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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第25話 転生者、新しい知識を得る

 「誰?」

 僕が眠りから目覚めると、僕の腕に温もりを感じた。ハッとして、起き上がり、僕の腕の先を見ると、長い髪の女性が何も身に着けず眠っていた。

 「えっ、どうして?」

 僕は急いでベッドから飛び降り、僕が寝ていたベッドを見るとその体の線からやはり裸の女性だった。

 ——あの人しかいない。悪い冗談だ。

 しばらく眺めていると、カミーラ王女は目覚めたらしく、半身を起こし、僕を見つめた。彼女の胸が露わになった。

 「アルス?アルスか?どうした?」

 カミーラ王女が問いかけて来た。

 「なんで僕のベッドで寝ているのですか?」

 「なんで?不思議な事を聞く?そなたは私の夫で、私はそなたの妻じゃ。夫婦であれば一緒に寝るのが当然ではないか?」

 「えっ、夫婦?」

 「そうじゃ、そなたは昨日、私と結婚すると言ったではないか?そして、一緒にフジャイラの国を再興すると約束した。アレオスも聞いておるぞ」

 「えっ、結婚?フジャイラの国を再興?」

 「そうじゃ」

 「でも、僕は一人で食事から帰って来て、ここで新しい風の魔道具をテストをしていて、それから一人で寝ていたと思うのですが...」

 「確かに寝ていた。妻である私を迎えも来ず、放っておいてぐうぐう寝ていたな。愚か者が、新婚の妻を寂しがらせる痴れ者だ。

 待っていた私は泣きながら、アレオスに相談したのだ。アレオスは、お前が恥ずかしがり屋で私を迎えに来られないのかもしれないと言った。そして、私に待っていないで、お前の元に行った方が良いと言ったのだ」

 「えっ、騎士団長は何てことを言うんだ」

 「来てみると、お前は私が持っていないふかふかベッドで寝ていた。結婚の夜に寝てしまう不甲斐ない夫に儚んで私は泣いて寝てしまったのだ。責任をとれ!」

 「えっ、責任をとれと申されても、僕はまだ七歳で...」

 「お前は私を弄んだ責任をとれぬと言うのか?」

 「えっ、」

 「もう、この人でなし。大きな声で叫ぶぞ。おい誰かおらぬか?来てくれ!」

 王女の声が響き、人が僕の家の周りに集まって来た。朝食の用意をしていたクロードさんもやってきて、僕の家に入るなり、部屋の様子を見たまま固まった。

ベッド。裸の王女。青ざめた僕。

そして、声を上げた。

 「アルス坊ちゃま、王女に何をなされたのです」

 「いや、何も...」

と言いかけると、王女がすかさず言った。

 「私はアルスに弄ばれたのだ。そして、その責任をとらぬと言う。フジャイラの国の法により、こやつに死罪を与える」

 クロードさんが真面目に受け取ってしまう。

 「アルス坊ちゃま、それは謝って済むことでありません。王女、許されるなら、このクロードが死んでお詫び申し上げますので、アルス坊ちゃまのご無礼をお許しくださいませ」

 と、事態が異常な方向に動き出した。僕は、堪り兼ねてカミーラ王女に言った。

 「分かりました。王女、私、アルスは貴方とフジャイラの国の再興を誓います」

 「そうか、であれば、それで良いのだ。

 皆の者、私とアルスは夫婦だ。

申し訳ない、他愛もない夫婦喧嘩を見せてしまった。悪い方が謝った。これで夫婦喧嘩は収まったのだ。もうよいぞ、皆、自分の持ち場へ帰れ」

 この話の流れについて行けないクロードさんが口をパクパクさせていた。ちらっと見えた騎士団長が悪いを顔をして、笑っていた。

 

 朝食が始まるとカミーラ王女はいつの間にか僕の横に座り、クロードさんや僕にあれこれと指示するようになった。食事の前には髪の毛は整えろとか、皆の前で神に祈るべきだとか、フォークとナイフの使い方が雑だとか、非常に疲れる食事となった。その上、クロードさんに朝から、黒蜜掛けのケーキを要望してきたり、肉の味付けを濃くしろとか、散々だった。気づけば、朝食が終わる頃には僕よりクロードさんの方が疲れ切っていた。

 カミーラ王女は本来は生活に厳しい人だったのだ。


 それから、カミーラ王女は僕について回った。最初はうるさい気もしたが、実際、一緒に行動すると、すぐに、有能なことが分かった。やることにそつが無く、無駄がない。だから、侍女がいなくても身の回りの事がやってこれたのだろう。

 

 僕は家の前にある魔道具工房で灯りの魔道具を作ることにした。手作業でファビオさんが戻る前にはかなりの量を作る必要がある。

 その作業中、僕の横にいるカミーラ王女は何かにつけ質問してきて、僕の手を止めさせた。そして、僕が灯りの魔道具のテストをした時、ぽつりと言った。

 「魔力を無駄使いしている」

 「えっ、どういうことですか?」

 「魔素は魔力になる」

 「それは分かります。体内でそう変換されますよね」

 「そう、でも、この魔法陣にはその回路がない」

 「えっ、どういうことですか?」

 「知らないのか?魔法の基本だ。この世界は魔素で満ちている。その魔素を使うのが魔法だ」

 「えっ、ますます分からなくなってきました」

 「魔法は、魔力を発火点にして、魔素を吸収しながら魔力に変換し、変換した魔力をつかって、魔法を継続し、より強力な魔法となる。その魔法陣は魔力を無駄に使っている」

 「という事は?」

 「なんだ、分からぬのか?」

 「はい、教えて下さい」

 「魔素を取り込み、魔力に変換する回路がないのだ」

 「えっ」

 カミーラ王女の言葉に僕は衝撃を受けた。当初、魔素を魔臓で取り込み魔力として貯蔵すると分かっていたではないか。しかし、アーネスト博士から魔法陣の説明を受けた時に、魔法陣はアーネスト博士の説明通りに進めることだけを考え、別の可能性を見落としていた。

 「なるほど、中心核の魔力入力からくる魔力を使って、魔素を魔力に変換する回路を動かし、そこでできた魔力で魔法陣を動かせば、少ない魔力で魔道具の魔法が動き出す。それが実現できれば、かなり、効率の良い魔道具ができる。素晴らしい」

 僕は、目の曇りが取れて、魔法陣がはっきり見えるようになった気がした。

 「カミーラ王女、ありがとうございます。これは大発明になります」

 僕は高揚して、感謝の気持ちを伝えた。

 「おい、アルス。いや、アルス様、私はそなたの妻だ。カミーラと呼べ。そして、ここは魔法の理を教えてもらった感動で、私に抱き着くとこだろうが。ほれ、ほれ」

 カミーラ王女は両手を突き出し、抱擁を強要した。僕はゆっくり彼女に近づき、軽く彼女の体を抱いた。

 「やればできるではないか?」

 カミーラ王女は言った。そして、続けた。

 「アルス様、言っとくが、人前でこういう事をやってはいけないぞ。私は慎み深い女だからな。わかったな」

 なんとなく、カミーラ王女のペースで僕が動いてる気がしてならない。

 

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