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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第13話 転生者、辺境の村へ着く

 辺境の村ベルンハルトは百人に満たない住人が暮らす生きていくだけの村のように思えた。


 時は戻る。

 僕たち一行はゴブリン戦闘後の疲れで、歩き出すこともできず、野宿を決めた。

 アルドさん、リオンさんは野宿の場所を確保し、クロードさんは馬車を誘導し、アルマさんとクロエさんは火を熾すための枝と水を探しに行こうとしていた。これが、旅する時のいつものルーティンらしい。

 そこで、僕はアルマさんとクロエさんに、火と水の魔道具があることを告げる。

 「水の魔道具?王都で聞いたことがあるけど、やっぱり、お金持ちの公爵家は違うわ。でも、火の魔道具なんてあったかしら?」

 クロエさんが言う。アルマさんより彼女が少し年上らしい。僕は答える。

 「生活を便利にしようと、両方とも僕が作ったのです」

 「えっ?何て言ったの?聞き取れなかったわ」

 「水の魔道具も火の魔道具も僕が作りました。いや、正確には考案しました」

 「何、馬鹿なこと言っているのよ。あんたみたいな子供が作れる訳ないじゃない」

 クロエさんは信じようとしない。確かに、そう否定されると僕はそれを証明することができないのだ。僕が説明に困っていると、両方の魔道具を抱えて来たクロードさんに助けられる。クロードさんが話始める。

 「クロエさん、これが水の魔道具と火の魔道具ですが、両方とも坊ちゃんが作ったものです。坊ちゃんは魔法の天才ですが、商売の天才でもあります。本日は魔法でもその才を見せてくださいましたが、なんせ、七歳にして、ゴブリンロードを一人で倒すというのは、冒険者の中でも限られた者です。

 そして、王都で流行っているこの水の魔道具ですが、坊ちゃんが考え、さらに工房も作りました。私も父に言われ手伝ったことがありますが、坊ちゃんが考えた工房の機械を使えば、数時間の訓練で誰でも作ることができるようになります。現に、私も何日も夜通し働き、辛い思いをしました。さらに、坊ちゃんは継続的に使えるように、水属性の魔石だけでなく、どんな魔石で使えるようにし、また、魔法陣が消えても何度でもやり直す仕組みを考え...」

 クロードさんの説明は続いているのに、クロエさんには伝わったのだろうか?

 「ふーん、あんた、小さいのにやり過ぎだよ。そうか?だから、追い出されたのか?」

 と、言った。傍らにいたアルマさんが反応する。

 「クロエ姉さん、かわいそうに小さい子に言い過ぎよ。アルス様、気にすることはありませんよ、クロエ姉さんはいつも口が悪いの、許してあげてください。それでいつもアルド兄さんに怒られているの」

 その声で、クロードさんが気づいたように言う。

 「お昼も食べてなくて、お腹空きました。シチューも温めますが、坊ちゃん、お肉を焼きませんか?」

 「そうだね、野菜もあるし、一緒に焼いて食べよう。クロエさん、アルマさん、手伝ってもらえますか?」

 クロードさんの指示のもと、二人は動き出した。任せても問題ないと思ったのか、クロードさんが言う。

 「坊ちゃん、大きなテーブルを出して、皆さんと一緒に食べましょうか?」

 「そうだ、そうしよう」

 僕は異次元収納にある大きなテーブルをクロードさんと力を合わせて取り出し、夕食の食卓を用意する。

 小型の水の魔道具で僕はカップに水を用意していく。クロードさんが木の皿とフォークとスプーンを置いていく。クロエさん達を見ると、肉も野菜も火が通ったようだ。それを、クロードさんとクロエさんで分けてもらい、夕食の準備が完了する。アルマさんにアルドさんとリオンさんを呼んで来てもらった。


 「皆さん、ありがとうございます。生き延びたお祝いの食事にしては貧相ですが、量はありますので、いっぱい食べて下さい。では、頂きましょう」

 僕の掛け声で皆が食事を始める。主人が挨拶しないと食事は始まらないということをクロードさんに教えられ、僕が食事の挨拶をした。和やかな食事が始まる。

 食事の途中で、

 「お腹空きましたよね。お代わりもあるので、遠慮なく食べてください。と言っても、今朝の残りのシチューとパンと焼肉しかありませんが...」

 アルドさんが答える。

 「いや、坊ちゃん、申し訳ございません。助けられた俺たちが食事まで提供されるのは護衛として失格だとは思いますが、皆疲れておりますので、今回は甘えさせて頂きます」

 「いえ、本来は逃げても問題ない状況で勇敢にも戦って頂き、本当に感謝します。危険を顧みず、僕の護衛を全うしようというその姿に勇気をもらい、僕も諦めずに戦うことができました。ありがとうございました」

 僕は皆さんに頭を下げ、思っていることを素直に言う。

 「坊ちゃん、いや、アルス様、貴方は我々、暁の光の命の恩人です。リーダーの俺が言うのもなんですが、俺たちは冒険者パーティーとしてはまだ未熟者でした。これからの旅路に、同じような魔物が出ても、アルス様をお守りする自信がありません。やはり、不適格として我々の護衛をギルドで申し入れられた方が良いかもしれません」

 僕はアルドさんに向けて言う。

 「アルドさん、僕とクロードさんは貴方達に見捨てられたら誰も護衛してくれる者がいません。旅の最後までお付き合いいただけないでしょうか?お願いします」

 両手を膝の上に置き、アルドさんは俯いている。泣いているようだ。

 「あんた、それ以上、アルドを泣かせてどうするんだよ。おい、アルド、しっかりしろ、最後まで護衛をして欲しいと言っているんだから、”分かった”と言えばいいんだよ」

 クロエさんが会話に入り込む。そして、アルドさんが言う。

 「分かりました。アルス様、暁の光は辺境の村ベルンハルトまで護衛をさせてもらいます。よろしくお願いいたします」

 と、アルドさんも素直に答えてくれた。

 「よろしくお願いします」

 僕も答えて途切れた食事がまた始まった。


 食事が終わりかけた頃に、

 「おい、あんた?」

 クロエさんが僕に呼びかける。

 「僕ですか?」

 「私があんたって言うのは、あんたしかいないんだよ。いいかい」

 「あ、そうですか?なんでしょうか?」

 「あのさ、言いにくいんだけどさ、今日使った魔道具を護衛が終わった褒美にくれないか?何でも入るあの魔道具とか、火の魔道具とか、いくつでも作れる天才なんだろう。試作しているものでいいからさ、なぁ、いいだろう?」

 「はぁ、」

 「なんだ、やっぱり、ダメか?高いもんな」

 「いえ、試作品は安全確認できていないのであげられませんが、では、携帯型の水の魔道具は皆さんに一つずつ旅のお礼にプレゼントします。それで良いですか?」

 「良いのか?ホントに良いのか?」

 クロエさんの顔が綻びる。

 「おい、皆、喜べ。こいつが水の魔道具をくれるってさ。良かったな」

 「クロエ姉さん、貴族様に言葉遣いが乱暴すぎます。失礼しました、坊ちゃま。先ほど申しましたように、クロエ姉さんは言葉が悪いのですが、性格はいたって...」

 「いや、性格も悪いよ」

 あまりしゃべらなかったリオンさんが言う。

 「おい、リオン。何てこと言うんだ。私はお前には優しい姉さんだろうが」

 アルマさんが言うと、リオンさんが答える。

 「見張りの仮眠を殴って起こす女のどこに優しさがある?」

 「おいおい、アルス様の前だぞ。言い争いは止めろ。アルス様、数々の失礼、お許しください」

 「いえ、気にしていません。アルドさん、ところで、明日ですが、一旦、街にもどりませんか?ギルドで換金して、装備を新しくして出発しましょう。いかがですか?」

 「はい、私の方からもお願いしようと思っていたところです。そうしてもらうと助かります」

 「では、明日はそういうことで、本日の見張りをお願いしますが、ひとつ、お願いがあります。私が、今回試作した火の魔道具の耐久テストをしたいので、今日使った火の魔道具を灯り代わりに使って欲しいのです。何個かありますので、一つは真ん中に、その他の物を周りに並べておけば、明るさに魔物も寄ってこないかもしれません。いかがですか?」

 「それも助かります。火の管理が見張りの役目とは言え、戦闘の後の見張りがそれをしないで済むのは身体的にも楽になると思います」

 「良かった。では、それもお願いします」

 戦闘の後の夜は和やかに更けていった。


 それからの辺境の村への旅はいたって順調で、嘘のように何もなかった。そして、目的地である辺境の村に着いた。居住区は約50メートル四方を木の柵に囲まれ、その居住区の周りに、畑が広がっている。

 僕たち一行は木でつくられた村の門を越えて入った。出迎えはなく、歓迎されていないのが分かった。そして、村の広場にたどり着くと、広場の前に大きな家があり、その周りに小さなあばら屋が十数戸点在していた。何もない村の様子が目に入った。この村で何ができるのだろう。これからの不安しか感じられない旅の終着点だった。

 クロードが広場の正面にある大きな家の門を叩き、大声を上げた。

 「おーい、ブルームバーグ公爵家の三男アルス様の到着だ。誰かおらぬか?」

 反応がなく、それを繰り返す。何回目だろうか?内側から人の気配がして、やがて、扉が開き、白髪の背の曲がった老人が出てきた。そして、叫ぶ。

 「うるさいぞ、ここには何もない。帰ってくれ。あるのはこの老いぼれの命くらいだ」

 

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