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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第38話 転生者、頑張る

 「アルス様、おはようございます」

 「アルス殿、お早いですな」

 僕は、朝食の前に食堂の新メニューの提案、魔道具工房の作業準備をして回った。その途中で、色んな人から声がかかった。皆、気持ち良いほど、元気な挨拶だった。村人が元気であれば、村中に活気が出てくる。

 「プリン、美味しかったですよ」

 「ホットケーキも美味かった」

 魔法授与式で受けた”アイディー”の魔法での給料はPTで支払われ、そのPTで食堂で甘味も食べられる。その効果もあるのか、村で労働するということが喜びに変わっていくのも分かった。

 ここまでは、僕の思い描いた通りに村は成長していた。


 僕とカミーラ王女、スコッテイ王女の三人は、クロードさんが出す新メニューの試食をしていた。この世界の料理は焼くか煮るかがほとんどだった。だからこそ、トウモロコシから搾った油で作る揚げ物は革命だった。

 ジャガイモを薄く切って揚げたチップス、少し、厚めにきって揚げたフライドポテト、次は鶏肉に小麦粉をまぶして揚げたフライドチキン、猪肉に小麦粉をまぶして揚げたカツフライ。塩と胡椒のシンプルな味付け。また、トマトをペースト状に塗り、茹でたトウモロコシの粒をのせてこんがり焼いたコーンピザ。前世で食べていた料理が、この異世界にも並び始めていた。

 「美味しい」

 カミーラ王女が言うと、

 「みんな美味しいわ。フジャイラの王宮でも食べたことがない」

 スコッテイ王女も続けた。その反応に、クロードさんの顔も緩みがちだった。

 「アルス坊ちゃんの言われる通りに作ってみましたが、もっと美味しくできそうなことも見つけました。これを基本に、これから、改善していきます」

 そう言うクロードさんの自慢げな顔を見ていると、クロードさんもここの村民として何かを成し遂げているという実感が出てきたのかもしれない。

 「クロードさん、これも食堂のメニューに追加しましょう。どの料理をこれから特別メニューとして有料にするかの判断は、一度、全メニューを出して、評判を確認したうえでということにしましょう」

 と、僕は言った。

 「アルス、貴方の知識は凄いな。便利なものだけでも十分なのに、美味しい物まで考えつくなど、さすが私の夫であり、王だ。私も誇らしいぞ」

 カミーラ王女からの褒め言葉に僕は思わず顔が緩んだ。

 「そうですね、私もそんなアルス様の奥様にしていただけないかしら」

 と、スコッテイ王女が僕を見て言うと、カミーラ王女が妹をキッと睨み、そして、僕に低い声で言った。

 「アルス、妹を誑かすことは私への裏切りだ。よもや...」

 「何を言うのですか?誤解ですよ。スコッテイ王女も変なことを言わないで下さいよ」

 舞い上がっていた気持ちが、急にしぼんでしまった。

 

 共同浴場に女湯を新設するにあたり、浴槽に風魔法で泡を出す仕組みを追加した。そして、休憩所には水だけでなく、ワインを薄め風味付けしたものに黒蜜を入れ、冷やしたものをワインジュースとして販売するようにした。こちらは食堂でも販売している有料商品である。

 一日や半日の労働後に、風呂に行き、汗を流し、労働で得た収入が楽しみにつながっているようだ。

 お風呂の湯温の調整に行っていたときも、浴槽でそれを喜ぶ村人の会話が聞こえた。

 「いやー、汗臭い体で過ごすのでなく、綺麗にして、湯に浸かっていると疲れが取れるね」

 「あー、あと、湯上りに飲む冷えたワインジュースは美味いね。俺は貴族に生まれ変わったのではないかと思うくらいさ。奴隷だった頃には考えられなかったな」

 「そんな美味いジュースを飲むために働く。働いたらそれが飲める。当たり前のことが奴隷生活ではできなかった。ここは時折、天国じゃないかと思う事があるよ」

 僕はその声を聞き、ニマニマとしていた。僕が考える民の幸せに触れたような気がした。それでも、僕は気を引き締めた。

 今の憧れは、いつか普通になる。

 そして普通は、やがて当然になり、最後には義務になる。

 王である以上、次の憧れを用意し続けなければならない。

 それは、少しだけ恐怖でもあった。

 多分、カミーラ王女は、民を甘やかせてはいけないと叱るだろう。そうかもしれない。しかし、僕は王として、今は村だが、このフジャイラ国を前世の僕が快適に生きてこれた国以上のものにしたいのだ。


 念願の主食である小麦の収穫も終わり、森の栄養を含んだ土地のせいか豊作となり、50人程度の村には過分の量となった。嬉しい限りだった。

 また、果樹として植えたブドウも良く実り、次の収穫を待っている。ブドウが収穫できれば、本格的なワイン造りを行う為、ワインの醸造所と蔵を作る必要があった。僕はその施設を作っていた。

 本格的な実りの秋を色んな食材の収穫を段階的に行ってきた。トウモロコシからはじまり、トマト、ジャガイモ、サトウキビ。村人の割には豊富な食材が確保できた。確保した食材は、僕が作った異次元収納に保管し、傷んだり腐ったりすることもない。

 村人の喜びの中には豊富に揃えられた食材で食堂に追加された新しいメニューを愉しむこともある。食は村人の楽しみになった。

 それを愉しんでいるのは村人だけではない。満喫しているカミーラ王女は少し太り気味なのを気にし始めていた。

 「アルス、クロードに少し注意しろ。食堂の前を通る度に私を呼び止め、新しいメニューを評価させるのだ。そのせいで、私は太った。いざと言うときに素早く動けないのは困る。何とかせい」

 「いや、太っているようには見えません。いつものように魅力的です」

 「そう、そうか。アルスが良いなら、まあ、許す」

 横にいたスコッテイ王女が余計なことを言った。

 「姉様が食堂で毎回、何か新しい物を考えたかとおっしゃるからクロードが頑張って出してくるのではないですか?それに、お代わりもされます。太らない訳はないです」

 「スコッテイ、余計なことを。でも、アルスは魅力的だと思っている。それで良いではないか?なあ、アルス」

 「はい、いつになく健康的で笑顔も柔らかくなったと思います」

 と、僕が言うと、

 「良かった。して、”健康的”との表現は誉め言葉なのか?アルス、私が太ったということを言っているのか?」

 「いえ、そのような...」

 「いや、思っているのだな」

 カミーラ王女は僕を睨むと、息まいて誰にいうでもなく呟いた。

 「クロードを処分する」

 「何の罪で処分するのですか?姉様が勝手に食べただけです。クロードには何の罪もありません」

 スコッテイ王女が反論した。

 「ううう」

 唸るカミーラ王女が僕に言った。

 「アルスが全て悪い」

 結局、なぜか僕が犯人扱いされた。


 そんな中、ファビオさんと護衛をしていた暁の光が村に戻って来た。旅の疲れた顔ではあるが、僕を見つけて、ファビオさんは明るかった。

 「アルス様、帰ってまいりました」

 「ファビオさん、お疲れ様」

 「ちょっと見ないうちに村が変わりましたね。なんか、以前より、活気があるというか、賑やかな感じがします」

 「そうですか?小麦の収穫とか色んな作物の収穫が豊作だったからではないですか?当面、村では困らないようになりました」

 「良かったですね。こちらの商売も順調過ぎるくらい順調でした。王都のフェルプス商会も凄い反響と売上で混乱しております。魔道具があれば、すぐに、王都に戻りたいくらいです」

 「良かったですね。魔道具は3000個は用意できてますよ。いつでもどうぞ。でも、その前に、お疲れでしょうから、共同浴場で汗を流され、さっぱりされたらどうでしょうか?それから、お話を色々聞かせてください」

 「はい、そうしますが、アルス様。この村に新しい住民を受け入れることはできませんか?」

 「いきなり何の話でしょうか?」

 「いえ、実は、途中で...」

 ファビオさんの言葉を遮るように、クロエさんが言い出した。

 「帰る途中で死にそうな子供を見つけて話を聞いたら、お腹が空いて死にそうだっていうから、ご飯を上げたんだよ。そしたら、その村人がみんなついてきたんだ」

 クロエさんが振り返ると、村の入り口の先に汚れた集団がいた。

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