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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第11話 転生者、魔物と遭遇する

 「いくらだと言われましても?」

クロードさんが困って答える。僕は助け舟を出す。

 「たくさんあるので、お金は要りません。一緒に食べてもらったらどうですか?何ならパンも食べてもらいますか?」

 と、僕は言って、クロードさんからアルドさんにシチューとパンを渡してもらうようにお願いした。

 「えっ、良いのかい?」

 アルドさんが答えると、僕は続ける。

 「えー、皆さんの分もあるので、一緒にこちらで食べませんか?これから長い旅になると思うので、少し、打ち解けても良いかもしれません」

 「本当は公私は分けて考えるのが、冒険者の規則なんだが、雇い主の坊ちゃんがそう言うのなら、言葉に甘えよう。皆に声かけてくる」

 アルドさんは一旦引き上げて、他のメンバーを連れて来た。


 「坊ちゃん、済まない。紹介していなかったな、俺が暁の光のリーダーのアルド、戦士だ。こっちから、同じ戦士のリオン、弓使いのクロエ、魔法士のアルマだ。俺とアルマは兄妹になる。顔は似てないが、荒い気性はよく似ているって言われる。あはは、おっ、また、余計なことを言ったって、妹に怒られてしまう。うん、じゃぁ、この辺に座って、お相伴に預かるぜ」

 と言って彼らは僕達の机を囲むように座った。クロードさんがすかさず、シチューの皿とパンとリンゴを配っていく。アルドさんは革の鎧に両刃の剣を帯びた風格のある男だった。リオンさんは同じく革の鎧に槍を持ち、アルマさんは黒いマントに魔導士の帽子をかぶっている。クロエさんは革の鎧に矢筒を背負っていた。皆、若く見える。そして、渡された食べ物を食べ始めると、リオンさんが誰に言うのでもなく呟く。

 「おー、こんな熱いシチューとパンとリンゴか、貴族様の旅は豪華だね。でも、食事が豪華な割に供が少ないのはどういう訳なのかなぁ」

 その言葉は皆が感じていたことだったのだろう。クロードさんが思わず、リオンさんを窘めるように顔を歪め、立ち上がろうとした時に、僕が言う。

 「公爵家から捨てられたのですよ。迎えに来るとはいわれていますが...」

 僕の言葉がその場をさらに緊張させる。その沈黙のなか、咀嚼音と木の皿のシチューに木のスプーンがあたる音が響く。その重苦しさを破ったのはアルドさんだった。

 「俺とアルマも親に捨てられた。でも、冒険者として楽しくやってる。親でも子供より自分が大事な無責任な者もいる。そう言った者は生まれも関係ない。得てして親になるべくしてなったわけではない者もいると言うが、子供は親を選べない。だから、親の力を借りず子供は早く独立するしかない。俺たちはそうした。良くあることだよ。気にすんな。

 おい、熱いシチューが冷めないうちにいただこう。坊ちゃん、ありがとうな」


 午後からの移動は何となく、集団として一体感が生まれた気がした。のんびりした道のりだったが、突然、緊迫した警告を先行していたリオンさんが発する。

 「あっ、先の森に魔物がいる」

 それを受けて、アルドが叫ぶ。

 「坊ちゃん達は馬車の中へ。おい、クロエ、声が聞こえる範囲にいろ。ゴブリンがいる。かなりの量だ。アルマ、魔法の準備だ。敵が出て来たら魔法を放て。森に撃ったらだめだぞ。森に火がつくと煙で魔物の姿が見えなくなる。ゆっくりだ、落ち着いていこう」

 

 僕とクロードさんは馬車に隠れている。クロードさんは剣を抱え、僕に危険が迫ればいつでも戦う構えだ。僕は馬車の隙間から状況を見ている。

 やがて、魔物が道に広がった。かなりの数だ。道の脇にもいるとしたら、二、三十以上いるかもしれない。

 「ファイア」

 と、呪文が聞こえた。その群れに向かって火の玉が飛んだ。ぎゃーっと魔物の中から叫び声が上がる。その声が合図になったかの様に魔物が突撃してくる。クロエさんの矢が複数飛び出し、魔物の足止めをし、そこに、もう一度、火の玉がさく裂する。

 ぎゃーっと再度大きな魔物の叫び声が上がると同時に、爆炎が起こり、煙が舞い上がる。その煙の中から数匹の魔物が飛び出してくる。

 ゴブリンだ。

 初めて見る本物の魔物。僕の日本人の知識よりグロテスクに見え、横に長くとがった耳とギョロリとした爬虫類の様な目、鷲鼻で、大きく開く口、栄養失調の子供のように痩せているのに腹だけが突き出ていて、ガニ股で近づいてくる。その様子を見ているだけで、体が震える。僕が子供の体だからなのか、戦うことを知らない日本人だからなのか?震えが止まらない。その様子を見て、クロードさんが言う。

 「アルス坊ちゃん、魔物を見るのは初めてですか?大丈夫です。暁の光のメンバーは若いのですが、魔物との戦い経験は豊富です。そして、彼らは生き延びてきました。それが、彼らの実力です。もし、ゴブリンがこの馬車に入ることがあれば、私がこの体を張って守りますので、心配しないでください」

 そのクロードさんの言葉で僕は少し落ち着く。


 リオンさんが槍で一匹を串刺しし、さらにその槍を避けた2匹のゴブリンをアルドさんが大きく左右に振った剣で撫で斬りする。向かっていたゴブリンがいなくなる。

 「アルド、何か大きいのがいる」

 クロエさんが叫びながら、矢を放つ。

 ”ウルワォー”

 と、煙の向こうの大きな影が吠えた。

 その声に消し飛ばされるように煙が晴れ、鎧と剣を持った大型のゴブリンが出現した。

 「まずい、ゴブリンロードだ」

 アルドさんが叫ぶ。

 「アルマ、ファイアボールは撃てるか?」

 「もう、一度だけ、頑張る」

 「そうか、じゃ、やってくれ。その後は俺たちがお前を守る。リオン、俺の近くまで下がれ。アルマの魔法が奴にあたった瞬間に飛び出し、お前と俺で左右に分かれて側面攻撃する。クロエ、弓で目を狙って、奴を攪乱しろ」

 クロエさんの弓から矢が放たれる。顔面を狙うが、ゴブリンロードは一瞬止まって、剣を持たない腕を盾にして矢を防いだ。その腕にクロエさんの矢が刺さる。痛みもないのか、ゴブリンロードは矢が刺さったまま前進する。そこに、アルマさんのファイアボールがさく裂する。

 ”どーん”

 と、激しい爆裂音が響き、火がほとばしった。しかし、ゴブリンロードは歩みを止めない。その時、左右に分かれていたリオンが槍を突いた。リオンさんの槍はゴブリンロードの右太ももに突き刺さり、血しぶきが上がる。ゴブリンロードが苦悶の表情となるが、雄たけびを上げ、刺さった槍をもつリオンさんを振り飛ばす。

 その間隙にアルドさんがゴブリンロードの左脛に剣を叩き込む。

 ”ごぎっ”

 と、ゴブリンロードの骨が折れる音がして、ゴブリンロードは膝をつき、

 ”ゴロウォルガォー”

 と、さらに大きな叫び声をあげた。

 そして、アルドさんの方を向いて大きな剣をふるう。その剣はアルドさんの右手を切り飛ばし、腕が剣ごと宙に舞った。その衝撃にアルドさんは転がり、さらに寝転がるアルドさんめがけてゴブリンロードは剣を大きく振り被り、振り落とす。剣は地面に深々と突き刺さり、

 ”ズズーン”

 と、地が割れるような音がして、馬が後ろ足で立ち上がり、馬車が揺れ、さらに横転する。僕は開いた馬車の扉から投げ出される。落下の衝撃が体を走った。その痛さにつぶっていた目を開けると、凶悪な牙をむくゴブリンロードが膝をついたまま僕の前に迫っていた。そして、僕めがけて大きな剣を振りかぶった。

 “ドラオォ”

 と、雄叫びが響く。その声に体が動かない。僕は死を覚悟した。

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