7 アフタースペース290 宇宙でキノコは危険らしい。
金策パートです。
ハーモーニーサウンドにおいて、コロニー「ビックツリー」は色々と裏設定が存在する。
例えば、ダメダデイことベルベットとそのシンパたちが気づけあげた犯罪者のコネクション。物語の黒幕と何らかの形でつながっている輩が多く、あとから黒幕でしたみたいな勢力がポンポンでてくる。そして、それらが画策している秘密研究所はびっくり箱かよというぐらい試作機や実験機が出てくる。
コロニー間の緊張が増す中、中立と自然主義を意思表示していたビックリーは、その立場を隠れ蓑してして、その裏では、廃棄されたコロニーで新兵器の開発を行っていたのだ。
それこそ番外編やら劇場版やらでポコポコ秘密の設備や組織が出てきて、どんだけ治安が悪いんだよって当時は思ったものだが、そんな知識をもとに、コロニーの土地利用について資料を漁ってみれば、その背景と舞台となりそうな廃棄コロニーはすぐに見つかった。
「ここが、サイト40?」
「はい、記録では20年前の事故で閉鎖されて以来放置されているそうです。」
思い立ったが吉日。スーザンとジルオールを伴って訪れたはのはいくつかあるサブコロニーの一つサイト40だ。
ビックツリーを含めてコロニーの多くは、メインとなる巨大な居住コロニーのほか、いくつものサブプラントがドッキングすることで構成されている。
メインとなるビックツリーは直径7キロ、全長70キロメートルという巨大なシリンダー型コロニーで、1億人の住人の大半がここで生活している。行政区画の他、農業や林業も行われ全体に牧歌的な光景は、他のコロニーには見えないもので、風光明媚と言えば風光明媚だが、一部の先進的なコロニーからは田舎とけなされることもあるらしい。
そんなメインコロニーを中心に、水資源の確保とリサイクルを行う精製コロニーや、工業製品を作る生産コロニー、宇宙船の造船や出入りをするヤードコロニーなど様々な機能に特化したサブコロニーがあるが、一番多いのは、林業や農業をしている農業コロニーだったりする。
サイト40は、そんな数ある産業コロニーだったのだが、事故によるバイオハザードで長らく閉鎖されている廃棄コロニー、ということになっているコロニーだ。直系3キロ、全長7キロメートル程度の小型コロニーであるが、こんなものが手つかずで残っているあたり、ご都合主義というか、世界の闇を感じてしまう。
「もったいないよねー。」
「まあ、コロニーを維持するだけでも莫大な資金とリソースがかかりますからねー。」
廃棄するにしてもその質量を解体するコストの方が重く、菌の活動が収まるまで数十年後は放置される予定らしいが、5年後には秘密の研究所が建てられる。ということを僕は知っている。
なんなら、既に誰かが密かに利用している可能性だってあるが、移動用の通路から見る限りコロニー内には、スライムのような何かがみっちりとつまり、うごめいているだけで人が住めるような環境とは思えない。まるで生き物の体内、コロニーの強度を考えれば大丈夫と分かっていても、その何かが今にも飛び出してくるんじゃないかという不安を感じる光景だ。
これは、数ある研究の失敗の一つだ。宇宙という危険で閉鎖的な空間において、効率的に育つ有機物の開発は必須科目。藻やオキアミといった微生物の開発に、水耕栽培による野菜の確保、合成肉なんてものがあるが、その一つとして菌類の研究もあった。閉鎖空間ないでも育ちやすく栄養も豊富、おまけに美味しいともなればキノコの栽培と研究が行われるも自然な流れということだろうか。
「たしか、真空状態でも育つキノコだっけ?」
「はい、結果として嫌気系のやばいのが、コロニーを埋め尽くしてしまったようですね。」
「科学の暴走、やばいなー。」
このコロニーにキノコは嫌気と言って空気を嫌うタイプの菌をもとに創られたものであり、密閉状態だとわずかな栄養でも肥大化する性質があるらしい。なんだそのファンタジーとも思うが、その繁殖力でコロニーないの有機物を食いつくし、不用意に吸い込めば人間すら苗床になってしまうらしい。
つまり、目の前のうごめく何かは、多くの犠牲者やコロニー内の有機物のなれの果てというわけだ。
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
その光景を目にしてから、がっちりと僕の肩をつかみ、何かあればすぐに逃げれるように身構えるスーザンは不安そうに視線をさ迷わせている。怯えるのは無理はない。特殊合金の壁を隔てた向こうは真空の宇宙という閉鎖空間において、大気汚染は致命的な災害だ。厳重に封印し、定期的に安全確認をしつつ、沈静化するまで待つしかない。
ただ、それは、報告書にある通りの危険なものだったらの話だ。
この菌の無毒化の方法はすでに確立している。一定のアルゴリズムをプログラムされたナノマシーンを散布すれば、数日と経たずに菌は駆逐され、手つかずの生産コロニーを手に入れることができる。
はず。
「準備は。」
「ご指示の通りに、お館様のお墨付きもあったので、みなさん協力的でしたよー。」
「じゃあ、早速お願い。」
僕の指示で、ジルオールが端末を操作すると、一隻の宇宙船がコロニーへと近づいていく。コロニーの安全を確認するためのドローン船であり、中には僕がプログラミングしたナノマシーンが搭載されている。各種資料と記録と読み漁った僕は、お爺様に提案して、サイト40の定期点検にこのテストをねじこんだのだ。
点検は定期的に行われるし、ナノマシーンそのものは高いモノではない。問題はプログラムであるが、そこは、原作の知識と解析による分析でいい感じのものができた。
ほんと解析さまさまである。思考や情報を簡略化、視覚化するだけのESPと見せかけて、必要な情報と解答が分かった状態なら、その身筋が直感的にわかってしまう。このSF世界の進んだインタフェイスとプログラム言語と組み合わせると、様々なプログラムが組めるだけでなく、バグの発見などもサクサクでできてしまった。おかげで、いろんな部署のシステムの効率化と、プログラムの修正の提案がたくさんできた。
7歳ながら、今回の計画にゴーサインをもらえたのも、解析を生かした、プログラムの開発と修正による実績によるところが大きい。もっているだけはエリート、ESPとはそういうものだ。
「便利な能力ですよねー。ナノマシーンの担当官が複雑すぎて再現しかできなかったと言ってましたよ。」
「さすがはリンガット様です。」
それでも信用して立ち会ってくれたのはスーザンとジルオールの2人だけだ。お爺様やほかの職員たちは、おぼっちゃまの無茶な提案と甘くみており、失敗前提の社会勉強のつもりらしい。
「では、ナノマシーンを投入します。」
「そうだねー。」
宇宙船から伸びたパイプがコロニードッキングされ、そこから青く着色されたナノマシーンが投入される。万が一にも菌が漏れないように何重にも設置された扉が一つ一つ開き、やがてコロニー内の菌と接触する。
「おお、すげえー。」
そんな様子が解析さんの力で表示される。イメージは水にたらした絵の具だろうか。茶色に染まった菌の塊がナノマシーンの力で徐々に青く染まっていく。量そのものは少ないので実際はすぐに茶色に薄まってしまったのだが、各種センサーの情報を視覚化することで、どんどん菌が弱まっていくのが分かる。
「すごいですねー、コロニー内の内圧がどんどん下がっています。菌そのものが駆逐されてます。」
「すばらしい。これならばすぐにでもコロニーを再開できそうです。」
端末に表示された情報と目の前で目に見えて変わっていくサイト40の様子を見ながら僕たちは歓声をあげる。
うまくいくことはわかっていたけど、実際に目にするとこの爽快感は癖になりそうだ。
「数日、かかっても二週間ぐらいでコロニー内を歩けるようになるかな?」
「そうですね、追って空調などの設備の点検を手配しておきます。」
「そんな急がなくていいからねー。目の下、スゴイくまだよ。」
けたたましく端末を操作しながら、次のスケジュールを組んでいくジルオールをねぎらいつつ、僕は今回の成果をお爺様にどう報告する思案した。
そして、
「スーザン、どんな感じ?」
「はい、数名、こちらをうかがっているようでしたが、実験の結果を見てどこかに連絡をしているようです。」
「そっか、じゃあ招待状を送っておいてね。」
次の計画を立てるための情報収集も怠らない。まあ、スーザン任せで誰が見ているかなんて全然把握できてないんだけどね。
「さあ、これからもっといそがしくなるぞー。」
場所の確保ができたなら、次は資金と人材の確保だ。
リンガット「スキルと知識によるチート、今後の影響は知りません。」
ジルオール「めっちゃ忙しい・・・。」
スーザン 「リンガット様、すごい。」
なんだかんだトリオでの活動がしばし続きます。




