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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース297 リンガット14歳

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64 アフタースペース297 会議の空気は読むものではなく、作るもの。

 新章開始 色々と物騒になっていきます。

 俺ことリンガット・ビックツリーは、コロニービックツリーの次期領主。14歳にし実質的な支配者である。次期という前置きがついているのはまだ若いからだ。

 とはいえ、独裁政権とかクソボンボンとかな言葉とは縁遠い。各所の人事や決算の最終判断や承認に、利害関係の調整、他のコロニーとの外交などやることが多すぎて遊んでいる暇などない。AIやそういうのが好きな人間に丸投げして好き勝手に振る舞うということもできなくはないが、そんなことをすれば破滅フラグが乱立する。となれば自分で働くしかないし、色々と気を使うことが多いので悩みは尽きない。


「今期の予算と大まかな計画については事前に配布した資料通りです。最終確認をお願いします。」

『はい。』


 そんな領主の仕事でもっとも面倒なのが関係者を集めた会議だ。議会制とか合議制というものはこの世界にはない。会議や話し合いというものはあるが、メンバーは選挙で選ばれた議員のような人間はおらず、企業や組織などの有力者。コネなのか実力なのかは別として、全員が全員、各所に影響力を持っている点では共通している。そんな連中の話し合いという名の口争をコントロールして無難に終わらせなければならない。


「皆さんの献身のおかげで昨年度の収益もかなり増えた。その分、各所の予算は増加させてもらった。あと、今年は新しいサブコロニー建設の認可もおりたから、一層頑張って欲しい。」

『おお!』


 今日はその中でも、もっとも面倒な年間予算を決める会議だ。

 会議といってもオンライン。資料の内容については事前に根回し済みで儀礼的なものだ。だというのに新年度に行われるこの会議では、毎年何かしら面倒が起こる。

 それはこの会議が注目されているからだ。予算に関わる部署の代表を集めただけなのだが、内容が内容なだけに参加人数は100人を超え、傍聴している人も多い。新しく就任にした人が挨拶をしたり、目玉の企画を発表したりと、ちょっとしたスタンドプレイをするのに、これ以上の舞台はない。なんなら、まだ若いトップを試そうとアドリブをぶっこんでくるやつもいる。

 

『恐れながら、お尋ねしたいことがあります。』


 ほらきた。

 一通りの挨拶と予算の話が済んだタイミングで1人の役人が声をあげ、その顔が画面に拡大される。ずいぶんと広いおでこに深いしわを刻んだ生真面目、いや不機嫌そうなおじさんだった。オールバックでまとめた茶色の髪と、俺を睨みつける視線には隠す気もない敵意が感じられた。


「イムール憲兵長。発言を許可します。」


 憲兵。旧時代では軍隊内部の取り締まりを行う役職だがこの世界では政治や軍などの垣根を超えてお役所仕事の風紀を取り締まる役職だ。イムールはそこのトップ。つまり法的な制裁を置こうなう実行部隊のトップである。彼らは権力ではなく、法とルールに従って動く組織であり、俺やほかの役人が不正をしないか見張る立場でもある。そんな職務の性質上、リンガットの手腕は嫌悪感を持っていても不思議ではない。


『では、お尋ねします。ここ数年、ロボット産業に対する出資が増えているようですが、それはなぜですか?』

「そこに大きなリターンが見込めるからです。それは数字として結果がでています。」


 イームルの質問は過去に何度となくされてきたことなので、俺はノータイムで答えた。

 林業や農業を主体としていたビックツリーで二足歩行ロボットの開発と生産を行うことに抵抗を覚える人間は少なくない。そういった相手には収益の一部を結果として見せて黙らせる。これもパターンだ。


「各地の作業機械をサンブラーやミキサーに置き換えることによる生産性の向上。他コロニーへのロボットの販売及び、OSのライセンス料。それと最近では運用研修のための人材の派遣業務もあります。これだけでも収益は倍近く増えています。確実な収益が見込める事業だと僕は思ってますけど?」

『しかし、ビックツリーは本来。』

「本業である林業や農業に影響のない範囲での出資です。土地や鉱物資源などのリソースは余剰分を利用しているので、そちらの生産性は落ちていないはずですが?」


 想定される質問に先回りして答える。正直、イムールのような指摘をしてくる人間は少なくない。対応も慣れたものだ。


「コロニービックツリーは、その名の通り、林業を主体とするコロニーです。その前提を変える気は今後もありません。ロボット産業やその他の開発は生産性の向上を目的を前提とした副次的なものでしかありません。」


 はっきりそう宣言すると、ほかの参加者たちから拍手が上がった。なんだかんだ、うちのコロニー人間は木や自然を愛し、自分たちの役割に誇りを持っている。それを大事にしていると言えばこんな反応にもなるだろう。


「予算が増えていると感じているのは、総予算が増えているからです。それとも旧時代のような手作業に戻せと?」

『そ、そういうことが言いたいのではありません。』


 ダメ押しとばかりに、極端な例をだして質問をし返す。これでイムールの言い分は難癖のようなもの聞こえるだろう。実際、難癖に近い。

 俺だって、生まれ育ったビックツリーの環境が好きだ。前世の感覚もあるので日本の里山を思わせる光景は好きだし、牧歌的な雰囲気に安心感を覚える。ギャラクシーや宇宙船での生活を体験したあとは一層、その気持ちが強くなっている。

 また、そんな思いとは別にビックツリーの根幹は林業と自然への愛着にあることも理解しているつもりだ。いかにロボット産業のポテンシャルが高くとも、それを蔑ろにした場合の末路は原作リンガットである。だからこそ、役人や領民が納得する形で儲けつつ、儲けの一部でつつましくロボット開発に出資しているのだ。

 今までの相手はここで口を噤んできた。しかし、イムールは怯むどころかわずかに口角を上げて更なる指摘をしてきた。


『ですが、リンガット様。サンブラーやミキサーをはじめとするロボットの兵器転用の可能性についてはどうお考えですか?』

「ありえますね。実際、領軍には宙賊狩りのためのミキサーチームが存在します。」

『つまり、武器商人として儲けている自覚があると。』


 その言葉に一部の人間がざわつく。武器商人というのは穏やかじゃない。


「うちが販売しているのは、作業用ロボットのみです。その表現はいささか過激では?」

『しかし、ユーザーの多くは軍関係者だとか。」

「分母の違いです。なんだかんだ宇宙で一番活動しているのは商人と軍人でしょ?」


 適当に躱しつつも、イムールの指摘に俺は少し焦っていた。サンブラーはともかくとして、ミキサーのユーザーの多くは軍人、あるいは傭兵だ。輸送船の護衛や宙賊狩りに使いやすいと大好評。最近ではビックオーシャンやホープでもミキサー部隊が配備されるようになり、販売元であるうちはウハウハである。


『一部のロボットが宙賊にも流れ、それによる被害が拡大しているとか。』

「宙賊への流出は想定外でした。初期流通の段階で漏洩された技術によるコピー品が出回っているのは。僕としても悲しい事です。ロボットは生産性の向上を目的に開発したというのに・・・。」


 とか言ってますけど、売ったあとのことまで責任なんか取りたくないです。 


『とのお言葉ですが、最近ではミキサー専用の兵器まで開発されているとか。今回の予算増加もそちら方面への拡充を進めるためのものではないかと、愚考したわけです。』

「愚かな勘違いですね。そちらは自衛のためであって販売の予定はありません。ミキサーもサンブラーもあくまで作業用ロボットです。」


 ロボット開発というのは建前で、やっていることは武器販売ではないか?はい、その通りです。

 しかし、この疑念は非常に印象が悪い。旧時代の反省から、武器の販売や開発については法やルールによって厳しく制限されている。船に搭載されている銃火器については登録が義務付けられ、届け出のない装備は取り締まりの対象だ。また、無茶な突撃や危険な行為ができないように、船や作業機械には過度な加速や接近時に緊急停止するようにプログラムされている。これの改造も違法であり外部から簡単に確認できるようになっている。そして、こういった違反に対しては、警告なしの攻撃が国際常識として許可されている。宙賊に対して即座に攻撃されるのは、これが根拠となっている。

 武器は持っているだけでも罪。その売買で儲けているとなれば、それだけでも非難の対象となる。この世界ではそうなっている。

 

「兵器転用に対する安全対策は幾つも行われています。販売は船舶と同様に登録制ですし取り扱いについても通常の船舶と同様となっています。また。一般販売のミキサーのOSには挙動に制限が設定されています。仮に流用されても、無理に改造した機体なので運動性は軍用船にも劣ります。」

『よそが、独自にOSを開発する可能性は?』

「ありえませんね、ノウハウの蓄積が違います。コピーや複製をしようとした場合は、プログラムが自壊するように設定してあります。」

『ほう。では、安全対策は万全だと?』

「足の速い船を作るのは違法ですか?」

『そうはなりませんな。ただ、気になってしまったので。』

「それだけ重要事項です。疑問にはいつでもお答えする準備があります。」

『ありがとうございます。質問は以上です。」


 さすがは憲兵長、誘導がうまい。不安の種となりそうなことを指摘するだけ指摘し、必要以上に詰めずに質問を区切る。そうすることで、俺がロボット開発を通してよからぬことを企んでいるのでは、周囲に思わせやがった。

 例えば、武器販売と承知で金儲けのためにロボット開発を進めてるとか。

 例えば、作業用というのは建前で、コロニーの戦力を強化しているとか。

 例えば、宙賊や非合法組織に、こっそり流通させてるか。

 このあたりだろうか?あとは、物好きな連中が好き勝手に膨らませる。


「それでは、他に質問がないようなら、本日の会議を終了させていただきます。」


 聞かれてもいないのに答えるわけにもいかないので、俺は会議を終えるしかなく、疑念だけが残る。いや、皆がうすうす感じていたことを会議という場で言語化されてしまった。

 イムールが何を狙ってこのような事をしたのかは分からない。

 ただ、困ったことに、彼が蒔いた疑念はその通りなんだよね。リスクも承知でミキサーを宇宙中にばらまいたのはほかでもない俺と博士だ。さぐられたらお腹が痛い。


 これは新年度早々、面倒な事になりそうである。


イムール「何か企んでませんか?」

リンガット「やばい、全部心当たりがある。」

 非合法なことも承知でやっているので、耳が痛いリンガット様なのでした。

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― 新着の感想 ―
トヨタの車は、世界中で売れて、戦地では戦闘車両に改造、転用されてるけど、トヨタは軍需企業だろうか? ダイナマイトが鉱山の発破から、軍用に転用されまくった様に、便利な道具は、兵器転用されるもんだよ。(目…
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