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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第33話 転生者、食糧危機に陥る

 落ち着いてきたスコッテイに三階のお風呂を勧めた。最初なのでカミーラ王女と一緒に入るとのことだった。長く苦労した妹の扱いに戸惑っているのかもしれない。この前の告白では、自分のために妹と弟を両親が犠牲にしたとは言っていたが、あれは自嘲的なカミーラ王女なりの自分だけが逃げ出せたことによる幸運の裏返しだったのかもしれない。

 僕は彼女達がお風呂に入っている間に、脱いだ服にこっそり、クリーンの魔法をかけておいた。そして、異次元収納からパンとスープ、蒸したジャガイモにローストした肉を切り分け、とっておきのワインを出しておいた。この世界では何歳からお酒が飲めるかは分からないが、王族だったので、そういう嗜みはあるのではないかと思った。

 ところで、スコッテイは何歳なのだろうか?


 お風呂に入ってスッキリした二人が戻って来た。どちらも可愛いというより、綺麗である。似ているが微妙にパーツが違う。特に髪の色と目の色が違う。カミーラ王女は髪が黒く、目が青い、スコッテイは髪が黒と言うより茶系で目が薄い青だ。何となく、咲ききった花とまだ蕾の花という感じか。

 クリーンで綺麗にしたせいか、くすんでいた服の色が変わって、灯りの魔道具に照らされたスコッテイにも王族の気品が出てきたように思えた。それに、二人の表情に和やかさが戻って、無事に終わった事を改めて感じた。

 彼女たちにテーブルに置いた食事をしておくように言い残して、僕は風呂に向かった。

 

 風呂で裸になり、浴槽に浸かると、体のあちこちに擦り傷とあざがあることに気づいた。無理をしている。なんとなく、体の傷を見て思った。

 まだ、七歳の体である。前世の知識ではまだまだ子供なのだ。それが、いくら戦士の補助があるとはいえ、魔物と戦うなんて考えられないのだ。僕は自分自身に回復魔法をかけた。

 「ヒール」

 僕は体の傷が治ると気持ちも前向きになった。

 そして、分かった気がした。

 この傷の痛みが誰かを守るために力を僕に与えてくれ、それが、生きることに意味を持たせてくれてることを。


 風呂から二階の部屋に戻ると赤い顔の可愛い女たちがいた。お風呂で疲れもとれ、お腹も膨れて、それに、少しばかりのアルコールが気持ちを弛緩させているのだろう。顔つきに険しさがなくなり、普通の少女に戻っていた。

 「アルス、アルスも食べて。残しておいた」

 カミーラ王女が言った。

 「ありがとうございます。自分の分は別に取り分けてありましたので、残す必要はなかったのですよ」

 僕が言うと、カミーラ王女が言った。

 「これが夫に対する妻の愛よ」

 かなり酔っているのだろう。僕はこの前食べ損ねたプリンを異次元収納から二つ取り出した。

 「この前作っておいたプリンですが、デザートにどうぞ」

 と言って、僕はカラメル代わりに黒蜜をかけて出した。

 二人が食べだすと、

 「甘い」

 「美味しい」

 と、声が漏れた。王族としては品がないのかもしれない。だが、それだけ素直に喜んでいた。気安さがそう言わせているのだろう。

 僕がスープでパンとローストした肉を食べ始めると、カミーラ王女が僕に言った。

 「アルス、今日は本当にありがとう。助かったわ」

 「いえ、何も大したことはしておりません。逆に命を救われました。こちらこそありがとうございました」

 「違うのだ、アルス。私と騎士団だけではそもそもあの谷にたどり着けない。その前に、あの谷に行こうとする決断もしなかった」

 「いえ、そんなことは」

 「いや、照れずに聞いてくれ。それがリザードマンと戦いながらフジャイラの民を救出できたのはアルスがいたからだ。感謝する」

 「あのー、お礼が遅れましたが、私からも感謝いたします。ありがとうございました」

 スコッテイも言った。

 「アルス、貴方はスコッテイにも自慢の夫である」

 カミーラ王女は顔を赤くして言った。アルコールのせいかもしれない。

 「スコッテイさん、この村にこれから住んでもらうのですが、お名前はどのようにお呼びしたら、良いでしょうか?」

 「どんな呼び方でも結構です」

 「そうですか...。失礼ですが、おいくつですか?」

 「十五になります」

 ”えっ、思った通り年上だった”

 「では、スコッテイ姫とお呼びすることにしましょう」

 僕がそう答えると、カミーラ王女が横から僕に言った。

 「アルス、貴方は王だ。スコッテイと呼べばよい」


 翌日からはフジャイラの救出民と騎士団を集め、広場で朝食をとった。

 その場で、カミーラ王女が話をした。

 「苦難の道を歩んだ民が今、一緒になれて嬉しく思う。これから、まだ、できて間もない村だが、私の夫でもある領主のアルス王より話がある」

 と、いきなり僕に話しが振られた。僕はその場で立ち上がった。王女の横にいるがテーブルの端からはよくわからないかもしれなかった。

 「アルス?誰?」

 「何処にいる?」

 「えっ、あの子供が領主?」

 色んな声が聞こえた。僕はその中で話始めた。

 「アルスです。この村は僕と王女と騎士団の皆様で開拓したばかりの村で、まだ、まだ足りない物も多くあります。ご不便をおかけしますが、一緒にこの村を作っていって頂ければと思います。ご協力をお願いします。

 そして、来て早々申し訳ありませんが、村の注意事項をご説明します。

 一つ、争い事、困り事があれば領主に相談してください

 二つ、この村には共同浴場があり、誰でも自由にいつでも利用可能です

 三つ、この村にいる以上、働いてもらう必要があります。

 領主としては、リザードマンや魔物の襲来から守るための村の壁の修復。皆様の食料の確保のための農園作業。その他、住居の提供が必須だと考えています。騎士団長が壁の修復。王女が農園作業の指示を行います。住居や村の建物に関しては僕が行います。但し、病人や怪我人はこれに当たりません。体調が悪い人は申し出て下さい。僕が出来る限り治そうと思います」

 と、僕が胸を張って話を終えると、王女が横で囁いた。

 「アルス、いきなり過ぎる。皆が引いているではないか?」

 見ると、朝食を待つ人があ然としている。そうか、子供だと思われる僕が領主で、いきなり、細かいことを言われたら、面食らうか。僕は雰囲気を変えるために、朝食の挨拶をした。

 「神に感謝し、食事を始めましょう」

 その声で、王女、騎士団長、騎士団員の順に食事をし始め、やがて、皆の食事が始まった。

 張り切り過ぎたことを反省していると、クロードさんが困った顔して言ってきた。

 「アルス坊ちゃん、王都から持ってきた食料が底をつきかけています。この人数だとあと数日で食料がなくなります」

 僕は思わずクロードさんの顔を見直した。クロードさんが答えた。

 「私の顔を見直しても食料はふえませんよ」

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