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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第39話 転生者、悩む

 僕はクロエさんの視線を追って村の入口を見た。薄汚れた集団がいて、その姿は異様に見えた。僕が黙っていると、クロエさんが言った。

 「お腹は空かしていても皆良い奴等だよ。ファビオがみんなにパンをあげてたんだよ。それを一つ取り上げても誰も文句言わなかった」

 「おい、お前、そんな可哀そうなことをしたのか、誰のを盗った?えっ、その人に謝れ」

 リオンさんが凄い剣幕で怒った。

 「悪いと思ったから返して、アルマの分を盗った」

 「えっ、アルマの分を!やっぱり盗っているんじゃないか、アルマに謝れ」

 「アルマは小食で、いつも食べれなくて、くれるから、大丈夫だよ」

 「いや、アルマはお腹空かして泣いていたぞ」

 「えっ、本当か?アルマ」

 「リオンの嘘だよ。私は平気だよ」

 「おい、リオン嘘つくな」

 「クロエ、良いのか、アルドに言うぞ。アルマが痩せているのは、お前がアルマの食事を横取りしてるからだって」

 「いや、それは困る」

 「だろう、だから、人の物は盗るなよ。分かったか?」

 「分かった。でも、アルマがあげるって、言ってもか?」

 不満顔でクロエさんはそう言うと、リオンさんはぴしゃりと言った。

 「言ってもだ」

 そんな会話を耳にしながら、集団を見ていると、皆痩せていて痛々しい。ファビオさんの顔を見ながら迷っていると、ファビオさんが言った。

 「やはり、村としてはフジャイラの民でなければ受け入れることは厳しいですよね。そうであれば、先のベルンハルトの村に頼んでみます」

 僕は考えた。あの中には犯罪者がいるかもしれない。それに、折角、収穫したばかりの食料があの人数では足りなくなることも考えられる。これは試されているのかもしれない。でも、僕は頼って来る人を見捨てることができない。

 僕は決断した。


 しかし、それは中途半端な決断だった。

 まず、人数分の食料を施して、打ち合わせする時間をもらおうと思ったのだ。僕はファビオさんに話した。

 「村としては人は何人でも欲しいので、直ぐにでも受け入れたいのですが、急な話なので、まず、カミーラと話し、了承を得たいのです。入り口で待ってもらって、その間に食事を出したいのですが、責任者の方に声を掛けてもらえませんか?」

 「分かりました。では、一緒に来てもらえませんか?彼等の代表を紹介します」

 「はい、分かりました。ご一緒します」

 僕はファビオさんとその集団に向かった。


 ファビオさんが、僕をその集団の中の背の高い男に紹介した。

 「トーリさん、この方がこの村の責任者のアルス様です」

 「アルスです」

 僕は頭を下げた。トーリと紹介された男は痩せているが肩幅が広く、農民というより元兵士のような雰囲気をもっていた。彼は、驚いた表情で僕を見ていた。

 「冗談ではないか。この村の責任者が子供だなんて。かつぐのはやめてくれよ」

 「本当のことです。この村の主はアルス様で、アルス様がお一人で作られました」

 その男は穴が開くように見つめた。やがて、それにも疲れたのか、ゆっくりと言った。

 「もう、なんでも良い、どうなんだ?我々を受け入れてくれるのか?病人も怪我人もいる。早くしないと死ぬ者も出てくる。お願いだ、村に入れてくれ」

 彼は必至に頼み込み、土下座までした。僕はそれを見て言った。

 「すいませんが、まず、病人と怪我人を見ます。案内してください」

 「えっ」

 彼は顔を上げ、僕を見つめた。僕はもう一度、今度は、強めに言った。

 「病人と怪我人を見ます。案内してください」

 彼はもう一度、僕を見て、動き出した。

 「こっちだ」

 僕は彼の後をついて行った。

 

 病人は二、三歳に見える子供だった。凄く苦しそうな咳をして、ぐったりしていた。母親と父親らしき人が付き添っていた。見ただけで原因が分かった。栄養不足から免疫力がなくなり、風邪をひいているのだ。苦しそうな様子から死に至る可能性もあった。

 僕は言った。

 「薬を出すので、少しづつ、飲ませてください」

 僕はヒールポーションを取り出し、母親らしき人に渡し、ゆっくり飲ませてもらった。

 ”ゲホッッ”っと最初は吐き出していたが、ポーションの効果か、上手く飲めるようになり、最後まで飲み干した。その頃には、呼吸も安定し、苦しそうな表情が消え、頬にも赤みが出てきた。それを見て、僕はプリンを取り出し、子供の親に渡した。

 「これは食べやすく、滋養のあるものです。胃が受け付けないこともあるので、少しづつ食べさせてあげてください」

 親が子供にプリンを一匙、唇に付けると、子供が目を開け、口を動かした。そして、さらに大きく口を広げて、もっとと要求した。もう、大丈夫だろう。

 「もう、この子は大丈夫だと思います。次の人をお願いします」

 次の人は、腰の曲がった老人で片足が変な形に曲がっていた。良くここまで歩いてこれたものだ。

 「少し、足を触らして下さい」

 と言って、その老人に足を投げ出すように座ってもらった。調べると、骨折した足がずれて癒合していた。僕は骨を正常に戻すイメージ呪文を唱えた。

 「ヒール」

 足の周りが一瞬光って、そこに回復した足があった。それと、足の痛みを和らげるために曲がってしまった腰も治した。

 「ヒール」

 僕は、声をかけた。

 「立ってみて下さい。痛みはありますか?」

 老人は立ち上がった。腰も曲がっていなかった。老人は若返ったように見えた。そして、叫んだ。

 「痛くない。足も腰も。元に戻った。ありがとうよ、坊主」

 「アルスと言います。でも、余り、無理をしないで下さい。筋肉はまだ回復したばかりです。慣れないと転ぶかもしれません。では、次の人はどなたですか?」 

 見ると、僕の前に順番を待つ行列が出来ていた。僕は戸惑いを覚えた。


 ファビオさんがトーリさんに言った。

 「トーリさん、さすがに病人、怪我人が多すぎます。これでは、アルス様も疲れてしまいます。緊急な人だけお願いします」

 「あー、そのようだな。アルス様、失礼しました。子供に見えても凄い力を持っているのが分かった。先ほどの無礼、謝る。申し訳ない」

 そして、彼が率いてきた村人に告げた。

 「皆の衆、少し待ってくれ。この小さな人が村の領主とのことだ。怒らせるとこの村に入れなくなる。もう少し、待ってくれ!」

 僕の納得しない言い方だが、行列が少しづつ無くなった。

 そして、僕は、大量のパンを異次元収納から取り出してトーリさんに渡した。

 「とりあえず、このパンを食べて、皆さん、待っていてもらえますか?あと、水はありますか?」

 僕が言うと、ファビオさんが返した。

 「あー、水は暁の光に運ばせるので、アルス様は早くカミーラ王女とお打合せをお願いします」

 「そうですね、そちらを急ぎます」

 「良い返事を」

 トーリさんが声をかけた。約束できない僕は、頭を縦に振るだけで、その場を離れた。

 「ふわふわのパンだ」

 後ろから声が聞こえた。


 僕はカミーラ王女を探した。学校にもおらず、家にもいない。目星をつけていくとクロードさんの食堂にいて、かき氷を食べていた。

 僕を見つけると、カミーラ王女が言った。

 「あっ、アルス。これは、中身は水だから、クロードが太らないからと言って勧めたのだ。決して、私が要求した訳ではないぞ」

 横にはスコッテイ王女がいて、言い出した。

 「姉様がクロードさんに、太らない食べ物をだせと言われたではありませんか?」

 「スコッテイ、いい加減なことを言うではない」

 「いえ、本当のことです。クロードさんに聞いてもらえば分かります」

 「スコッテイ、クロードは休憩しているのだ。聞くことはできない」

 「でも、あそこにいますよ」

 スコッテイ王女が指さすと、その先にクロードさんが居て、僕を見て笑っていた。カミーラ王女が話を代えて来た。

 「ところで、アルス、村の入口が騒がしいが、あれは何だ?」

 「カミーラ、そうなんです。困窮した村人からこの村に移住したいと申し出がありまして、相談しにきたのです。フジャイラの民が反対しないでしょうか?」

 「それはない。フジャイラの民は寛容だ。村人が増えるのは良い事だ。断わる理由はない。して、其方はどう思うのだ」

 「はい、僕も受け入れたいと思っています」

 「で、あれば、問題ないではないか?」

 「問題はあるのです。受け入れる家がありません」

 「作れば良いであろう。そなたなら、一日もあれば作れるだろうに」

 「はい、作る時間があればですが」

 「無いのか?」

 「はい」

 「何故だ?」

 「村の入口に百人くらい既にいるのです」

 「何故、それを先に言わない」

 「聞かれなかったからです」

 カミーラ王女は、不敵な笑みを浮かべて言った。

 「アルス、百人くらいなら何とかなる。何せ、そなたは私の夫だからな」

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