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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第28話 転生者、動き出す

 僕はほとんど眠れなかった。僕の中の大人の金子が興奮して騒いでいたためだ。

 僕は寝不足のまま起き上がり、裸のカミーラ王女をベッドに残し、家の外に出た。

 朝日が眩しい。

 未だ光っている灯りの魔道具が並ぶ池に映る陽の光が、この村の新しい一日を告げていた。

 僕も新しい一日を歩き始めなければならない。

 カミーラ王女のためにも。

 フジャイラの国のためにも。

 そして、この村のためにも。


 住みやすい村には人が集まる。

 人が集まれば、国になる。

 僕は王女のためにもこの村を変えるつもりでいる。

 一つは上下水道の改善。

 二つ目は最初の改善による住居の改善。

 三つ目は食生活の改善。

 と、掲げてみたが、難しい課題である。

 けれど、やるしかない。

 全てを一人でやる必要はないのだ。

 作業を細かく分け、人に任せ、並列で進める。

 前世で学んだ知識があるなら、こういう時に使うべきだろう。

 そう考えていると、後ろから足音がした。

 振り返ると、カミーラ王女が起きて来た。

 彼女は僕の隣に並び、池の水面を見つめた。

 

 「今日も良い日が始まる」

 王女は静かに言った。

 「数日前には見えなかった未来が、今は見える。お前も覚悟を決めた顔をしている」

 僕は頷いた。

 「はい。僕は、王女とフジャイラの国を受け止めます」

 言葉にすると、不思議と迷いが消えた。

 「まだ小さな力ですが、あなたを幸せにするために使います。だから――よろしくお願いします」

 王女は少し驚いた顔をしたあと、ふっと笑った。

 「それが、そなたなりの求婚の言葉か?」

 彼女は僕の前に跪き、そっと頬に口づけをした。

 「受け取ろう」

 そして、小さな僕の身体を抱きしめた。

 「お前は私の希望の光だ。だから、決して私を一人にするな」

 その抱擁は柔らかく、温かかった。

 不思議と、胸の奥に力が湧いてきた。


 朝食の後、僕は騎士団長アレオスに提案を持ちかけた。

 「騎士団の力を貸してください」

 アレオスは一度カミーラ王女を見てから、静かに頷いた。

 「内容を伺いましょう」

 「騎士団を三つに分けます。訓練部隊、農業部隊、そして僕と一緒に村を作る部隊です。午前はそれぞれの仕事を行い、午後は狩猟訓練にしてください」

 そこまで言って、僕は頭を下げた。

 「騎士団の運営に口を出すのは越権かもしれません。でも、お願いします」

 アレオスは迷わなかった。

 「承知しました」

 彼は片膝をつき、頭を垂れた。

 「我が王女が認めた方は、我らの王でもあります。王の命を守ることこそ、騎士の務め。どうか、これからもお命じください」

 周囲の騎士たちも、それに続いた。

 突然の光景に、僕の方が戸惑った。

 すると、僕の隣に立ったカミーラ王女が高らかに告げた。

 「聞け! アルスは私を受け入れた! そして、フジャイラの王になると誓った!」

 騎士たちが息を呑んだ。

 「この村は、新たなフジャイラ王国、最初の村となる! お前たちは建国の民だ! 後の時代に語られる伝説となる!」

 王女の声には、人を惹きつける力があった。

 「頭を使え! 力を尽くせ! そして――夢の国を造るのだ!」

 その瞬間だった。

 「フジャイラ王国万歳!」

 誰かが叫び、それが一気に広がった。

 騎士たちの歓声が村に響いた。

 その中で、状況についていけていないクロードさんだけが、おろおろと視線を泳がせていた。

 ……本当に申し訳ない。


 僕は騎士団員たちを連れ、川辺の粘土と砂を大量に集めた。

 それを使って焼き物の管を作った。

 上水用と下水用――この世界には存在しない、水を運ぶための管だ。村を拡張した時に家の増設がしやすいように、管にはそれぞれに色を着けた。青が上水用で、土色が下水だ。

 村の池の手前に貯水槽を作り、そこには聖魔法の魔道具が動作し、常に綺麗な水が出てくる様にした。その管を各家の前まで繋いでいき、家の前に水場をつくった。そして、水場から流れた水は別の管を通って村の前にある池に流れるようにした。

 そして、貯水槽にある止水栓を外すと、綺麗な水が流れ出した。騎士団員たちは最初こそ意味が分からない顔をして作業していたが、村に水が通ると歓声を上げた。

 昼食の準備をしているクロードさんの前の水場にも水が流れ始めた。

 「水が……勝手に流れている……」

 クロードさんだけが呆然と呟いていた。

 ……本当に申し訳ない。


 昼食後は、下水の対応をした。

 昼前に作った下水管を埋めていき、川の下流まで敷設し、そこに作った下水処理槽で一旦貯めた後、浄化の魔法陣で浄化して、川へ放流するようにした。

 これで第一の目標は達成した。

 次は第二の目標の実現である。


 上水道を敷設してやりたかったのが飲料水の確保とお風呂の設置で、下水道の場合は、トイレの環境の改善である。

 お風呂は明日やるとして、トイレはすぐにでも改善したかった。

 僕は自分の家に戻ると、早速、新しいトイレ設備を作ろうと思った。これまでのぼっとん式トイレからの卒業だ。


 土魔法で座れる便器を作り、座りを確認、調整、修正を繰り返し、満足の行く物ができると、それに、糞尿を流すための水の魔道具を取り付けた。さらに、取り付けた水の魔道具にお尻を洗う機能と風で乾かす機能も取り付けることで、お尻を拭く必要もなくなった。何回か、テストを繰り返し、こちらも満足のいく物となった。

 これが金子の知識の文明だと、カミーラ王女に胸が張れる最初の物だ。

 僕は彼女からのお褒め言葉とそれ以上のものを期待する。


 夕食後、僕は自信を持って新しいトイレの使い方を説明し、カミーラ王女に使ってもらった。

 カミーラ王女がトイレに籠ってしばらくすると、突然、彼女の悲鳴が村中に響いた。

 「ひゃっ、な、なんだこれは」

 「水が、水が勝手に」

続いて、

 「あっ、待て、風まで」

 と混乱した声が聞こえてきた。僕はトイレに近づき中のカミーラ王女に声をかけた。

 「カミーラ、大丈夫ですか?」

 その瞬間、扉が勢いよく開いた。

 顔を真っ赤にしたカミーラ王女が新しいトイレを指差した。

 「アルス、あれは危険な魔道具だ。一度使うと、あれが無くては生きていけなくなりそうだ」


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