第24話 転生者、村を拡張する
夕食にはクロードさんにお願いしてジャガイモ料理を出してもらった。
皆が食べるテーブルには新しく見つけたジャガイモが並んだ。茹でて塩を振っただけのもの。潰して塩胡椒を混ぜたもの。それを焼いた肉に添える。
「なんだこれは……美味いぞ!?」
特に、潰したジャガイモをパンにつけて食べる方法は騎士団に大好評だった。
食後に小麦粉で果実入りのケーキを焼いてもらい、黒蜜をかけて出してもらった。やはり、騎士団でも甘い物には弱いようで、黒蜜掛けの甘いケーキは好評だった。特にカミーラ王女はお代わりを何度もした。彼女は言った。
「このケーキかかっている甘い蜜はどうしたのだ?誰が作ったのだ?」
クロードさんが答えた。
「アルス坊ちゃまです」
「ふーん、アルスは小さいのに色んなことを知っている。褒めて遣わす。その代わりに、もう一つケーキをもらいたい」
「もう、ありません」
クロードさんが言う。
「そこにあるではないか?」
「これは、アルス坊ちゃまの分です」
「それをよこせ、私は食べたい。私は王女だ」
「だめです」
クロードさんが即答した。
「おい、騎士団長、そちからも、クロードに物申せ」
「はっ、しかし、あれは、アルス様の物と決まっている以上、私の方からなんとも」
「騎士団長、お前はいつから、私の命に背くようになったのだ。私の乳母である、お前の奥方がここに居れば、厳しく叱ったであろう」
それを見ていた僕はクロードさんにお願いした。
「カミーラ王女、分かりました。クロードさん、僕の分を王女にあげてください。僕は試作するときに十分にいただきましたから」
「そうですか?アルス坊ちゃまがそう言われるなら、お出しします」
クロードさんが不服そうに王女の前に僕の分を差し出す。王女はすぐに手を出し、その皿を受け取った。
「アルスは生意気だ」
王女はケーキを食べながら言った。
「子供のくせに偉そうで、妙に落ち着いておる。たまに腹が立つ」
「はぁ……」
「だが、美味しい物を作るので許す」
凄い理屈だった。
頃合いだと思って、僕は話始めた。
「皆さん、お話があります。今の食事にだしたジャガイモと甘い蜜の素であるサトウキビをこの村の近くで見つけました。これは大変貴重な食材です。
他の村や冒険者が見つける前に、我が村のものとするために柵を作りたいと思います。明日、ご協力をお願いします」
ケーキを食べかけの王女が口を挟んできた。
「騎士団長、絶対、他の者に盗られるのでないぞ。もし、盗られそうになったら、力ずくで取り返すのだ」
「王女、我々は盗賊団は止めております」
騎士団長が答えた。
「あー、そうだった。それなら、国家のもめ事となれば私が出よう」
「カミーラ王女、そう言う事を話しているのではありません。あくまでもジャガイモとサトウキビの群生地を我が村の畑とするために、道と柵を作る協力を騎士団にお願いしているのです。戦う必要は全くありません」
僕は答えた。
「アルス、お前はまだ小さい。国の経営のことなど知らんだろう。村で困ったことがあったら、遠慮なく相談せい。
うん、でも、村のような狭い所の細かいことを聞かれても、国の経営をしてきた私には分らぬことも多いかもしれん。この村が国家レベルになったら、いつでも、相談に来い。適格な助言ができるぞ」
王女はそう言うと、屈託なく、残りのケーキを食べ始めた。彼女の話したいことは終わったらしい。
「騎士団長、明日は力仕事をお願いします」
その僕のお願いに騎士団長は無言で頭をさげた。
翌日、僕は騎士団長に同行し、風魔法で草木を切り倒し、土魔法で道を造りながら、サトウキビの群生地を囲むように柵を作ってもらい、また、ジャガイモにも同じように柵をつくってもらった。村から離れてはいるが、作った道にも柵をつければ、村の領地のように見えるだろう。
そして、その帰りに、騎士団長に騎士団を5人くらいの3チームに分け、狩りの競争をしてもらうというのはどうかと打診した。騎士団は暇な時間ができると剣術やストレッチ、ウエイトトレーニングをやっている。その一環として、食肉にできる動物の狩りをそのメニューにいれてもらい、その食肉に報酬を与えるという提案である。これにより、狩りの訓練にもなる。食料も増える。チーム連携も鍛えられる。我ながら、一石三鳥の案だと思った。
騎士団長は答えた。
「そうですね、私達は労働と言う形で村に役立っていると思っていますが、稼いでもおらず、アルス様の食料を食いつぶしているだけです。それに、王女は小言をいうだけで、アルス様の足手まといになっており、いつ、放りだされてもしかたない状況です。アルス様のおっしゃるように、今日にでも狩りの訓練を取り入れ、少しでも村の食料事情の改善ができるように頑張ります」
「いえ、そんなつもりは無いのです。騎士団の皆さんがいるだけで、村が守られるという安心感があります。それに、僕とクロードさんだけではどうして良いか、わかりませんし...」
「そうですね、私達もいずれ王女を連れ、フジャイラの国を建国せねばなりません。ただ、資金もなく、人員もおらず、どうしようもない状態で、アルス様の好意に甘え、その気持ちが薄れておりました。流浪を始めた頃の気持ちを思い出し、これから精進していきます。もう少し、この村の滞在をお許しください」
「うーん、あまりいい提案ではないかもしれないですが、その新しいフジャイラ国の始まりをこの村にしたらどうですか?そしたら、出ていく必要もなくなります」
僕の言葉に騎士団長が驚いたようにして、僕を見つめ直す。そして、時間を置いて、聞いてきた。
「アルス様は、王女を娶り、フジャイラ国をここに作るということでしょうか?」
「ええっ、そんなつもりでは...」
僕のそんな言葉を聞かず、騎士団長は黙り込んでしまった。
騎士団は午後、訓練となり、早速、狩猟という訓練をとりいれてくれたようだ。騎士団長も参加し、ゲームという要素が強い趣となるようだ。その狩猟ゲームの獲物の評価に関しては、騎士団長から僕に依頼された。公平な評価と言うのは信頼につながる。評価者の責任は重大である。
僕は工房の前にいた。ベッドを作ろうと思う。
やはり、地面に藁のような枯草を敷いて寝るのは耐えられないのだ。
異次元収納から大量にある木を取り出した。余計な枝を風魔法で作ったハンドブレードで取り除き、丸太にし、生木では加工にしにくいため火魔法で乾かしていった。十分に乾いたところで、再び、風魔法で作ったブレードで角材にしていった。その作業で大量の木材ができた。
長方形に枠を組み、土魔法で作ったドリルで穴を開け、土魔法で作った土の釘を打ち込み、固定した。それができたら、長方形の中にも補強材を入れ、土魔法のドリルと注入した土の釘で固定していく。そして、長方形の角に足を作った。これを風魔法でひっくり返すと、台ができた。クロードさんに作ってもらった布の袋に取ってきたサトウキビの葉を詰めていって、マットレスを作ってベッドに乗せた。
同じ要領でクロードさんのベッドとマットレスを作った。大きさが違うので時間がかかったが、少しは、生活が快適になるかもしれない。
本日の夕食は騎士団の頑張りで豪華な肉祭りとなった。騎士団の3チームに分かれた狩猟ゲームの成果は、小柄な猪、二羽の大きな鳥、一羽の丸々太ったウサギだった。今回は騎士団長から言われた通り僕の判断で、数で二羽の鳥をとって来たチームを優勝とした。ご褒美はかき氷の黒蜜掛けである。
しかし、食事の後の特別なデザートは食べられなかった者たちは皆、羨望の眼差しを向けた。僕はこの不公平が次の狩猟ゲームへの活力を作る物だと思ったが、それはやり過ぎてはいけないと以前の記憶からの警告があった。
クロードさんと相談して、すぐに、小さな容器で残りの人にかき氷の黒蜜掛けを配った。
「アルス」
カミーラ王女が僕に話しかけて来た。また、かき氷の黒蜜掛けの追加の要望かと思ったら違った。
「私はお前の妻になっても良いぞ」
「えっ、いきなりなんですか?」
「アレオスから聞いたのだが、お前は国を造りたいのだろう?私と結婚すればフジャイラの国を造ることができる。何しろ、私は王女だからな。お前は国王じゃ、良かったな。
安心せよ。私は美しく、聡明で、しかも王女だ。それに比べて、お前は小さくて頼りない。しかし、美味しい食べ物を私に持ってくる忠義な男だ。その忠義に免じて結婚してやる」
「えっ、結婚?アレオスって言う人を知りませんが」
「そこにいるだろう。あれじゃ」
カミーラ王女が指さす。
「騎士団長!」
思わず、大声を出す。騎士団長がその声に驚きビクッと肩を震わした。そして、僕とカミーラ王女の方を見て何かを悟ったように笑いかけて来た。何か、悪い事を考えている顔をしているように見えた。




