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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第5話 転生者、魔道具を知る

 興奮が冷めるのに時間がかかったが、気を取り直して、博士は本来の魔道具の話をし始める。

 「アルス君、もう少し時間、良いでしょうか?今回の魔法の使い方は、別にまとめて、次の論文のための資料とさせてもらいますので、後で、ゆっくり聞かせて下さい。

 これから、魔道具の説明をさせてもらいますが、アルス君は魔道具とか魔法陣を見たことがありますか?」

 僕は首を振る。

 「そうですか、見たことがありませんか?では、実物を見てもらった方が分かりやすいので、探しますね。この辺に試作してたものがあったはず」

 と博士は言って、窓際の棚を探す。

 「あー、これだ、これだ。動かないけど、これで良いだろう」

 博士は無造作に積んであったものの中から直径50cm程度の円盤を取り出した。

 それを持って、僕が座っている机の上に置く。円盤ではあるが、模様と文字が描いてある。

 博士が説明する。

 「これは僕が試作していた水の魔道具の未完成品です。円盤自体はブロンズで作りました。描いてあるのが魔法陣となりますが、見たことがないということなので、魔法陣の説明をしますね。

 円盤の真ん中にある太い線で描かれている円が中心核という物です。魔道具のコアとなる部分で、この中心核が魔石から魔力を引き出します。引き出した魔力は魔力線で魔法の種別を表す星へ繋ぎます。その時に魔力の流れが途切れないよう、文字で魔力と星を繋ぐ言葉を書くのです。それにより、流れる魔力に方向性と意味を与えます。魔法の種別を表す星を囲む外周の円は、その発動する魔法の効果範囲や安定を保つ工夫をするために記述します。魔法が暴走しないような安全回路もここに記述するのです。

 これが、魔法陣です」

 僕は初めて見る魔法陣に感動した。思わず問う。

 「どうしたら、この魔道具の魔法陣は動くのですか?」

 「真ん中の中心核に魔石を置くのです。これは水を作る魔道具なので、水属性の魔石を置きます。すると、中心核が魔石の魔力を吸出し、その魔力で魔法陣が動き出し、水魔法”ウォーター”が発動し、水が出てきます。この魔道具を使えば、水を汲みに行く必要が無くなるのです。

 従来の複雑な体系と余計なものがあった魔法陣を整理し、中心核、星、外周円、それを繋ぐ呪文に大別して、今回、発表した魔道具を作りました。それが、この都で評判になり、その功績で私はこの学院に職を得たのです」

 博士は自慢げに言う。


 僕は博士の最初の言葉で我を忘れた。魔石を中心核に置くと魔法が発動する。それが魔道具。

 ”素晴らしい”

 これは電池を入れると、魔法陣というプログラムだけで物を作り出すことができる電池を入れれば動くプログラム、まるで前世で知っていた家電のようではないか?金子の知識が僕の頭の中で騒ぎ出した。幸い、このシンプルに体系化した博士が目の前にいて、必要な知識はいくらでも引き出すことができる。開発者にとってはこれ以上の環境はない。あとは実験材料さえ揃えば、これはやりたい放題ではないか?

 僕はワクワクして、魔道具を描く円盤の調達と魔法陣を描く材料の入手先を尋ねた。

 「博士、素晴らしいです。この魔道具を作る材料は何処に売っていますか?」

 「売っておりません。自分で作るのです」

 「えっ、そんな」

 僕のワクワク感がしぼんでいく。こんな材料を作るなんて現状では無理だ。


 僕が元気が無くなったことで、先生としての余裕を取り戻したように、博士は言う。

 「そんなにガッカリすることは無いのです。魔道具に関しては奥深く、まだ不明な点が多々あります。それをアルス君のこれからの課題とすればいいのではないでしょうか?もし、魔道具に興味持たれましたら、私の材料をお貸ししますので、使って下さい」

 これは願ってもない話だった。

 「博士、ありがとうございます。明日から、授業が終わったら、ここへ毎日、伺っても良いですか?」

 「勿論です。私が授業で居なくても使って良いのですが、作成した魔法陣の動作確認を行う場合は、魔石ではなく、必ず、自身の魔力を使って下さい。そうすれば魔力を止めれば、魔法陣の暴走を防ぐことも可能です。それに、どこで魔法陣が動作していないかもわかります。いいでしょうか?」

 そうか、自身の魔力で魔法陣の回路のデバッグができるということなのだ。そして、どこまで正常に動くか確認すれば、問題箇所が特定でき、以前のデバッグの手法が使える。これにもなるほどを頷いてしまう。

 「博士、今日の話はどこまで話していいですか?」

 「全て、話して構いません。多分、私の魔法理論のお披露目することにもなりますので。アルス君、注意しておきますが、ファイアボールとかの危険な魔法は使ってはいけませんよ。あくまでも掌で炎を出す程度にしてください」

 「分かりました。話せる範囲で話します」

 そう言って、博士に待っている馬車まで送ってもらった。

 

 夕食時に、公爵である父から今日出会ったアーネスト博士のことを聞かれる。

 「アルス、どうであった、魔法の新理論の唱える魔道具教師は?」

 その言葉がアーネスト博士に相応しいのか、いないのかの微妙な問いに僕は答える。

 「はい、素晴らしい魔法理論を持った先生だと思います。本日は、魔道具開発のやり方を教えてもらう前に、彼の魔法理論を理解することで精一杯でした」

 「ほう、お前はまだ魔法を使うことができないのだから、理解するのは難しかろう」  父は納得顔でそう言った。

 「最初は戸惑いましたが、何とか物にすることができたと思います」

 僕が答えると、次兄のリチャードが言う。

 「嘘をつけ、また、盛大に失敗したのであろう。魔法が簡単に使える訳がない」

 「いえ、今回は成功しました」

 「いくら父上と母上の前でも、嘘をついて取り繕うな、嘘は!中等部である私でも魔法がまだ上手く使えないのだ。お前に出来る訳が無かろう」

 「いや、使えますよ」

 僕が言うと、次兄のリチャードが面白くなさそうに言う。

 「では、使ってみたらどうだ。失敗が恐くて使うことができないだろう」

 「いや、使えますよ。今日覚えた魔法はこれです。ファイア」

 僕の小さな掌のうえに炎が灯った。そして、炎を大きくしたり、小さくしたり、炎の色を変えたりした。そして、消す。

 母が嬉しそうに拍手をして、僕を褒めた。

 「アルスちゃんは優秀ね」

 また、父が満足げに言う。

 「アルス、お前はまだ若い。今日の小さな成功に満足するな。これからも励め。では、食事をしよう」

 それで、食事が始まったが、隣の次兄は無言で食事を続け、時折こちらを睨む目が怖かった。

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