9 アフタスペース290 どうやら僕に才能はないらしい。
ボンボンらしく贅沢をする話。
サイド40の再開発計画が本格的に始まって半年、進捗は順調そのものだった。
菌類の残骸は肥沃な肥料となり、既存の技術と併用することで果樹はすぐに根付き、3か月ほどで安定した生産が可能となり、新商品として売り出された。
果物やその加工品は宇宙船乘りを中心に大ヒットし、そこから発生した顧客増加に伴う船舶増加によって、既存の商売の顧客も増えてコロニー全体の収益も増す試算だ。
同時にアクセク作っていた、各種プログラムも好評で、最近は船舶の管理システムや流通システムなどが大好評で他のコロニーからオーダーを受けることもあり、パテント料でそこそこの資金も獲得できた。
僕はまだ7歳の子供でありその大半はお爺様の監督のもと、コロニーの予備資金として貯金されているが、多少のわがままが通じるのお小遣いがもらえるようになった。
「まさかほんとに雇われるとは。」
「そりゃねー、専属にしないと手が回らないじゃん。」
「光栄ですわ。」
そのお小遣いで真っ先にしたことは、スーザンとジルオールは専属で雇うこと。スーザンは侍女兼ボディーガードとして、ジルオールは、秘書としてバリバリ働いてもらっている。
気づけばもうすぐ8歳。着実に資金と人材は集まりつつある。
そんな日々忙しなく働く僕だけど、目的を忘れたわけではない。ためにためたお小遣いでついに、あるものを購入した。
「ふふふ、これが、ワーカーか。」
「そうですねー、ギャラクシーで生産された最新モデルです。カスタム次第で宇宙、コロニー問わず活動できる作業用のロボットです。ご要望通り、作業用のマニピュレーターは最高レベルのものを発注しました。」
目の前にあるのは1人乗り作業ロボだ。見た目は大型トラックのような重機に、大きな腕をつけただけのシンプルかつ非効率なものだが、これが原作で登場する人型機動兵器のきっかけとなるものだ。
「すごいねー。」
「す、すごいですねー。」
「リンガット様、いい趣味していますねー。」
目の前にロボに目をキラキラさせる僕に対して、2人の目はどこかうろんげだ。それもそのはず。宇宙空間では、オールラウンダータイプよりも専門の動作に特化した機械の方が効率が良く、このタイプのロボは、実用的なものではなく、船乗りや金持ちが趣味で持っていることが多い。
まあ、これも趣味丸出しな、フルオプションのカスタム機なんだけどね。これを買うぐらいなら移動ユニットやドローンを数台購入したほうがはるかにコスパがいいだろう。
しかも専用の訓練所(だった広い平坦な土地)を用意する徹底ぶりだ。我ながらクソボンボンムーブだと思うが、これがしたくて頑張っているので大目に見てほしい
「まあ、乘ってみるか。」
7歳の僕向けにカスタムされた専用のシートに乗り込み、起動キーをさす。前世(?)の記憶では、車の免許はもっていたし、ゲームセンターではロボのコクピットに乗り込むタイプのゲームをよく遊んでいた。
「なるほど、基本操作は車のそれ、アシスト機能も充実している。マニュピュレータは別系統、ほかにも制御装置が・・・。」
マニュアルは読んだし、解析さんのおかげでいい感じに理解できた。だから最初はうまくいった、訓練所を走り回り、なんとなしにポージングをとり・・・
「うげ、思った以上に揺れる。」
サイズが大きいと上下の揺れが大きくなる。無重力な宇宙空間ならともかく、疑似重力があるコロニーないでは当然のように三半規管へのダメージがえげつない。あとマニュピュレータと車の動きのバランスが悪いから、結構傾く。
結論、速攻で酔いました。
「・・・気持ち悪い」
「うーん、慣れないと酔いますからねーこの手のは。」
そういえば、リンガットも宇宙空間でした乗ってなかったな。気持ちが先行しすぎて乗り物酔いは想定しなかったよ・・・。
もしかして、彼が秘密裏に研究施設を作ってロボの開発を初めたのも、この状況を改善するためだったりするのかもしれない。うん、こればかりは原作リンガットと同意見だ。このままじゃ、原作のような高機動な動きは愚か、まともに乘れない。
「うげーー。」
「リンガット様、お気を確かに。」
顔を青くして蹲った僕は、そのままスーザンによって引っ張り出され、床にしゃがみこんだ。ああ、地面がゆれないって素晴らしいなー。
「うーん、一応サブシートで他の者が操縦できるようにしてありますから使えなくはないですけど、コロニーの維持は従来のロボの方が効率がよさそうですね。」
ジルオールの評価が辛辣すぎる。言いながらサブシートに腰かけてさらっと動かしていた。悔しいが、彼の操作の方が僕の何倍も滑らかだ。
その後、スーザンにも試してもらったけど、彼女の操作はまるで生き物のようだった。さすがは原作での頼れる姉貴だ。僕が苦労したバランス制御をマニュアル操作で行い、マニュピュレータでバランスを取りながらドリフト走行のようなことまでやっていたよ。
「これは、やっぱりあれだなー。」
僕には才能がないらしい。まだ7歳ですからと2人は励ましてくれたけど、このままではまともに乘ることはできないだろう。
となると予定通り、ロボの開発のための人材を集めないとならないな。
ロボの開発者に、パイロット候補生、エンジンニアに技術師、必要な人材は様々だろう。
まあ、当てはあるんだけどね。
序章はここで一区切り。
リンガット君の挑戦はここからさらに加速します。




