8 アフタスペース290 目的のためなら、クソボンボンになることもいとわないです。
偉い人たちを集めたよって話。
サイト40の無毒化の成功。その一報は即座に共有され、大ニュースとなった。それも僕にとってはかなりいい意味で
宇宙空間は広大で無限であるが、人工物である限り、人が生活できる場所というのは限られている。
人が居住可能なコロニーの建設や増設は、基本的に13あるコロニーにしか許されない特権だ。それだって好き勝手なことはできず。様々な制限がある。資源に限りがあるというのもあるが、地球の軌道上に無秩序に巨大な質量体を増産した場合、コロニー全体の機動に影響がある可能性があるからだ。コロニー間で定期的に行われる首脳会議で、他のコロニーから認可されて初めて建設が可能となる。
サイト40が致命的な事故を起こしながら、その管理が続けられていたのも、廃棄するコスト以上に、貴重な土地を削りたくないという思いがあるとかないとか。
そんな状況で手つかずのコロニー、それも債権者や前任者のほとんどが物理的に分解されたか、責任を取って更迭された場所となれば、そこに関わりたいと思う人達はいくらでもでてくるだろう。
僕だけが独占というわけにはいかない。
となれば、するべきことは1つ。会議と暗躍である。
「というわけで、今日は、みんなに集まってもらったわけだ。今日は仲良く儲ける方法を提案させてもらいたい。」
会議室に集められた役人や重役たち。ビックツリーの主だった人材を前に、おどけた態度をとる僕に彼らは苦笑いを浮かべていた。7歳の子供が会議を主導することに嘲りや不満をうまいこと隠しているが、居並ぶ顔には、隠しれない欲望があった。
「さて、事前に通達してある通り、サイト40のバイオハザードはすでに解決の目途がたち、最低でも一か月後には新たな土地としての運用が可能となりました。そして、そのきっかけを作った僕は、お爺様であり領主であるレイウッド・ビックツリー様から、再開発の方針を決める裁量権を頂戴しています。まったく、孫馬鹿だよねー。」
「ははは。」
「それはリンガット様の将来性を信じてのことだと思いますよ。」
ぶっちゃけた話に対する反応はほぼ高評価。ここ一か月の僕の実績とESPの覚醒という事実から僕を信用し、期待しているのが一割、坊ちゃんのおふざけに乗って金儲けを企むのが7割、この場で揚げ足をとってなんとか利権を掴みたいと思っている野心家が2割といったところだろうか。
ともあれ、このおじ様、おば様達を説得して仲間に引き入れないといけない。
「細かい挨拶とか社交辞令は抜きにして本題から話させてもらうけど、サイト40、ここの監理と運営について、基本的には従来通りの生産コロニーとして運用することを計画しているよ。」
言いながらモニターと各端末にコロニー開発のイメージ図を写す。
「基本的には農業を中心とした食糧生産。ただ万が一のときに独立して稼働できるように一部に開発系の研究施設も建設したいね。食肉系のプラントも作りたい。」
「これはこれは。」
「小型版、ビックツリーといったところですな。」
「でしょ、手広くやって仕事の幅を広げたいんだ。生産性を向上させつつ、幅広く雇用をしたいんだ。」
「なるほど、これなら参加できる人が多くなりそうです。」
コロニーの運営に関わっている人達だから、説明への理解は早い。そして、
「しかし、これでは維持コストの採算が取れますかな?」
「生産プラントに特化するか、研究に特化させた方が管理もしやすいと思われますが。」
「だよねー。」
ぶっちゃけると食料生産は頭打ちだ。コロニー内の食料自給率は150%を維持できて過剰生産であり、他のコロニーに輸出するにも需要が未知数で下手すると輸送コストで赤字である。
生鮮食品や木工系の工芸品は嗜好品であり、買い手が限られる。その限られた需要はすでに満杯なのだ。というのが現時点での話。
「生産する商品は現行品とは差別化を図り、中間層がちょっと贅沢したら手に入る程度のレベルのものをにチョイスしいくつもり。例えば、レモンやミカンなどの柑橘系かな。果物系の甘味は貴重品だし、それを専門的に取り扱うコロニーはほかにないでしょ?」
「なるほど、宇宙船乘り達の間では、地球時代のビタミン信仰がまだありますからなー。それに特化した商品ともなれば期待できるかもしれません。」
うん、これも原作の知識です。リンガットが倒され後、残されたビックツリーの人達が再興のために始めた商売が果物や野菜といったビタミンな食材の生産と販売だった。アニメのEDでは、見渡す限りのオレンジ畑があった。
なんやかんやボロボロになったコロニーが再興できるレベルの収益が見込めるなら、それを前借りしないわけがない。
「なるほど、リンガット様は歴史を学びつつ、新しい知見にも詳しいようだ。」
「果物、中間層を狙った商材の開発。これは新しい。」
「問題は保存と加工ですかな。既存の技術をある程度流用できるとはいえ、クオリティーとコストを考えると。」
「果樹に関しては、研究用の木々を増産させればいい。ぜひとも私にお任せください。」
「問題はどれだけ予算をとれるかですが。」
本業、現役の彼らにも充分な魅力的なものと思ってくれたらしい。そこでさらに。
「うーん、そこなんだけど、基本的なインフラ整備ぐらいしか予算は確保できてないんだ。」
「それは。」
「問題ですねー。」
「何より、僕には致命的に経験が足りていない。ここまで方針を立てたのはいいんだけど、運営がうまくいく自信が実際ないんだ。」
嘘である。原作に関わる知識と解析、ジルオールや数名を抱き込めばたぶん可能だと思う。だがそれをしたら、書類仕事と管理で何もできなくなる。
「なので、コロニーに関しては皆さんに分割してお任せしたい。」
「はっ。」
「それは。」
「それが出来そうな人をピックアップしたんだ。土地のサイズとしては新規事業を始めるのに足りるとおもうけど。」
言いながら、それぞれの端末に分割予定のエリアを表示する。このあたりの調整は苦労したけど、現時点で特別な役職を持たず、くすぶっている人達をピックアップし、裏取りをしている。一部には、原作でリンガットの影で私腹を肥やしていた悪徳な人もいる。
「まあ、ぶっちゃけると、土地は上げるから資金は出してくれない?あるいは融資って形で貸し出す感じで。」
「な、なんだってー。」
これは無茶ぶりであると同時に、彼からすると喉から手が出るほど、欲しい条件だ。コロニーという限られた中で、自分の土地を与える。しかも運用方法は任せるという言質付き。家を建てようが工場を作ろうが、畑として運用するかは彼らの自由だ。
鎌倉時代の封建制度に近いかもしれない。自由に使える土地を与え、収益の一部を税や礼金としてもらう。そこでどんな商売をするかはあえて触れない。いやあれは土地の守護を任せるんだっけ?
「す、少しだけ時間をください。」
「うんうん、持ち帰ってよーく検討して、ただここに居る人達が協力してくれると僕はうれしい。」
投げ込んだ石が呼んだ波紋は大きく。会議は一旦、お開きとなり、多くの人々は慌ただしくその場を去っていた。
手ごたえはあったかな?
「で、どんな感じ?」
プレゼンが終わり、会議室でお茶を飲んで一息つきながら僕は、裏で動いてたジルオールに成果を訪ねた。
「そうですねー、大半が良好な反応でしたよ。リスクとコストに足踏みをしている人もいるようでしたけど、やっぱり自分たちの土地が手に入るというのは魅力がありますからねー。」
「なるほどー。そうなると今後は土地に代わる何かを用意しないといけないかな。」
「そうですねー。サイド40の土地を気前よく渡す約束しちゃってますし。」
彼のESPは「感情論破」。観察した相手の感情が色でわかるらしい。お爺様の真贋判定ほどじゃないけど、こちらのプレゼンに対する相手がたの反応が分かるので、プレゼンや交渉においてこれほど有効な能力もないだろう。今回のプレゼン中も相手が不信感を抱いて入ればジルオールから合図があり、方針を変えるつもりだったし、要注意人物は記録しておいてもらっている。
理想主義なボンボンを演じていたのも、そう言った反応を引き出すためのブラフだ。このまま僕を舐めてかかってくれればいい。そこそこの利益で満足する小悪党ぐらいなら放置だし、取って代わろうと思うやつは早めに排除してもらう予定だ。
「ジルオールもいる?」
「いずれは。でも今はいいですかねー。リンガット様のわがままに付き合う方が稼げそうですし。」
「ははは、それはきっと大丈夫だよ。」
彼が僕を信用しているのも、僕がジルオールを信用していることが見えるからだとか。まあ、そういうふわっとしものじゃなく、契約と利益で関係は築いていきたい。たくさんこき使って、たくさん設けてもらおう。
「スーザンはどう?畑は無理だけど一戸建てぐらいなら用意してあげれるよ。」
「今でも充分恵まれています。私としては今後もリンガット様にお使いできれば満足です。」
スーザンはスーザンで、なんか武士みたいな思考になっている。期待を裏切って、裏切られないように今後もがんばろう。
ともあれ不安要素はあれど、サイト40を手に入れた僕の計画は、いよいよ動き出そうとしている。
使い道のなかった廃棄コロニーを再生した時点でかなりファンタジーですが、人材の選定や計画など、7歳と思えない思考と行動力もESPのおかげで済んでしまうのがこの世界。




