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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース297 リンガット14歳

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74 アフタースペース297 そんなことよりも大事なことがありました。

 事の顛末の話とはならない。

 お爺様が領主邸に居合わせたことは、予想外ではあったが想定はしていた。

 お爺様のESPは嘘を見抜く。なので、見られていないと確信を持てないときは、迂闊なことを言わないように、いつだって警戒をしている。面従腹背とまではいわないが、祖父思いの賢い孫として振る舞う。そういう習慣がついているのだ。


「リンガット、正直に答えなさい。お前はアレの動きをどこまで把握していた?」

「ギャラクシーでの潜伏先。イムール憲兵長をはじめとした彼と内通していた愚か者ぐらいですよ。」

「・・・ほぼすべてじゃないか。」


 胡乱気な瞳でそう問われたので正直に答えた。

 お爺様の私室にて、二人っきりでソファーで向かい合う俺とお爺様の空気はそれでも和やかなもの。お爺様とこうして話すのも慣れたものだ。別に悪いことはしていないので誤魔化しや嘘をつかなければいいし、後ろ暗い事は言いたくないと言えばいい。変に取り繕うことをしなければお爺様との会話は気楽なものだ。


「会いたいとは思わなかったのか?」

「イヤー正直、顔もろくに覚えてないので。」

「そうか、そうだよなー。わしもアイツは、もういない者として考えていた。」


 隠すまでもない本音を語ると、お爺様は右手で目元を覆って天を仰いだ。そこにある感情は想像するしかない。前世の記憶から家族は大事という一般的な感覚はあるが、リンガットや俺にとって家族と呼べるのはお爺様だけだ。なので、アレに対してはお爺様やコロニーを裏切った愚か者程度にしか思っていなかった。

 イムール達の暗躍を見逃し、排除しようとしなかったのは、下手な断罪をし破滅フラグが立つのを避けるためというのが大きいが、お爺様の息子への複雑な感情を汲んでいたにすぎない。

 あっそうそう。アレとイムール達はお爺様の命令で領主邸の地下に監禁されている。彼らの処遇に関しては現領主であるお爺様が責任をもって執り行うと宣言し、ハーメルさん以下、お爺様直属の部下たちが嬉々として彼らを運びだしていった。これを機会にクソダディーに関わっていた人間は摘発するらしい。

 それらを見届けてからお爺様は俺を私室へと招いた。これから忙しくなるからその前に話をとのことだったが、それはアレを思った感傷的な話というわけではなかった。


「あれの本質は傲慢だ。あれにあるのは、身の丈の合わない野望と自信だけ。実力も意志も他人のもので自我がない。それでも勤勉ではあった。」

「はあ。」

「若者の集団のリーダーならばそれでもよかった。だが、為政者となるなら己の限界を知り、身の丈にあった振る舞いも覚えるべきだ。」

「ですね。」


 お爺様の言いたいことは良く分からない。

 ただ何となく、お前は、ああなるなよと言いたいのは分かった。 


「今回の1件もそうだ。おとなしくギャラクシーに引きこもって腐っていくだけだったはずのアレを唆し、誘導した者がいる。」

「そうなんですか?」


 疑問に顔をしかめてみせたが、正直興味はない。アレの行動は確かに不自然で、あれを利用していた黒幕として、爽やかなマッチョの姿がチラチラしている気がするが、それこそ今更だ。


「アレに自分で決めて行動するという意志はない。隙あらば楽な方へと流れる。そう言う輩はどこにでもいる、今後も忘れないことだ。」

「はあ。」

「そうか、はああ。」


 そこまで言って俺の反応がイマイチな事に、お爺様はちらりと視線を向けてから長い、ながーーーい、ため息をついた。


「はあ。まあいい、今後の話だ。まず、アレの処理はワシに任せろ。」

「はい。」


 まあ、当然だろう。実権のほとんどを委譲されてはいるがビックツリーの領主はお爺様だ。お爺様が何かすると決めたなら、立場的にも心情的にも、それに従うのが俺の立場だ。

 お爺様としては、自分や息子の不始末を孫に押し付けたくないという気持ちなんだろう。俺としては余計な仕事が増えないのならば大歓迎だ。お爺様が面倒ごとを引き受けてくれるなら、空いた時間を趣味に向けられる。

 

「お前には引き続き、次期領主としての役割を任せたい。」

「もちろん。」

「と思っていたのだが、状況が変わった。」


 いや、そうもいかないらしい。思えば、お爺様がなぜこんなにも早く戻られたのかも聞いていなかった。アレの話はついでだったのだろう。


「リンガット。領主経営はしばらくワシに任せてもらう。その上で、お前には「アビス」へ行ってもらいたい。」

「「アビス」ですか?」

「ああ、先方から熱烈なラブコールがあった。」


 なぜ?

 最初に浮かんだのはそんな疑問だった。


 コロニー「アビス」は13あるコロニーの中でもとりわけ先進的で異質な場所だ。このコロニーの建造目的は、ハイパーレーン外、外宇宙への人類の進出だ。旧時代から続いている火星や木星といった太陽圏での人類の生存圏の確保と更なる旅路を切り開くために研究と探索を行っている。

 原作で主人公たちがこのコロニーを訪れることはない。代わりに外宇宙調査用ミキサーという特殊な二足歩行ロボットが敵として現れた。長時間の航行と過酷な環境に耐えるための重装甲で積載能力も高い機体はなかなかの強敵だった。戦争の最中、悲しいすれ違いから主人公たちと敵対することになったアビスの兵隊の一部との壮絶な戦いの末に、引き分け気味に主人公たちが勝利した場面は、原作でも屈指の名場面だった。


「人の生活を豊かさにするために造られたロボットを兵器として使うなんて。」


 と、テティスが嘆いていたっけ。終盤間際で、今更だったが戦争の悲惨さを描いたエピソードだった。

 今世でもサンブラーやミキサーの技術は流出しており、同じようなものが開発されている可能性もある。あとは・・・。


「アビスについてもちゃんと勉強しているようだな。」

「あっはい、すみません。なぜアビスなのかを考えていました。」


 原作の思い出に浸りそうになったところでお爺様に声を掛けられて意識を引き上げる。いけないいけない、趣味に偏り過ぎた。


「実はな、先日の訪問中。先方から直接私に依頼があった。」

「・・・またですか。」

「人の上に立つなら、こういうことはよくあるんだ。もっともビックオーシャンのような事態にはならないと確信はあるから安心しろ。」

「そうですか。」


 領主同士のつながりというのは、俺にはない特殊なネットワークだ。引退間際になってフットワークが軽くなったお爺様が各地を訪問しているのは、俺へ引き継ぐための根回しであると同時に、そのネットワークをより強固なものとしている。おかげで意図しないタイミングで面白い事が起こる。


「確信ですか?」

「ああ、確信している。先方に悪意や作為はない。単純な取引としてお前の知識を求めている。」

「そうですか。」


 確信ということは、爺様のESPで判定済みということなんだろう。先方の要求は妥当な物で、そこに嘘はなかったと。いや、問題は先方の依頼なんだろうけど。


「「ラウンド」という新型のエンジンについて開発協力。」

「いきます。」

 

 その言葉を聞いたときには、反射的に答えて俺は立ち上がっていた。こんなのもう行くしかないじゃないか。


「ああ、お前ならそう答えると思っていた。」

「一週間後にはアーテムが戻ってくる予定ですので、スケジュールの調整を済ませておきます。」

「お、おい。」


 お爺様が引き留めるように声をあげたが、止まれない。申し訳ないけど、お互い時間が惜しい。


「待ちなさい。詳しい話をちゃんと聞きなさい。ああ、もう、あとで資料を送っておくが。」

「確認次第、すぐに破棄します。」


 元気よく返事をして、私室をでる。

 クソダディー?お爺様との団らん?申し訳ないけど、「アビス」の新型エンジンで「ラウンド」と聞いてしまった以上、これ以上に優先すべきことはない。いや、もはや一分一秒が惜しい。


 ゼーレーに横やりを入れられる前に、アレを手に入れないといけない。


「ついに、ついに、完成するぞ。」


 なぜなら、そのエンジンこそが原作で、リンガットの愛機となるディープベースを真の意味で完成させるために必要な最後のピースなのだから。


リンガット「おじいさま、致命的に言葉が足りてないです。」

 さらっと流されるクソダディーと新たな冒険への期待値。


前回のクソダディーに対する皆さんの感想が的を得すぎて嬉しいかぎりです。

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