、失礼します。帰っておられたのですね。私も王都から今、戻ってきて、ご挨拶にと早速やってきました。

 ところで、この不思議な壁はなんでしょうか?遠くから両陛下がいらっしゃるのが見えまして、急ぎきました。

 教えて下さい、なんでしょうか?」

 ファビオさんが来た。最初の言葉がそれだった。

 「これは今日私が作りましたガラス窓です」

 「ガラスですか?凄く部屋が明るく、開放的になりますね。でも、夜は部屋の中が見えると、落ち着かないですね」

 と、ファビオさんが考え込むように腕を組んだ。それを見た、カミーラ王女が僕に声をかけた。

 「アルス、見せてやれ」

 王女の思惑通りに進みそうで、彼女は僕をけしかけた。言われるがままに僕が説明をした。

 「この窓は取っ手に魔法陣があり、これに魔力を流すと、少しの力で開けたり閉めたりできるのですが、その下にも魔法陣があり、そこに魔力を流すとガラスの透明度を変えることができるのです」

 と言って、僕は一瞬で曇りガラスにした。それを見たファビオさんが驚いた顔を僕に向けた。

 「陛下、何をされたんですか?」

 「聞いていましたか?この取っ手の下に魔法陣があって魔力を流すと透明になったり、曇ったりするのです」

 「す、素晴らしい。是非、売らせてください」

 ファビオさんが僕に近づいてきて頭を下げた。

 「はははっ、アルス、思った通りじゃ」

 カミーラ王女が満足そうな声を上げた。


 その後、販売に関して話し合っているうちに強度の問題が出た。新たな魔法陣をつけて、魔法障壁の機能を付けることにして、ファビオさんが全面的に販売を受け持つことになった。それが決まって、そわそわした様子がおかしかった。一刻も早く商会に戻り、この販売計画を立てたいようだった。

 そこにエルザさんがやってきた。

 「アルス様、ご挨拶が遅れました。ご無事で何よりでございます。

 私からも食堂事業のご報告をさせて下さい」

 エルザさんは僕に近づくと、いきなり僕の手を握りしめ、話し始めた。

 「私の今回始めた食堂ですが、王都で大評判で、連日、店の前が大行列になっております。そのため、店だけでなく、店の周りの整理に人を割くことになり、食堂をやっているのか、人員整理をしているのか、分からない状況となっております。

 兄と父に相談して、今は、並ばなくて済むように臨時の屋台を出して、対応しましたが、それでも、待つ人をさばき切れない状況がつづいております。本当に嬉しい悲鳴です」

 一気に状況を説明すると、

 「本当にありがとうございました」

 と言い、エルザさんの目に涙が浮かんだ。

 「私、失敗すると思っていたんです」

 そう言った次の瞬間、エルザさんは僕を抱きしめた。

 「ありがとうございます」

 エルザさんの力が強くなった。

 僕が呆気にとられていると、カミーラ王女が二人に近づき、

 「エルザ、アルスは私の物だ、軽々しく抱きしめるのではない」

 と言って、エルザさんを引き離した。そして、僕を軽く抱きながら、

 「油断もすきもない」

 と言って、エルザさんを睨み返していた。

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