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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第19話 転生者、池を作る

 僕は、この場所に一番大事なものが無いことに気付いた。

 水場だ。

 ここで暮らしていた騎士団の人に聞いてみると、近くの川から水を汲んでいたらしい。

 「案内してもらってもいいですか?」

 僕が頼むと、騎士団員の一人が頷いた。

 森の奥へ進んだ。

 草は深く、子供の僕には歩くだけでも大変だった。

 しばらくすると、小さな川が見えてきた。

 ……なるほど。

 水は十分ある。

 なら、後は道だ。

 僕はアジトへ続く方向に手を向けた。

 風魔法を発動。

 「ウインド」

 次の瞬間、

 ”ズガガガガガッ”

 風の刃が森を一直線に切り裂いた。

 木々が次々となぎ倒され、鬱蒼としていた森が一気に開け、遠くにアジトまで見えた。

 「お、おお……」

 騎士団員たちが息を呑み、残った切り株は、土魔法で周囲を柔らかくしながら取り除いていった。

 それだけで、人が十分に通れる道が出来上がった。

 でも、まだ足りない。

 次は水路だ。

 僕は道の横へ視線を向けた。

 幅三メートル、深さ二メートル。長く、大きな溝をイメージする。側面と底は崩れないように硬化。

 魔力を一気に練り上げた。

 そして、

 「アース!」

 ゴゴゴゴゴゴ……!!

 地面が大きく揺れた。

 土が盛り上がり、一直線に巨大な溝が掘り進められていった。

 まるで、大地そのものが道を譲っているみたいだった。

 ……でも。

 その代償は重かった。

 ズキンッ。

 頭の奥が痛む。

 一気に魔力を持っていかれる感覚。

 僕はその場に膝をついた。

 「はぁ……っ」

 視界が揺れた。

 これだけ長く、深い溝を作るには、想像以上に魔力を使ってしまった。あー、また、クロードさんに叱られてしまう。そう考えるとさらに頭が痛くなってきた。


 僕は騎士団員の一人に背負われてアジトに戻ると、それを見つけたクロードさんから長い小言をもらった。

 「アルス坊ちゃま、あれだけ無理をなさらないで言っていたのに。坊ちゃまは魔力の量が大人並みですが、魔力は使えば無くなるのです。もし、必要以上に使おうとした場合、体のできていない坊ちゃまは死の危険もあるのです。本当に注意してください。坊ちゃまがいなくなると、このクロードはどうなるのです。今更、王都には戻れないのですよ...」

 魔力切れの気分の悪さの中で、さらに気持ちが落ち込んで行った。


 少し、家で休んで気分の悪さが無くなったので、クロードさんに隠れるようにして、また、水場の作業に戻った。

 まだ、水を通していない水路から、アジトに水を引き込み、広場に生活用の小さな池を作る。その池の排水が、水路に戻るようにし、水路の終点に農業用の大きな溜め池を作る。溜め池で貯めきれなかった水は従来の川に戻すような設計にした。魔力切れの体にはかなり厳しい作業だった。

 しかし、これをやらないと次に作物を育てたり、果樹を育てることができない。僕は小さな池を作って倒れ、大きな溜め池を作って倒れた。やがて回復し、へとへとになりながらなんとかアジトに戻った。

 クロードさんが僕を見つけ何か言おうとしたが、僕が手で制して言った。

 「水路に水を流します。騎士団で、この水路に水を流すのに手伝ってもらうようにお願いしてください」

 クロードさんは頷いて、騎士団長を探しに行き、一緒に戻って来た。

 「おい、少年、無理をしたな。仕事が早すぎる」

 「はい、頑張りました。水を流したいので、僕をあの川の傍まで連れてってください」

 騎士団長は僕を背負って、目的地まで行き僕を下ろした。僕は力を振り絞り、土魔法を使った。

 「アース」

 ”ズズズズっ”、

 川の土手に水の道ができ、アジトへ向かう水路と繋がった。川の水が流れ始め、快適に過ごせる環境が出来て来た。

 川の水はゆっくりとアジトの池を潤し、それから、下方の大きな溜め池も水で満たし始めた。新しい生活が始まった。

 良かった。

 その安堵の中で、意識を手放した。


 目が覚めると夕方だった。ベッドで寝ていた僕は、少しだけ、家の外に落ち着かない雰囲気を感じて、目覚めた。作った池に問題があったのかと慌てて、家の外に出ると、池には綺麗な水をたたえていた。ざわざわした雰囲気の中、周囲をきょろきょろ見回していると、僕を見つけたクロードさんが近寄って声をかけて来た。

 「アルス坊ちゃん、お目覚めですか?」

 「はい、ぐっすり眠ってすっかり良くなりました。しかし、クロードさん、何ですか?この状況は?」

 騎士団員が慌ただしく動き回っていた。

 「あー、もう大丈夫です。騎士団の人達が活躍しましたので、心配はいりません」

 「何があったのですか?」

 「どうも、ベルンハルトの村に向かう商隊が魔物に襲われたようです。それを発見したアルドさんとリオンさんが、騎士団員に助けを求め、魔物を追い払ったということでした。もうすぐ、戻って来るのではないでしょうか?」

 クロードさんは現在の状況だけ説明して、説教の後も僕が魔力切れで何回か倒れたことに関しては触れなかった。その代わり、新しいパンを持ってきた。

 「アルス坊ちゃま、これが、坊ちゃまのレシピで焼いたパンです。干しブドウから作った酵母でパン生地を一度発酵させ、焼いてみました。試しに食べましたが、生まれて初めてのパンで、かなり美味しかったです。

 手伝ったアルマさん、クロエさん、カミーラ王女まで美味しいと言ってお代わりしていたくらいです。こちらになりますが、出来はどうでしょうか?」

 見るとこんがりきつね色に焼けたパンが皿に盛られていた。

 僕はパンを手に取った。ふわふわだ。金子の記憶の中にあるパンが、この世界で再現されている。今まで、食べられていた固いパンではない。思わず、かぶりついた。

 「美味い」

 思わず、声が出た。柔らかくて、噛めば噛むほど、甘味が出てくる美味しいパンだった。

 「クロードさん、美味しいです。これが毎日食べられるかと思うと本当に嬉しい。ありがとうございます」

 僕は思わず、感謝の言葉を口にした。

 クロードさんもまんざらではないようだ。

 「アルス坊ちゃま、何かありましたら、また教えて下さい。頑張ります」

 「そうですか?では、遠慮なく言うと、ピザという物がありまして、今回の作ったパンと同じような生地を丸く平たく引き伸ばします。そこにチーズを振りかけ、お好みで食べやすい食材を乗せて焼くのです。こんがり焼くといっそう美味しくなります。今度、窯でこの食べ物に挑戦してみてください」

 「分かりました。明日にでもやってみますので、召し上がって、感想をお願いします」

 クロードさんはパン造りに目覚めてしまった。


 ゆったりとした気分で、パンを食べていると、アルドさんとリオンさんを先頭に、騎士団が慌ただしさを連れて来た。息を切らしたアルドさんが僕に声をかけた。

 「アルス様、お力をお貸しください。魔物は追い払ったのですが、戦っていた商人達がひどい怪我をしていました。治療をお願いします」

 遅れて騎士団が馬車を引いてきた。その中に怪我人がいると言う。僕が馬車の中に入ると、血まみれの人が二人いて、娘が一人すがるように泣いていた。一人の怪我人は重そうに息を吐き、服の裂け目から見える傷口は開いており、内臓も見えていた。もう一人は顔面を血が覆っていて、全体に血まみれだった。

 両方とも重症のように見えた。

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