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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第47話 転生者、村民を盛り上げる

 結婚式が厳粛に行われた。別々の人生を生きて来た二人がこれから一緒に人生を送ることになる。それが結婚。

 新郎、新婦がそれぞれ、誓いの言葉を述べ、カミーラ王女の祝福により、その誓いが村民の間で周知された。

 新婦の頭には僕が作ったレースのベールがかかり、吃音ながらも真摯な誓いの言葉は人々の胸を打った。僕自身は本当にこの新郎で良いのかと思ったが、意外にも新郎であるフジャイラの男も真面目に彼女を受け入れ、彼が新婦の人生を背負うという宣言があった。

 これも結婚するという事なのかもしれない。

 振舞った炭酸入りのワインと炭酸入りのジュースで乾杯を行い、賑やかな祝福の声が響き、彼らは新居へ入って行った。これで、儀式としての結婚式は終わった。

 末永く仲良くやって行って欲しい。


 綱引き大会が開催された。

 異様な熱気があった。

 優勝するチームを予想する賭けの倍率を僕から発表した。

 「参加するチームは、旧フジャイラの民、新移民集落、暁の光、ファビオ商店の四チームです。掛け率をそれぞれ2倍、3倍、4倍、8倍とします。賭けに参加する人は、ノアさんとオリバーさんの元に行って、勝つチームを言って、掛け金をPTで支払ってください。掛け金の上限は5PTです。鐘が一つなったら、賭けは終了です」

 僕が言い終ると、カミーラ王女がそわそわしだした。どうも、賭けに参加したいようだった。その様子を見て、僕はきっぱり言った。

 「カミーラ、賭けに貴方は参加できません。王女は特定のチームを応援することは控えて下さい。公平にお願いします」

 カミーラ王女は初めて僕を憎々し気に見て言った。

 「アルス、私はフジャイラ出身です。フジャイラの民を応援してなぜ悪い」

 「カミーラ、貴方はフジャイラ出身ですが、この村の領主の妻です。村民を公平公正に扱うべき立場にいます」

 カミーラ王女は悟ったように、肩を落とした。

 やがて鐘が鳴り、賭けへの参加が締め切られ、大会が始まった。


 村民が観衆として取り囲む中、第一試合が開始された。

 対戦は、旧フジャイラの民対暁の光であった。旧フジャイラの民にはスコッテイ王女がいた。どうも、戦力になるとは思えない。暁の光は、アルドさん、リオンさん、クロエさんで冒険者としての地力もあり良い勝負かもしれない。

 3回勝負で2勝した方が次の試合に臨める規則とした。僕が、足で、綱の真ん中を踏んで、試合の開始をそれぞれチームが待っていた。先頭を女性としその後方を二人の男性で固めることになる。

 スコッテイ王女は動きやすい白い作業着姿だった。それでも不思議と王女らしい気品があった。それを騎士団の重装備をした団長ともう一人が大きな体で戦う雰囲気を湛えていた。一方、暁の光は冒険者の恰好で、革の装備をしていた。軽快で力が出せそうな感じである。

 先頭のスコッテイ王女とクロエさんを見て、準備完了を確認すると、僕は綱の上に置いた足を外し、大きな声で、試合開始を告げた。

 「始め!」

 その声に綱がピンと張って、両チームの力が綱に伝わっていった。併せて、歓声が上がった。


 歓声は次第に大きくなり、綱は両チームの間を行ったり来たりしていたが、やがてあっけなく勝負がついた。スコッテイ王女が引くタイミングが合わず、綱にのる相手の力に引かれて前のめりにバランスを崩したのだ。それを見ていた騎士団長が力を緩め、思わず、スコッテイ王女を抱きとめてしまった。それにより、力の均衡を失った綱は一方的に暁の光側に引かれてしまったのだ。

 暁の光が先勝した。

 番狂わせであった。観衆はどよめいた。しかし、代償はあった。いきなり、バランスをなくした暁の光の三名が大きく転んでしまったのだ。しばらく動けない状態になっていた。僕が駆け寄り、状態を確認したが、かなりひどい状況だった。思わず、ヒールの魔法をかけた。

 「ヒール」

 アルドさん、リオンさん、クロエさんの呻き声が消え、ゆっくり立ち上がった。不可抗力とは言え、急に綱の力を弱めた旧フジャイラの民の反則負けである。僕が、旧フジャイラ側の反則負けを宣言しようとすると、それを止めるように、アルドさんが首を振った。

 「アルス様、我々に魔法の力を使われたならば、魔法を使わないという規則に従い、我々は、負けを認めます」

 思ってもみない言い様に僕は判断をしかねたが、カミーラ王女が言葉を発した。

 「暁の光の次の試合辞退により、旧フジャイラの民の勝利とする」

 彼女の宣言により、観客のざわつきの中、旧フジャイラの民が次の戦いに進むことになった。


 熱気が冷めやらぬ間に、第二試合が開始された。

 対戦は、新移民集落対ファビオ商店だった。こちらは俄仕立てのファビオ商店チームは自力に勝る新移民集落に軽くいなされる形であっさり、2敗を喫して負けてしまった。しかし、さすがに商人であるファビオさんである。試合前に、皆の前で従業員であるカズンとマリーの紹介をし、お披露目を行っていた。彼の商店は村でお店と従業員の宣伝をしっかりできたのだ。


 決勝は思った組み合わせとなった旧フジャイラの民対新移民集落である。観衆の応援は人数的に新移民集落が多いが、完全に二つに分かれている。騎士団長アレオスと新移民集落の長であるトーリがお互いにらみ合う。旧フジャイラはスコッテイ王女と世話係りのクリスがいて、新移民集落は、ジャミーラ夫婦ということだ。

 僕は試合前に、故意でなくても綱の力をいきなり緩める行為は危険と判断して、その時点で反則負けとなることを申し入れた。加えて、力と力で正々堂々と戦って欲しいとお願いした。

 僕の話を聞いているのか、いないのか?それぞれのチームが真剣な顔をして、綱を握った。

 僕は足で綱の真ん中を踏んでいた。強い集中力が綱から伝わってきていた。観衆の歓声が大きくなってきた。

 綱をもつスコッテイ王女とジャミーラの奥さんの顔をそれぞれ見て、試合の開始を告げ、足を離した。

 「始め!」

 強い力の均衡によりすぐ綱がピンと張った。それぞれのチームの掛け声のタイミングで、綱の中央が左右に揺れた。大きな歓声の中で各々のチームから”はっはっはっ”と、苦し気な息使いが聞こえてきた。

 接戦だ。


 この均衡が数分続いていたが、徐々に旧フジャイラの民側が優勢になって来た。そして、ゆっくりと綱の中央にあった布が旧フジャイラの民の陣地に吸い込まれていった。

 「そこまで」

 僕が声をかけ、旧フジャイラの民が先勝した。歓声と悲鳴が交錯した。ゆっくりと綱の緊張が解けていった。


 陣地が代わって、二回戦が始まった。新移民集落からさらに大きな激励の声が飛んでいた。

 均衡が続く中、新移民集落が激励で力を得たのか、一時、有利なる場面があったが、地力に勝る旧フジャイラの民が騎士団の力で踏みとどまった。そして、新移民集落の力がつきかけたのか、逆に、旧フジャイラの民が綱を中央まで戻し、やがて、陣地まで引き戻して行った。

 「そこまで」

 僕の声で試合が終わった。空しく綱がゆっくり緊張を無くしていった。旧フジャイラの民の連勝だった。

 本日最大の歓声が上がった。その歓声は、もうフジャイラの民だけのものではなかった。フジャイラの民と新移民が争わず同じ場所で歓声を上げていた。それを見たカミーラ王女の目から涙が零れていた。

 初代、優勝は旧フジャイラの民だった。


 そんな中、クロエさんが僕に近づいてきた。

 「おい、アルス。スコッテイは綱にぶら下がるだけで、力を一切出していなかった。あれは反則ではないか?」

 「いえ、それは問題ありません。最後まで綱を離していませんでした。規則の範囲内です」

 「でも、綱引きの参加者が綱を引かないのはズルだろ」

 いつになく、追及が厳しかった。そして、小声で言ってきた。

 「黙っておいてやる。私にも唐揚げ食べ放題券とロールケーキ食べ放題券をよこせ」

 「脅迫じゃないですか」

 「違う。交渉だ」

 クロエさんは真顔だった。

 クロエさんの可愛い顔がすこしだけ憎らしく見えた。

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