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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第41話 転生者、村をさらに拡張する

 村の入口の商会の裏手にトーリさんについて来てもらって、前世の知識にある二階建てかまぼこ型のアパートのイメージをして、

 「アース」

 と、土魔法を使った。

 すると、ずずずっと、広い範囲で土が盛り上がり、ひとつの階を十部屋で区切り、上下で計二十部屋のある棟が完成した。

 そして、そこに、下水の配管を通し、各部屋にトイレを設置した。この一連の作業を見ていたトーリさんが言った。

 「アルス、この建物は王都で流行りの建物なのか?」

 「違います」

 と、僕はそっけなく答えて、同じように四棟作った。僕の横について回っていたトーリさんはさらに心配して言った。

 「アルスはそんなに魔力を使って、どうして平気なんだ?」

 「…」

 「俺の知り合いの魔法使いはちょっと魔法使うと気分が悪くなり、それ以上無理すると倒れていた。それに比べてお前は疲れも知らず、大きな魔法を次々と使う。お前は高名な魔法使いの生まれ変わりか?」

 「違います。種明かしすると、僕は、カミーラから魔素を効率よく使う方法を学びました。そのため、魔法をいくら使ってもほぼ魔力を消費しません。だから、平気です」

 「それは、凄い。それだけでも一国と戦う力があるぞ。なのに、何故、名も無い村の領主として、その力を無力な者たちの為に使うのか?」

 「僕が、楽しいからです。それに皆さんが、驚いたり、喜んだり、笑顔を見るのが好きなのです」

 「それこそ、才能の浪費ではないのか?」

 「浪費ですか?考えた事もありませんでした」

 「だから、こんな変な村を作ったのか?」

 「変な村ですか?まぁ、この世界には無い村かもしれませんね。ハハハっ」

 僕の笑いにトーリさんが呆れ顔で言った。

 「それとも、あの王女に誑かされているのか?」

 「カミーラは魅力的ですよね。誑かされているのかもしれません。しかし、彼女にも約束したのですよ。彼女は亡国の姫君です。彼女のために新しい国を造ると」

 「ふん、国を創るなどとんだおとぎ話だ」

 「良いじゃないですか?僕も子供です。トーリさんに比べれば、カミーラも子供だと思います。どこかに、そんな子供達が国を創るそんなお話があっても。夢があるでしょう?」

 「現実はお前が思うほど甘くない」

 「そうでしょうか?では、この村に甘い夢が見られる場所を作りたいと思います」

 「なんだそりゃ、付き合ってられない」

 と、トーリさんは言いながら、少し、考えた風だった。

 僕は、同じ作業を繰り返し、残り、四棟を建てた。

 「飲み水は水の魔道具で出せるようにしておきました」

 僕は付け加えた。

 また、その横に子供達だけで生活できる養護施設を作り、その子たちの面倒を見られる人をトーリさんに選んでもらうことにした。

 「なんで、俺をそんなに信用するのだ」

 「なんでしょうね。貧相な集団をここまで導いてきた人が悪く見えなかったとしか言い様がありません」

 「俺はこんな見てくれだぞ」

 と、トーリさんは彼の顔の傷と顎まで伸びた髭面を強調した。

 「良い顔してますよ。男の顔だ」

 「そんなことを言われたのは初めてだ」

 「いや、あなたに誰も言わなかっただけでしょう。あの集団を託した人も貴方を信用した。途中で集団を奴隷商に売ることもできたんでしょう?でも、貴方はそうしなかった。それが約束を守る男です。だから、良い顔されています」

 「そうか?そうなのか?子供に泣かされそうだ」

 「子供ですいません」

 そう言いながら、僕等はみんなのもとへ帰って行った。


 トーリさんは、集団を率いて、新しい移民としてできたばかりの住居へ導いていった。明日からの村人との生活をともにしてくれるだろう。

 僕は、食堂の前でその集団の移動を眺めていた。その横で、カミーラ王女が言った。

 「アルス、上手く移民の受け入れができたようだ。新しい村人には笑顔と希望があったぞ」

 「そうですか?良かった。しかし、笑顔は分かりますが、希望があるってどうしてわかったのですか?」

 「勘じゃ、思い過ごしかもしれんが。彼らの戻る足取りに力があった。だから、そう思った」

 「だと良いですね。僕も楽しくなります」

 「私もそうだ。でも、アルス、お前はもう一人楽しませる者がいる」

 「誰でしょう」

 「身近にいますか?」

 「そうだな、割りと身近だ」

 「いつもそばにいるだろう」

 「ああ、クロードさんですね」

 「違う、男ではない」

 「分かりました。スコッテイ王女ですか?」

 「馬鹿者!わざと言っているのか?ここにおるではないか?」

 「ああ、カミーラさん?」

 「ああ、とは何じゃ。無礼だぞ」

 「そうですね、無礼過ぎました。許してください」

 「ただじゃ、許さんぞ」

 カミーラさんのふざけた感じに合わせたら、怒られた。機嫌を直してもらおう。

 「はい、では、こちらをどうぞ。新しい甘味です。前世の知識では葛切りと言われていました。ちょうどよい具合に葛が自生していたので、作りました。黒蜜をかけて食べますが、つるつるした食感が黒蜜の甘さを引き立てます。どうぞ、食べてみてください」

 僕は葛切りの黒蜜掛けをカミーラさんに出した。

 「これは私だけの物か?」

 「はい、カミーラさんを楽しませるだけに作りました。他の誰にも出しておりません」

 「アルス、ありがとう。その言葉だけで私を楽しませたな。いただくぞ」

 カミーラ王女は、フォークで葛切りをひとつ口に入れた。可愛い口を動かした。

 「やはり、蜜は甘い」

 そして、続けた。

 「変な食べ物だ。しかし、つるっとした感触が楽しいな」

 「これで僕は、カミーラさんを楽しくしました。約束をひとつ果たしました」

 「そうだ、約束だ。約束は重い」

 「僕は、貴方だけではなく、村民にも約束しました。彼らの今と未来を守らなければなりません。それは僕の責任です。さらに村民は増えます。責任は大きくなります。僕も共に大きくならなければなりません」

 「其方は大きくなる。私には分る。心配するな」

 「身長のことでは無いのです。人としての...」

 「あははは、分かっておる。そなたが大きくならないと私も困る。毎回、キスに困るからな。はははっ」

 カミーラ王女は機嫌を直したようだった。

 「いや、カミーラさん、僕は真剣ですよ」

 「そうだ、いつも、アルスは真剣だ。それが良い。それを村民は見ている。だから、村民は安心してついて来る」

 「納得いきません」

 「納得したら、そこで終わりだ。この村も終わる。それは私も嫌だ」

 「いや、そういうことではなく、僕は真面目に貴方に相応しい人間なろうと...」

 「分かっておる。だから、其方が大人になるのを私も待てるのだ。

 アルス、私は其方と出会って、フジャイラ国を興す夢を持った。

 アルス、其方は誰にでも夢を見させることができる特殊な能力を持った人間だ。

 焦らなくてもいいのではないか?

 少しは間違っても良いのではないか?

 誰かのために一生懸命やっていることが分かった人は、アルスの事を誰も喜んで受け入れるだろう。

 そして、アルスが間違いに気づけば、謝り、修正していけばいいだろう。間違いを非難する人などいない。

 そう思う。

 ”焦るな。今を楽しんで、明日を創れ”私のフジャイラの時の先生が言った言葉だ。

 アルス、私の予知では、また、新しい住人がやってくる。我々はその時の準備をする必要がある」

 王女はさらに饒舌になった。

 「人が増えれば争いも出てくる。他人の物を盗む者も暴力をふるう者も出てくる。皆、村民になったときは善良だった人達だ。私達はそうなる人も受け入れ、国を創るのだ。焦るな。今日を楽しめ」

 明日の為に今日を楽しむ。僕はその言葉を心に刻んだ。そして、

 「分かりました」

 と、答えた。

 

 「おい、アルス、その王女が食べている美味しそうな甘味を私にもよこせ」

 と、どこから湧いたのか、クロエさんが声をかけて来た。いつの間にか、僕とカミーラ王女の背後にいた。振り返って、

 「カミーラさんが食べている葛切りはカミーラさんだけの物です」

 と、告げた。

 僕の言葉にカミーラ王女が微笑みを浮かべ、眺めていた。

 「でも、アルスは私に恩を返していない」

 「それは、プリンで返しましたよ」

 「それでは足りないのだ。全然、足りない」

 「いやいや、そう言われましても」

 「出せ、早く出せ」

 「これがカミーラさんが言ったのはこのことか?善良な人が泥棒にもなる」

 「私は泥棒ではない、ただの食いしん坊だ」

 「はっはっはっ」

 と、そのクロエさんの言葉に僕の横にいたカミーラ王女が笑い出した。

 

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