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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第54話 転生者、村の危機を知る

 僕は、カルロスさんを連れ、ファビオさん、エルザさんと共に食堂にきた。エルザさんの王都の食堂展開の打ち合わせをするためである。

 カルロスさんに、カミーラ王女とクロードさんを呼んで来てもらった。


 ファビオさんが話し出した。

 「王都は賑やかですが、その中でも街を豊かに変えているのは我が商会が販売している灯りの魔道具です。凄い勢いで普及していて、王都の夜を変えています。

 今迄の眠るだけの長い夜が灯りの魔道具により、昼間と同じように動けるようになったので生活が変わってきました。

 それに、他の商会がすぐに真似できない複雑な構造なので、我が商会が独占販売できるのも大きなメリットです。

 また、王都だけではなく、マギビスタ国内にもまだまだ需要があり、国外からの販売も要望されている状況ですので、さらなる増産をお願いします。

 今回の収益は、村の商会の横のフェルプス銀行に預けてありますので、いつでもお使い下さい。また、必要なものがあれば、調達しますので、なんでも申し付け下さい。

 私からは以上です。後は、妹からの話となります」

 エルザさんが代わって話し始めた。エルザさんは頭の後ろで髪をまとめて、おでこを出し、大人びた感じになった印象を受けた。キリっとした感じが眩しかった。

 「私が考えているのは、レストランと食堂の間の価格帯のお店で、家族が気楽に入って来れる店になります。今回、店内を広く、調理場を無くして、洗い場と盛り付ける場所だけを造ったので、今までにない施設になりました。

 従業員の作業は注文と配膳と皿洗いが主で、経費がかかる料理人を雇わずに済み、その分、料理を安く提供しようと考えています」

 彼女の自信ありげな言葉に成功が予感できた。

 「なるほど。良さそうですね」

 僕が言うと、エルザさんがすかさず言った。

 「そうでしょう。是非、ご協力ください、アルス様」

 そして、その言葉に笑顔を添え、うっとりした目で見つめていた。

 「おい、エルザ。アルスにちょっかい出すな。アルスは私の物だ」

 カミーラ王女がエルザさんに牽制した。

 「カミーラ、それは違うと思います」

 僕が返答すると、

 「黙れ」

 カミーラ王女が怒り口調になった。

 「カミーラ王女、それは分かっております。私はアルス様に食堂事業のサポートをお願いしたまでで、それ以外の他意はございません。ただ...」

 「ただ、なんじゃ?」

 「ですが、もしアルス様が私の店を気に入ってくださるなら……私はとても嬉しく思います。よろしいでしょうか?」

 「なんで、アルスの気持ちを私に聞くのだ。アルスに聞け」

 カミーラ王女が怒り気味に言った。

 「という事ですが、アルス様は私のことをどう思われていますか?」

 「えっ、商売熱心な、頑張り屋だと思っています」

 「それだけですか?」

 「それだけですけど」

 カミーラ王女はにやにやして聞いていた。

 「アルス様、私は諦めません。必ず、事業を成功させます」

 そう言って、エルザさんは僕の手を握ってきた。

 「えっ、なんですか?」

 「それまで待って頂けますか?」

 「あっ、成功するまで待ちますよ」

 エルザさんは嬉しそうに立ち上がると、

 「お兄様、こうしてはいられません。クロードさんから料理の入った異次元収納を受け取って、早く王都へ帰りましょう」

 そう言うと、ファビオさんとクロードさんを立ち上がらせ、調理場に向かった。

 残った僕にカミーラ王女が詰め寄った。

 「アルス、そなたはエルザに何て事を言ったのだ」

 「成功するまで、資金の返済は待ちますよ、と、言いました」

 「アルス、そうは聞こえなかった。カルロス、どう思う?」

 カミーラ王女はカルロスの方を向いて話した。

 「はい、勉強になりました」

 「お前はアルスから何を学んだのだ」

 カミーラ王女は怒り出した。


 カミーラ王女から僕が女性に対して優柔不断だと非難された。僕に説教してもあまり意味がないと悟ると、王女は明日、フジャイラの民探しの旅に出ると言って、食堂から出て行った。

 残された僕は、カルロスさんに、まだ来たばかりなので村に残って欲しいと言ったが、やる事が無いので旅についていく考えを曲げなかった。


 僕等はカルロスさんの旅の準備をするために、再び、ファビオさんの店に行った。

 エルザさんはおらず、ファビオさんがいて、僕に忘れていた事があると言って来た。カルロスさんに買い物を続けてもらいながら、僕とは別室で話し始めた。

 「あまり良い話ではありませんので、アルス様だけにお話しします」

 「えっ、何でしょうか?」

 「ブルームバーグ家の事です。以前、魔道具の製造が止まっていると話したと思いますが、あれからもっと酷い事になっております。

 お兄様方の仲たがいで魔道具の工房が火事になった様です。火元の原因は分かりませんが、放火ではないかと噂されています」

 「嫌な話ですね」

 「続きがありまして、魔道具販売契約した商会から訴えられているようなのです」

 「えっ、どうして」

 「建て直すとの話があるらしいのですが、製造する原版が焼失していて、工房を建てても魔道具が作れないらしいのですよ」

 「えっ、」

 「製作者が既にいないらしく、同じ性能の魔道具が作れないとのことで、大問題になっているようです」

 「製作者がおりませんか?」

 「はい、ここに居ますからね。あの水の魔道具の製作者はアルス様ですよね」

 ファビオさんが僕を試すように覗き込んだ。僕は答えに窮してしまい、目が泳いでしまった。

 「ははは、アルス様、そういった動作でバレバレですよ。そうですか、なるほど、そうなると辻褄があいます。

 ブルームバーグ家は七歳の魔法の天才児を辺境に追いやり、その成果を取り上げ、二人の兄弟に任せたということですか?

 最初は上手く行っても、マギビスタの王女を娶る争いが激しくなり、その最中に工房が燃えたとも聞いています。繁栄を約束した工房が無くなれば、全てを無くしてしまうという、教訓めいた話ですね。

 でも、何故、ブルームバーグ家はアルス様を辺境に?」

 「簡単な理由です。マギビスタでは魔法は十二歳まで学ぶことが許されておりません。公爵家の七歳が魔法を使い、魔法陣を開発したとなれば、公爵家は国法を破ったと醜聞が広がるのを恐れたのです」

 僕は困ったように話した。

 「単純な理由ですね。しかし、やり方としては稚拙な気もしますが、そんな考え方をする人たちだと、今頃、工房を稼働させるためにアルス様を必死に探しているのではないでしょうか?」 

 「そうかもしれませんが、僕はベルンハルトを追い出されましたからね。探しようがないと思います」

 自嘲気味に僕は話した。

 「でも、ブルームバーグ家は商会からの訴えは貴族の力で抑え込めるとしても、王家の肝いりで始まった魔道具工房が立ち行かなくなったとなれば、王家からの圧力も相当でしょう。何とかしないと、お家のとり潰しになるかもしれません」

 ファビオさんの声が次第に小さくなった。

 「とすると、いなくなった僕の痕跡を探し始める。そして、王都で画期的な魔道具が販売されている。こんな魔道具を考え着くのは僕かもしれないとフェルプス商会にたどり着き、それから、このアルスブルクの村の存在が明らかになる」

 「私たちは口は堅いですが、貴族や国から圧力かけられれば真実を言うしかありません。商売だけでなく、命の危険があります。アルス様、それはご容赦ください」

 「そうですよね。命あっての商売ですから当然です。しかし、今の状態の村であれば、僕が作った村の仕組みが壊され、骨抜きになって、普通の村に戻ってしまう。

 抵抗し、戦うにはまだ村には戦力がありません。旅に出ることはできません。

 困りました」

 僕は頭を抱えた。

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