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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第52話 転生者、帰還する

 僕たちは午後少し遅くまで部屋で待っていた。

 そして、カルガンさんがやってきて、声をかけられた。

 「思ったより集まりました」

 カルガンさんについて行く。移動の途中で話しかけられた。

 「父の古傷を治してくれたそうですね。父から聞きました。

 あんな年寄りを元気にしてどうするつもりですか。おかげで、また仕事を増やされそうです。でも、久しぶりに見る父の溌剌した動きを見ると私も力が出てきました。

 素直に、王の力には感謝いたします。

 それと、父から言われた通りに私の末の息子を貴方の村に預けます。上の兄たちに比べれば、何に対しても優れたところがありませんが、真面目で素直だけが取り柄の息子です。

 よろしくお願いします」

 やがて、屋敷の外に出ると、その玄関の先の広場に薄汚れた集団がおり、その先頭に小さな兵士がいた。

 「あの武装をしているのが、息子のカルロスです。あの集団は彼が連れてきましたので、素性は息子に聞いて下さい」

 と、カルガンさんから説明を受けた。カルガンさんが僕たちの近くで声をあげた。

 「おーい、カルロス。こっちへ来い」

 「はい、父上、なんでしょうか?」

 「こちらがアルスブルクのフジャイラの王と王女だ。ご挨拶しなさい」

 「分かりました」

 彼が僕たちの方を向いて挨拶をした。

 「私はカルロスと申します。カルガンの末の息子で、十五歳になります。昨日のパンとお菓子ありがとうございました。持ち帰りまして、妹も喜んでおりました」

 「あー、最初にパンを食べた兵士だろう。覚えておる」

 カミーラ王女が話し出すと、カルロスが答えた。

 「父上からアルスブルクとの架け橋になるように言われております。ガレオンの名に恥じぬ様頑張ります」

 「よく言った、カルロス。頼んだぞ」

 カルガンさんが息子カルロスを褒めた。

 「任せてください、父上」

 「じゃ、行きましょう」

 僕はそう言って、移動の魔道具を出した。

 「皆さん、乗ってもらえますか?」

 僕が声を出し、集められた人達が移動の魔道具にぞろぞろと乗り込んだ。

 「カミーラ、良いですか?皆さんもしっかり掴まっていて下さい。では、出発します」

 僕は移動の魔道具に魔力を込めた。移動の魔道具はその場で空高く浮き上がった。

 残ったカルガンさんと乗っていた住民が一斉の驚きの声を上げた。


 それから、何十回かの滑空を繰り返して移動の魔道具はアルスブルクの村の入口に降り立った。

 カミーラ王女と僕が移動の魔道具から最初に降りた。彼女は念話でスコッテイ王女へ村へ戻ったことを伝え始めた。

 その様子を見ながら、僕は皆に話しかけた。

 「この先がアルスブルクになります。村へ受け入れる人を呼ぶのでしばらくここで待機をしていて下さい。

 その前に、じっとしていて下さい。

 クリーン」

 僕はガレオンからの移住者にクリーンの魔法をかけた。皆、こざっぱりした恰好になった。続けて言った。

 「お腹も空いたかと思いますので、パンを配布します。

 カルロスさん、手伝ってください。

 それと、病気を持っている人と怪我をしている人は今から診ますので、そこから出て、僕の近くに来てください」

 カルロスさんにパンを数十個渡した。

 僕の元に集まった病人、怪我人を治した。というか、ほとんどの人が病気か、怪我をしていた。目がつぶれている者、足が曲がってしまっている者、腕が無い者、酷い喘息持ちの者、皆、何らかの障害を抱えていた。これでは、ガレオンの街では生活しづらかったかと思った。腕を失った者から腕が生えて来たのを見た人々は、その現実を受け止めると僕に畏怖の目を向け、皆、自分の身に起こった奇跡を喜び、僕に頭を下げ、感謝の言葉を告げた。

 僕の横でカルロスさんは奇跡が起こる度に驚きの声を上げていた。最後の一人が終わると、カルロスさんが言った。

 「陛下、貴方は神の生まれ変わりなのですか?

 次々と起こる奇跡に私は感動の震えが止まりません。

 僕の知り合いであるこの仲間達は、皆、街の嫌われ者でした。しかし、こんな何もできない領主の息子を馬鹿にせず、普通に扱ってくれる気の良い人達なのです。彼らがこんなに笑うのを見たことがありません。ありがとうございます」

 「この村の住人となったからには、苦しみ、痛みを取り除くのは領主である僕の役目になります」

 「そうですか?父も同じようなことを言っていた覚えがありますが、王のような奇跡を起こす力はありませんでした。私も、王に少しでも近づけるよう精進します。彼らを助けて頂き、本当に感謝します。

 では、パンを配布させてもらいます」

 と言って、カルロスさんが移住者の元へ行こうとするのを僕は引き留めた。

 「カルロスさん、ちょっと待ってください。貴方の治療がまだです」

 「えっ、治療ですか?私はいたって元気ですが」

 「今の体では元気なのかもしれませんが、貴方は幼い頃の栄養不足で、くる病を患ったのでしょう。だから、思ったように体を動かせないのではないでしょうか?ちょっと、こちらで診させてください」

 僕はカルロスさんの装備を脱がして、地面に横たわらせた。そして、聞いた。

 「年はおいくつでしたか?」

 「私は十五になります」

 僕は体の筋肉を触りながら、

 「うん、やはり、筋肉のつき方も変ですね。骨も曲がっています。小さい時に栄養不足から貴方はその病が発症し、それ以来、成長速度が遅くなっていたのでしょう。それを無理に動かしていたので、体のバランスがとれていません。

 では、治療します。

 ヒール」

 カルロスさんの体が、一瞬光り、曲がっていた骨が正常になり、筋肉のつき方も正常となった。

 「治療が終わりました。多分、良くなったと思います」

 僕の言葉で、カルロスさんが体を起こそうとしたが、上手く体を使えなかった。

 「陛下、体の感覚が違い過ぎて、どう動けば良いのか分かりません」

 「すぐに動かず、まず、手の指を動かして見てください。あー、大丈夫ですね。次は足を片足ずつゆっくり上げ下げしてもらえますか?あー、そうです、そうです。それを何回か繰り返してみてください」

 カルロスさんがリハビリ運動を繰り返しているうちに、村の方から足音が聞こえてきた。見ると、スコッテイ王女がノアさんとオリバーさんを連れて来た。


 「お兄様、お姉様、お早いお帰りで」

 「スコッテイ、アイディーの魔法を授けるのでこちらの人々を並ばせなさい」

 「分かりました。ノアさん、オリバーさん、手伝ってください」

 と言って、カミーラ王女が一列に並んだ新住人にアイディーの魔法を授与していった。そのアイディーの魔法が使えるかどうかの確認が、スコッテイ王女の役目となった。そして、それが終わった人達を一斉に集め、僕が村の規則を説明した。


 「へえー、村人になると無料でご飯が食べられて、風呂という物に入れる。それに、住む所も与えられる。良い村を仲間に紹介できた」

 どこにいたのか、体格の良い青年が話し出した。

 「陛下、感謝いたします」

 僕はそんな不思議な青年の姿を見つめていた。僕より先にカミーラ王女が叫んだ。

 「そなたは誰じゃ?」

 「えっ、もう、お忘れですか?自己紹介したばかりだからしょうがないですね。カルロスです」

 「カルロス?」

 「そう、カルロス。カルガンの息子のカルロスです」

 彼が言い切ると、一斉にガレオンの住人が驚きの顔で彼を見つめた。そこには、僕が治療をしたカルロスが立っていたのだ。

 「何ですか?皆、驚いた顔して。私はカルロスです」

 「お前はカルロスではない。カルロスは小さく、動きがもっとゆっくりだ」 

 ガレオンの住人の一人が叫ぶと、皆がざわざわし始めた。

 それに、動揺したのか、カルロスは僕に懇願してきた。

 「陛下、私がカルロスだと皆に言ってくださいよ」

 僕は今の姿が本来のカルロスの姿と知り、言った。

 「カルロスは僕が治療して生まれ変わった。これからは、彼のことをカルロス二世と呼ぶことにする」

 「嫌です!」

 カルロスが即座に答えた。

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