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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第40話 冒険者、馬車馬のように働かされる

 「よし、アルス、そなたが頑張るしかない」

 カミーラ王女は立ち上がった。

 「アルス、案内しろ。まずはその百人を見に行く」

 「姉様、本当に受け入れるのですか?」

 「当たり前だ。民が増えることを喜ばぬ者がどこにいる」

 そう言って王女は食べかけのかき氷を置き村の入口へ向かった。でも、時折、かき氷が気になるのか、後ろを何度か、振り返っていた。


 「ファビオさん、皆で押しかけました」

 僕は、カミーラ王女姉妹を引き連れて、村の入口で待機していたファビオさんに会いに行った。

 「それで、どうなんですか?」

 早速、ファビオさんが聞いてきた。

 「カミーラが今から話しますので、トーリさんを呼んでください」

 僕がそう言うと、

 「分かりました」

 と、言ってファビオさんが離れ、遠くにいたトーリさんを連れて来た。

 「返事はどうなった?」

 トーリさんは待ちかねたように聞いてきた。

 「妻のカミーラが話します。対外的にはこの村はフジャイラ国の王女であるカミーラが治めております。彼女とお話しください」

 僕は正直に話した。トーリさんの顔に軽く失望の表情が浮かんだ。そして、僕の傍らにいたカミーラを見た。カミーラが話始めた。

 「私はカミーラだ。お前は何と言う」

 「トーリだ」

 「なぜ、この村に来た」

 「俺がいた村はここから大分離れたとこにあった。そこが、魔物襲撃を受け、皆、命からがら逃げだしてきた。戦いで命を落とした夫をなくした女もいる、親を亡くした子もいる。俺は彼らの村に雇われた傭兵だった。村の長から戦えない者達を託された。もし、この村で彼らを引き受けてもらえれば、俺は別の街にいく。お願いできないか?」

 暫く彼を見ていたカミーラは言った。彼女の力で彼の情報を探っていたのかもしれなかった。

 「ふーん、大体の事は分かった。お前の言葉に嘘は無いようだ。よかろう。お前たちをこの村に迎えいれる。但し、条件が二つある。まず、一つ目は、トーリ、お前がこの者達のまとめ役としてしばらく残ること。二つ目は、村の住人になるのに皆が私の力を受け入れること。

 この二つだ」

 「なに?俺に残れと。まぁ、ここまできたのだから、いいだろう。貴方の力を受け入れると言うことは、奴隷になれという事ではないだろうな?」

 「それは無い、安心して良い」

 「まあ、良いだろう。貴方達は悪い人ではないようだ。信用する。あっても、俺がいれば何とかなるだろう。お願いする」

 彼らはこの村の住人となった。


 カミーラがアイディーの魔法を授与する前に、事前に彼女の横で魔法の内容を説明した。

 「今からカミーラ王女が授ける魔法はアイディーという魔法です。この村の住人しか使えない魔法で、この魔法が使えれば村の食堂にて無料で食事ができます。その他の決りは食事のときにお話ししますので、王女の元に並んで下さい」

 僕の言葉に薄汚れた住人が並んでいった。カミーラ王女が唱え、アイディーの魔法を授与し、その横のスコッテイ王女がアイディーの魔法が使えるか確認し、それが終わると僕がクリーンの魔法をかけた。流れ作業のように、押し出されるように難民がさっぱりした恰好で村に入って行った。彼の声が後ろで聞こえた。

 「なんだこれ、服が綺麗になった」

 「服だけじゃない、体が綺麗になった気がする。気持ち良い」

 全ての難民がこの村の住民となり、アルスブルクの村の人口が百人余り増え、百五十人の村となった。

 

 村の食堂で皆に食事をとってもらうことになった。

 皆、食堂で覚えたてのアイディーの魔法を使い、無料の食事を受け取っていた。これからは、いつ来ても、何回来ても無料の食事をとることができると説明した。また、共同浴場も無料で使えることを説明した。彼らの中から歓声が沸いた。しかし、余りにも好待遇な状況を不審がる者もいた。

 その中の一人としてトーリが聞いてきた。

 「待て」

 トーリが真顔になった。

 「食事が無料?」

 「そうです」

 「無料の風呂がある?」

 「はい」

 「病人も治してくれる?」

 「はい」

 「……お前、本当に正気か?」


 「勘違いするな」

 カミーラ王女が口を開いた。

 「食事を与えるのは慈悲ではない。風呂も治療もそうだ。お前達が生きて働き、この村、いやこの国を豊かにするからだ。その権利を私がアイディーの魔法で与えたのだ」

 僕が言葉を引き取り、続けた。

 「僕は村をより良い村にするために、働いてもらうことが必要だと考えていますが、労働を強制することは考えておりません。

 クロードさんと給仕係の人、皆さんにプリンを配ってください。今皆さんに配っているのは黒蜜掛けのプリンで、王都にもない甘味です。

 皆さん、食べてみてください。」

 配られたプリンを皆が食べ始め、あちこちで美味しいという言葉が聞こえた。

 「美味しいかと思います。

 王都の貴族も口にしたことがないこの村にしかない甘味です。今回は特別にお出ししましたが、働けばこういった食べ物が食べられるようになります。

 また、村の働き口は心配しないで下さい。ここに居るノアかオリバーへ頼めば、仕事を斡旋します。仕事が終われば、彼らがアイディーの魔法で給料を支払います」

 トーリがさらに聞いた。

 「村の仕事をしない者はその有料の甘味はずーっと食べられないのか?」

 「そうです。食べられません。しかし、働けない人は付き合いの中で働いている人から施しを受けることができますよね」

 「ふーん、子供の分は親が払う事ができるということだな」

 「はい、その通りです」

 一人の女性から質問があった。

 「私は赤子がいて、その子の世話でつきっきりで、村の為に働くことができません。その場合はどうしたら良いですか?」

 「そうですね。では、保育所を作りましょう。そこは小さな子供を預かる施設になります。そこに預かってもらうか、または、そこの職員になり、子供達の面倒を見る仕事で給料をもらうことになると思います。他に何か?」

 ある老人から質問があった。

 「儂はいくばくかのこの国の金を持っている。その金は使えないのか?」

 「はい、この村ではこの国のお金は使えません。ゆくゆくはこの国のお金を村で使えるようにしたいとは思っておりますが、今のところは使えません」

 「うーん、不便だの」

 「はい、この村では村や村人への貢献度を給料にしています。ご承知おきください」

 「では、質問も無いようなので、僕はこれから貴方がたの住居を建ててきます。トーリさん、連れて来た人々の人数構成で家を作るので、僕についてきて教えてもらえますか?」

 「家を作る?そんな簡単にはできないだろう。まあ、いいか、区画だけでもしっかり決めておこう。分かった。ついて行こう」

 トーリさんが言うと、僕は残りの住民の対応をお願いした。

 「残りの方は、ここに居るノアとオリバーがお風呂の使い方とかトイレの使い方を説明します。ノアさん、オリバーさんあとはよろしくお願いします」


 僕がトーリさんと食堂を出ていこうとすると、

 「アルス、プリン、私達の分もあるのだろう?」

 カミーラ王女が言った。

 「太るのを気にするお方の分はありません」

 すると、カミーラ王女が不満顔になった。

 「じゃ、私の分はあるのね」

 スコッテイ王女が言った。

 「はい、ありますよ」

 僕が言うと、カミーラ王女の顔つきがさらに変わった。

 「良かった」

 と、スコッテイ王女は満面の笑みになった。

 「おい、アルス。そなたは私を愛していると言ったな」

 「はい、それは言いました」

 「愛する人を悲しませることは無いとも言ったな」

 「それは、言いましたっけ?」

 「言った。だから、私を悲しませない分のプリンもあるはずだ。そうだな」

 「だとしたら、そうなりますかね」

 僕がそう言うと、カミーラ王女も機嫌を直し、その得意げな顔が綺麗に見えた。

 

 「おい、アルス、そのプリンだが、私も食べたい」

 いつの間にか、クロエさんがいた。どこにいたのだろう。

 「貴方はこの村の住民ではありませんので、食べられません」

 「では、村人にしろ。今すぐだ」

 「でも、それはアルドさんに相談するべきです。村人になれば暁の光から脱退することになるかもしれません」

 「アルス、私はお前の世話をしたよな。そして、助けたこともあった」

 クロエさんは話を変えてきた。

 「でも、それは、護衛という仕事の中でのことだったんじゃ」

 「違う、本当はちがったのだ。私はアルドに怒られながらも特別にお前の世話をした」

 「そうなんですか?本当ですか?」

 「本当だ」

 「そうだったんですね。ありがとうございます」

 僕がつられてそう答えたら、クロエさんが豹変した。

 「その恩を返せ、今すぐだ。プリンとしてな。さあ」

 と、手を出して来た。

 ”まずい、言葉にのせられてしまった”

 しかし、クロエさんのその顔を見ていたら、プリンを出さないといけない気になってきた。

 「分かりました。出します」

 すると、クロエさんが叫んだ。

 「おい、アルマ、リオン、アルド、アルスが珍しい甘味をくれるぞ」

 「えっ」

 僕が驚いていると、暁の光の残りのメンバーもやって来た。

 「クロエ、いつもは面倒かけるけど、偶には良い事もするな。アルスさん、ごちそうさま」

 暁の光のメンバーがみんなニコニコしていた。そんな中、食べ始めたクロエさんは新しい要求をしてきた。

 「アルス、これは美味い。美味すぎる。プリンをもう一個くれ」

 横にいたトーリさんは呆れ顔で僕を見ていた。

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