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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第26話 転生者、楽器を作る

 カミーラ王女の助けもあり、僕は、新しい魔法陣を完成した。


 基本の魔法陣は、中心核、魔力の星、外周の円で構成されていた。

 博士と改良した魔法陣は、これに魔力を変換するエレメントコアと魔力を一定に保つ大中小の容量をもつバッファ回路を加えた。

 次に、僕の発明で、中心核から水と火と風の魔力の星を順に記述することで、灯りの魔法陣が開発できた。

 それに、カミーラ王女の助言で魔素を吸い込み魔力に変換する回路が組み込めた。これにより、最初に注入した少量の魔力で新しい回路が動き出すと、あとは魔素から補充されるため、魔法陣が自律的に動き続けるようになった。

 効率が飛躍的に改善した。

 

 改善した灯りの魔道具のテストをどうやって行おうかと考えていたら、また、カミーラ王女が、村にある池の周りに灯りの魔道具を取り付けろと言い出した。そして、そこで、国の歌を歌うと言う。

 そのために、僕に楽器を作ることを要求した。いつもの無茶ぶりである。僕は、カミーラ王女からどういう楽器かというのを聞き取ると、転生前の記憶にある二胡のような楽器であると分かった。なぜか、王女は僕に説明すればできると思っているようだった。そんな目で早く作れと要求していた。


 僕はベッド作りで使用した木材を小さな風のブレードで薄く切り出した板と弦を張る棹の部分を切り出した。薄く切り出した板を円筒にし、底面に残りの薄く切った板を円形にして合わせた。土魔法で作った釘を魔法の力で打ち込み、硬化させ、固定した。その円筒に切り出した棹を土の釘で取り付けた。それから、棹に糸巻きを2個つけた。何となく、できそうだ。後は、弦と弓か?

 弓の弦と棹に巻く弦様に馬の尾から毛をもらってきて、馬の尾の毛を調整しながら、太さの違う2本の糸を作った。これを、棹の糸巻きを使ってと円筒に音が響くように、糸を張った。張った糸と円筒の間を開けるために三角の木を挟む。

 細く加工した木をしならせ、平たく並べた馬の毛で弦を張って、弓の弦とした。そして、円筒の底面には、風の魔法陣を描き、音を風で運ぶようにした——いわゆるアンプだ。

 カミーラ王女に試作品を渡し、音が悪い、低い、高いとかを弦の太さや滑らかさで調整し、なんとか、王女の許しの言葉を得た。

 「アルスは私が思った通り、何でもできる子だ。これで、私は練習する。寂しいだろうが、一人で行動せよ。但し、池の周りの灯りを忘れぬなよ」

 カミーラ王女はその言葉で、二胡を持って僕の家へ戻って行った。残された僕は、灯りの魔道具を池の周りに取り付ける作業を行い、池のほとりに彼女が演奏するステージを残りの木材で作った。


 僕がクロードさんにその話をすると、クロードさんが答えた。

 「王女は王女なりに、フジャイラ国に残された国民のことを考えられているのかもしれませんね。それが、今までは何ら目途がつかない状況が続いて諦めていた。しかし、そこにアルス坊ちゃまが現れ、その凄い能力を見てしまった。そして、王女はむりやり坊ちゃんと縁を結んだ。それで、なんとか、なるのではと思われたのかもしれません」

 「なんとか、なるとは?」

 「散り散りになった国民を集めフジャイラ国を再興することです」

 「そうですか?そんなことを考えられているのかもしれませんね。ところで、クロードさんはフジャイラ国をご存じですか?」

 「いいえ、知りません。でも、この世の中のどこかにあったのでしょう。彼らがそう言っているのですから」

 クロードさんは訳知り顔だった。そして、言った。

 「王女が国の音楽を奏でるというのは何かの決意を騎士団に促すものと思われます。私も何か、特別な料理を出してあげたいのですが、アルス坊ちゃん、何か、良い考えがありますか?」

 「王都で見つけてまだ使ってない、とっておきの食材があります。これを使って作ってみましょう」

 僕はクロードさんに言った。


 本日の騎士団と夕方の食事は騎士団の狩りで提供された肉でかなり豪勢だった。そして、いつものように僕のご褒美として、一番のチームには大きめの、その他には控えめの黒蜜掛けのホットケーキが出された。そして、賑やかな食事の時間が終わりかけになった時、王女が立ち上がり、宣言をした。

 「今日、私はフジャイラの民を忘れないために国の歌を歌う。聞いてくれ」

 彼女は、広場の池のほとりに向かい、動き出した。僕は急いで、池の周りの灯りの魔道具を点けて回った。そして、最後の池のほとりにあるステージを明るくすると、そこに王女がきて、用意された椅子に座った。


 夜の池に灯りが浮かんでいた。

青白い光が水面に反射し、風に揺れる。

その中央に、カミーラ王女は静かに座っていた。

手には、今日僕が作った楽器。

王女は夜空を見上げた。

まるで、遠い故郷を見るように。

やがて、万を持して弓を引き上げ、二胡を弾き始めた。

悲しげな音が夜に響いた。


 細く長く、緩く、激しく、低く、高く、抑揚のある前奏の中、王女の力強い歌声が聞こえ始めた。

 それは、物語を語るような透き通った歌声だった。

 ”豊かな緑があり、豊かな実りがある国では、何年も何十年も何百年も変わらぬ平和があった。そこには、勤勉な民がいて、それを愛する王がいた。それは誰しもがいつまでも続くものだと信じていた。

 国の守り神はその平和に飽きたのか、王と民に試練を与えた。

 信仰の山が火を噴き、灰と石をまき散らした。それはいつもの気まぐれですぐおわるはずだったが、一年もの間続き、豊かな緑は消え、実りは無くなり、民は奪い合い、それを見ていた王は嘆いた。

 見るにみかねて、王は自分の食料を与えた。それが、民の奪い合いになると、食べられなかった民は王を、慈悲深き王を襲い、未来の食糧を分け、明日を食べつくし、昔の豊かな国と勤勉な民は消え、人の形をした魔物だらけの国になった。

 その国の王と王妃は魔物になった民に食いつくされ、残された王女は泣きながら、宛もなく逃げた。遠くへ、遠くへ。

 王女は泣きながら、民の生活を今も憂えている。しかし、今の彼女は歌う事しかできない。ただの一人の娘だ。

 私の元へ、帰って来てくれ、勤勉な民よ。そして、もう一度、豊かな国を造るのだ。

 私に力を与えてくれ、彷徨う民よ。もう一度、豊かな国を造るのだ”

 そして、彼女の歌は終わった。

 屈強な騎士団員の肩が震え、押し殺した嗚咽が続いていた。それに誘われるように僕も泣いた。クロードさんも号泣していて、用意していたとっておきのプリンがとうとう出せずじまいだった。


 新しい使命が僕に伝えられた気がした。

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