第15話 転生者、盗賊団と戦う決意をする
村長がいなくなり、残された僕たちは盗賊の対策をどうするか?を話し始めた。
「やはり、村の木の柵が貧弱すぎます。盗賊は門から入りますけど、魔物や害獣は門から入るとは限りません。やはり、村の木の柵を強固なものにするか?よくある先端をとがらせた木を組み合わせて侵入を防いだり、遅らせたりする必要があると思います」
クロードさんが言う。
「それも大事だが、明日にも盗賊団は来るかもしれない。やはり、盗賊団に対する戦いが大事で、多分、馬に乗っている三人を無力化できれば、それ以外の盗賊は簡単に抑えることができるかもしれません。例えば、俺とリオンで二人と戦い、クロエとクロードさんで残り一人と戦い、残りの盗賊はアルマの魔法で脅して、戦意をくじくという作戦ではどうでしょう」
アルドさんが言う。クロードさんがアルドさんに言う。
「相手の技量が分からないのにいきなり戦うのは危険だ。やはり、一度会って、相手を確認してから戦うかどうか判断した方が良いと思う」
アルドさんがクロードさんに言う。
「いや、相手の技量が分からないということは、相手もこちらの技量を把握していないということです。だから先制攻撃が有利になります。それに、盗賊はこの村の変化の確認をしようと思っているので、そこに隙はあると思います」
アルドさんが答えると、クロードさんが返す。
「でも、いざ、戦闘になった時、能力の差が明らかになれば取り返しがつかない状況になるのが目に見えている。それは、危険な方法だ。やはり、ここは、相手の技量を探る必要がある」
と、アルドさんとクロードさんの意見が対立する。その中でクロエさんが言う。
「そんなの簡単じゃないか、お前たちが盗賊と会っている間に、私が隠れて弓で盗賊の首領を狙ったら終わりじゃないか?」
「クロエ、お前の弓が失敗したらどうするんだ?」
リオンさんが言うと、クロエさんが答える。
「失敗することはない、自信はある」
「お前の自信があったって、その首領が矢を避けたりしたら、失敗することもあるだろう。その時はどうするんだ。話し合いしている人たちは殺されてしまうぞ」
「その時は、逃げる」
「お前だけ逃げてどうするんだ。俺たちはいないんだぞ」
「それは困る」
「だろう、だから、そんなに簡単じゃないんだよ」
リオンさんにクロエさんが怒られる。皆がそのやり取りする二人を微笑ましく見つめ、言い争いになりそうな場の雰囲気が和んだ。僕が思いついたことを言う。
「そうですね、クロードさんの意見もアルドさんの意見ももっともだと思います。それで、僕はこういう方法を考えました。クロエさんにも活躍してもらう必要があります。いいですか?僕の方法は...」
僕たちは盗賊との話し合いをこの広場とすることにした。そして、この広場に約5m四方、深さ3m程度の四角い穴を掘ることにした。掘るのは勿論魔法である。まだ、土魔法は使ったことが無かったが、博士の言葉をここでも信じることにした。魔法はイメージだ。
大きくて深い立方体の穴を掘り、掘った土をその穴の横に盛り上げる。そのイメージを強く持ち、片膝をつき、片手を地面に当てて呪文を唱える。
「アース」
体の中からごっそりと何かが抜けて行く感覚があった。一瞬めまいに襲われ、急に気分が悪くなった。かなりの魔力を使ったようだ。以前あった魔力の低下による気分の悪さがある。思わず、尻もちをついた。
「坊ちゃん、大丈夫ですか?」
「うん、気分が悪い。少し、休ませて。クロードさん、悪いけど、穴の周りの土を収納の魔道具に皆で入れてもらえませんか」
「はい、それは良いのですが、坊ちゃん、体調は大丈夫ですか?」
「僕の事は気にしないで、少し休んでいれば治るから」
僕は答え、そのまま、地面に仰向けに転がる。青空が広がる。疲れた。眠たい。僕は軽く寝入った。
「坊ちゃん、坊ちゃん」
クロードさんから体を揺すられ僕は目覚めた。上体を起こすと、穴の周りの土は無くなっていた。
「すいません。寝てしまいました。でも、気分の悪さもなくなりました。体調も戻ったので、次の作業を行いましょう」
僕は立ち上がる。そして、クロードさんに収納の魔道具を持ってきてもらい、収納の魔道具から土を出して、盛り土にすると、試作した土の魔道具を地面に置き、売れずに僕が引き取ったゴブリンの魔石を中心核におく。すると、盛り土が木の柵を覆うように土の壁になった。それを繰り返して行き、村全体を土の壁で覆った。
「立派な土壁ができましたね。これだと外からも完全に見えませんね。でも、あの魔道具で維持できる日数はどの程度と考えられますか?」
僕はできた土壁の出来具合を確かめるために、自分の掌でたたく。パン、パンと乾いた音がする。その確認の後、クロードさんに言う。
「うん、実験で確かめましたが、一週間以上持つと思います。では、次の作業に移りましょう」
僕とクロードさんは広場に開いた大きな穴の前に立つ。
「かなり深い穴になりましたね。でも、まだ細工が足りません。最後の仕上げを行いましょう」
と、僕は土の魔道具を取り出した。そして、穴の前に置き、中心核に魔石を置いた。すると、魔道具から土が吐き出され、広がって行き、大きく開いた穴の上に土の蓋ができた。それを確認して、魔道具を拡張から維持モードに切り替える。
そして、穴を覆った土の上を僕は歩いてみる。特に問題はない。また、クロードさんにも歩いてもらう。うん、問題なさそうだ。暁の光のメンバーも歩いてもらう。これも問題ない。最後はクロードさんが馬車を引いてきた。これも普通に通行できる。
「よし、問題ない。準備はできました。作戦を実行します。クロエさんに重要な役割を担ってもらいます」
盗賊団を迎え撃つ準備ができた。いつ来ても良い状況が作れたのは安心材料かもしれない。作業に一区切りついたところで、ふと気づくと、僕等は昼ごはんを食べていない。穴の前で、異次元収納からテーブルを出し、火の魔道具で肉を焼き、パンにはさんで簡単な昼食とした。そして、村長の家に戻る。村長は作業を見ていたらしく、村全体を覆った土の壁をいたく褒めた。そして、僕の住処として、村の奥の空き家を指示された。住民として受け入れることに納得してくれたようだ。
指示された村の奥の空き家は荒れ果てており、戸は破れ、床は落ちていた。直ぐには住めそうもない。クロードさんも頭を抱え、僕も途方に暮れる。
クロードさんは、公爵家の名を出して、改善を要求しようと僕に訴えるが、僕はこの家を受け入れることにした。こんな家であれば、建て直した方が良いからである。
僕は家を立て直す宣言をして、アルドさん達に家を壊すことをお願いする。すると、クロエさんが、アルマさんにファイアボールを撃つように言い、アルマさんが呪文を唱え始めたので、僕は気づいてやめさせた。この村に盗賊以外の惨事をおこすところを未然に防いだことになる。
アルドさん、リオンさんがあばら家を壊し、壊したものを異次元収納に放り込んでもらった。それがあらかた片付くと、僕が土魔法で整地し、地面に聖の魔道具を置いて、魔石を乗せる。浄化の魔法が四方に広がる。それを確認して、本来は土魔法でレンガを作り、それで家を作りたいのだが、今は時間がない。
土魔法で三枚の壁を作り、残り一枚を入口側として半分の高さにし、上が開いた四角い仕切りができた。入口を買っておいた布で塞いで、雨が降らないことを祈って、今日はこの仮の住まいで休むとしよう。火の魔道具で夕食の煮炊きを行っても上に抜ける。寒さは野宿よりましだろうし、問題ないだろう。
アルドさんからは、彼らは外でも良いと申し出があったが、僕とクロードさんだけではがらんとした箱の中が殺風景になるので、中で休んでもらう事にした。まぁ、見張りが無い分、少しは楽だと感じてもらえればと思う。
中にテーブルを出し、塩と胡椒で味付けした肉を、火の魔道具で焼き、パンと果物の夕食とした。色々あったが、やっと辺境の村までたどり着いた。まだ、この先何が起こるか分からないが、夜の星空を見ていると眠気が襲ってきた。
どんな時でも明日はやってくる。




