61 アフタスペース296 引き金の重さは意外と軽かった。1
宇宙な戦闘のはじまりです。
SF映画やロボットものにおいて、ビームやレーザーといった兵器は定番であるが、これには二つのタイプが存在する。
一つは、懐中電灯やレーザーポインターのように光や熱線などを照射するもの。光線の持つ熱エネルギーで対象を焼き切るものや電磁パルスなどで電子機器を破壊するなどの兵器だ。ホースの水を光や粒子に替えたものと言えばわかりやすいだろうか?その性質上、銃身から伸びるレーザーが直線となってつながっているので、弾道が視認しやすい、また、ターゲットに照射するだけ効果がでるので扱いは簡単だ。この仕組みを利用した、レーザーカッターやレーザー銃というのは前世でも実用化されていたが、人や物を傷つけられるレベルのレーザー銃はまだ実用化されていなかったと思う。
もう一つは、プラズマや重粒子のようなものを加速させて打ち出すタイプだ。前者は水鉄砲だが、こちらは弾丸が特殊なだけで仕組みとしては通常の重火器と変わらない。だが、こちらは完全にファンタジーな仕組みだ。前世の記憶の中に粒子加速器なるものは存在しているが、まだ実験室レベルのもので実戦で使われていたという話は記憶にない。
そもそも、そんな便利な粒子があるのだろうか?それこそ1年で終わったようで終らなかった戦争ならば、レーダーとかをかき乱すあの粒子とか、やたら毒性の強いメガな粒子を加速させて撃ちだすことで光速に近い弾速とまっすぐな弾道を実現している。この世界のビーム兵器も、コンプレーションカーボンとかいうよくわからない物質を圧縮し撃ちだしている。よくわからないが、特殊な装置と空気があればいくらでも作れる便利な物質である。
まあ、仕組みに関しては専門外というか、興味がないのでどうでもいい。ロボットと言えばビーム兵器だ。これが実現できるなら些細なことだ。重要なのはこの世界のビーム兵器が真っ直ぐで速いこと。そして、それをどう活かすかだ。
「一つ。」
宣言とともに発射される光の弾丸。肉眼では視認できない速さで発射されたそれがもたらす結果は、遠すぎて俺からは見えない、代わりに先行しているチームメイトから報告がはいる。
『ハウンド1 着弾を確認。ターゲットの目を貫きました。続いて口と鼻の場所を。』
「了解っと。二つ!」
予想通りの報告を聞きながら、ショットアンドムーブの原則に基づいてジグザクに機体を進ませる。その間にも次のターゲットに向けてライフルを調整し、ためらいなく引き金を引く。
計5発。圧縮された謎粒子によるビームは、宙賊の住処に設置されたレーダーやバリアー発生装置に致命傷を与えていく。
『ハウンド1 ターゲットに反応なし、お見事です。』
「ありがとう。引き続き警戒を」
賞賛の添えられた報告に礼を言いつつ、俺は左腕を操作してライフルの弾倉を交換する。弾倉や銃身を即座に交換できるのは、手足のあるロボットならではだろう。そして、この機体とライフルはそういった運用を想定しているので、ほんのわずかな時間で再び射撃を再開できる。
「まるで魔法だねー。」
「笑止。これはれっきとした物理現象。」
引き金を引くたびに入ってくる破壊報告にそんなことを思う。
長距離狙撃、砲撃という技術は旧時代から存在した。それこそ生身の人間でも、狙撃用ライフルで4キロメートル先の標的に命中させた記録がある。かの有名な戦艦ヤマト(海で活躍してた方)の主砲の射程が42キロ、これは大砲の性能というより、甲板から視認できる限界がこの距離という話で、実際に飛ばすだけなら、もっと距離は伸びただろう。ともあれ、重力や空気抵抗などもある地上でそれである。宇宙空間で、それも光速に近いビームライフルになった場合、その射程距離はどこまでも伸びる。
『ハウンド3 ターゲットが動き出しました。ですが、こちらに気づいた様子はないです。』
「だろうねー。」
無理もない、認識の外からの狙撃は音速どころか、光速レベル、人間の5感で認識できるものではない。現場の宙賊たちには目の前で突然機械が爆発、あるいは機能が停止したように見えているだろう。すでに10発以上撃ち込んでいるにも関わらず、機械の故障か、爆弾などによる奇襲が疑われ、その意識が内側に向けられているのはそのためだ。
まるで魔法、いや宙賊にとっては悪夢か。食い食われる世界で生きる宙賊であっても、この状況で冷静ではいられない。そんな混乱に乗じて俺は次々に敵の機能を奪っていく。
「あっ、はずれた。」
『ハウンド1 着弾のずれを確認、5時方向に5メートルほど修正を。』
まあ、いいことばかりではない。このピーキーなライフルを運用するために調整されたヴォーチェスピントの機動力や防御力はかなり低い。万が一にも敵に接近されれば、小型船が相手でもまず負ける。また、射程のために極限まで圧縮された弾丸は、その性質上ゆえにバリアーや一部特殊装甲などには効果が薄い上、そもそもとして小さすぎる。それこそ針の穴に糸を通すなんてレベルじゃないほどの射撃精度が要求される。
ヴォーチェスピントが俺の専用機となったのはこれが理由だ。ハウンドチームが先行して届けてくれる正確な位置情報と、メトルによるアシスト、何より「解析」よる分析の早さがあって初めて、この悪夢は実現できる。もっとも、奇襲が前提で、相手に警戒され防御態勢を取られたら、無力で動きの遅い足手纏いになってしまう。一部の部下からは「棺桶」とか「処刑台」などとも言われている可哀そうな機体なのである。
「初見殺しとしては充分だと思うんだけどな。」
機動力のない二足歩行ロボットは敬遠される。原作でも今世でも、ディープベースが不遇な扱いなのは変わらないのか・・・。
人生初の宇宙戦闘に最初は緊張していた。だが、引き金を引くたびに、段々と冷静になり、気づけばこんなどうでもいいことを考えている。我ながらなかなかのメンタルである。
だが、これは命のやり取りをする戦闘であり、宙賊もただでは終わらなかった。
度重なる射撃の狙いが宙賊の船に狙いが変わると、流石に宙賊たちも外からの攻撃であることに気づき、慌てて対応を始める。敵がいるはずと思って索敵をされれれば、隠れ続けることは難しいだろう。
「そろそろ気づかれるだろうね。各機、警戒を。」
「ハウンド1 了解」
「ハウンド2 了解」
「ハウンド3 了解。」
ここまでは予定通りだ。ここからは、頼もしきチームメイトの実力に頼らせてもらおう。
兵器に関するあれこれは、作者の妄想な部分が大きいのでわりとツッコミどころがあるかもですが、ご容赦ください。




