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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタスペース296 リンガット13歳

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59 アフタースペース296 いざという時に、頼りになるのは女性ということらしい①

 そりゃ、そうなるってお話。

 領主邸というのは、そのコロニーで最も象徴的な豪華な場所である。例えばビックツリーなら、貴重な木材を惜しげもなく使った唯一無二の洋館が、ホープでは他を見下ろすほど巨大なビルがそれにあたる。それぞれのコロニーの特徴や権威を表しているため、同じ形のものは一つとない。

 で、ビックオーシャンではどうなるかというと、一言で言うなら水の宮殿だった。オレンジ色の外壁の建物にはいくつもの水路が走り、清潔な水が常に流れており、水路ごとに多種多様な魚が泳いでいる。入口から建物までの移動は水に浮かべたゴンドラで、客人に優雅な時間を与えてくれる。


「ここにいると表の喧騒が嘘のようだね。」

「そうですね。緑が多いのでビックツリーを思い出します。」

「そうかな、そうかも?」


 元日本人としては、ビックツリーが日本の山奥で、ビックオーシャンは南国やカリブ海って感覚だ、潮の香りは薄めだが、石造り風の建築や水の流れは西洋の港町を連想させる。それでいて整えられた植木や芝生が多いので、観光地というか作り物のようなイメージを抱いてしまう。まあ、スーザンなど旧時代の感覚がない人間は、視界に緑がある時点で自然豊かと感じるのかもしれない。

 相変わらずクールなスーザンの返しに改めて中庭の印象について考えていると、早々にゴンドラは屋敷へとたどり着き、そのまま最奥の執務室まで案内された。

 扉のほとんどが開け放たれており、すれ違う人もいないのが奇妙だった。

 こういった格式のある場所で人と会う場合、通常は玄関か客間で待たされたり、お茶などを振る舞われれたりして、ワンクッション置かれるものだ。それとなく人を配置して警備を強化したり、客の様子を観察するといった様子も見られない。これが知り合いの自宅というならまだわかる。だが、ここはコロニーのトップである領主一家が生活している場所だ。違和感はあからさまだった。あえてこういう対応をすることで、俺を急かしている、あるいは試しているのだろうか?


「どうぞ、お二人が中でお待ちです。」


 その証拠というわけではないが、案内してくれた執事さんっぽい人の顔に余裕はなく、ノックして室内に確認をとることも忘れているご様子。これは、自分で開けろってことだろうか。仕方なくそっと扉に近づき、そのドアを開けようと


「あらあら、やっと来てくれたのねー。」


 したら、内側からものすごい勢いで開けられた。ギリギリのところでスーザンが肩を掴んで止めてくれたので大丈夫だったけど、あのまま扉に近づいていたら顔面を強打していたことだろう。

 いやマジで危なかった・・・。

 それでも、でてきた女性のインパクトに比べれば些細なものだった。


「あらあら、ごめんなさいね。でもでも、もうね、本当に待っていたのよ。」

「ははは、ドーリス夫人にそう言って歓迎していただけると誇らしいです。」

「ふふふ、ありがとう。」


 部屋から飛び出てきた人物は、それはそれは大きな人だった。

 ヒールこみで2メートルはありそうな高身長で太く長い手足。これの面白いところは、太っているのではなく引き締まっていることだ。女性用のフォーマルなスーツを着ていて肩回りは撫で肩で、全体的なシルエットは女性らしい丸みを帯びている。それでいて、身長を含めて色々と大きい。相当に鍛えこまれているのだろう、手足だけを見るとボディビルダーやギリシャの男性彫刻のような存在感がある。背筋をピンと伸ばして黙っていれば、アスリート体型な美人で間違いない。だが、姿勢はやや猫背で、くねくねと動く仕草は女性らしさに溢れている。かっこいい系の女の人なのに、仕草が子どもっぽいというか可愛い系なのだ。3人の子供を産んでそれなりの年齢のはずなのだが、皺ひとつない張りのある顔は、まるで少女のように無垢なもので、ビスクドールのような大きな目がキラキラしている。


「歓迎するわ、リンガット・ビックツリー。」

「ありがとうございます。ドーリス夫人。」


 ドーリス・ビックオーシャン。ビックオーシャンの領主夫人であり元軍属、そして、3人の子供の肝っ玉母さん。結婚して家庭に入ってから表舞台には出ていないとのことだが、結婚前は、突撃兵として宙賊狩りをしていた女傑であり、その勇名は他のコロニーでも知られている。また、政治的にも優れた思慮の持ち主でもあり、公私共にフィステル様を支えている有能な人だ。というのはお爺様から聞いていたことだけど、実際に会うと、なかなか強烈な御人であった。


「今日はよく来てくれたわ。夫に代わり御礼申し上げるわ。」

「いえいえ、この素晴らしい館を拝見できただけでも眼福です。それに御多忙なドーリス夫人やフィステル様にこうしてお時間を作っていただけるのは光栄です。」

「そうなのよー。どこかの誰かがやんちゃしてくれちゃったみたいで、夫はあの通りでね。」

 

 その大きな身体がスライドして視界に入ってきたのは、必死な顔で事務作業をしているフィステル様だった。切羽詰まっているのか、集中しているのか、客人を前にしてもその視線は手元の端末に向けられ、その手は忙しなく動いている。おそらく俺たちの来訪にまだ気づいていない。

 あれはつらい。マジで追い込まれたときって、目の前のタスクだけで周囲が見えなくなるんだよね。 


「今朝方からのトラブルに対応するために、あそこから動けないのよ。」

「同情します。」


 どの口が言うか? この口だが? 

 フィステル様が忙しいのは他でもない俺の所為なのだが、先に仕掛けてきたのはビックオーシャンなので同情は口だけだ。少しも悪びれずに堂々としている俺にドーリス夫人はちょっとだけまゆをひそめた。だがそれは一瞬のことで、すぐに笑顔で握手を求めてきた。

 

「そんなわけで、本日は夫に代わって対応させてもらいますわね。」

「お爺様からアナタの評判は伺っています。お話できるのを楽しみにしていました。」

「あらあら、お上手ね。」


 いささか駆け足で白々しいやり取り。そこに込められた意味を正しく理解しているので、文句はない。ドーリス夫人のこの態度の意味。これは抗議だ。


『お前んとこが無茶苦茶してくれた所為で、こっちはまともな対応もできないほど大変なんだが?』

『やっと話が分かる人がでてきたな。今度こそまともな話をしろよ。』


 言外に交換される意志を言語化するとこんな感じだろうか?

 混乱する現場をあえて見せ、慌てた様子の振る舞いをすることで、ドーリス夫人は混乱の首謀者である俺を責めている。俺は俺で、夫人を持ち上げることで先日の息子達では話にならなかった事実を抗議しているわけだ。取り繕っているが、お互いの不満を隠す気がない。なんなら喧嘩上等である。 

 あえて、フィステル様が働く執務室に招いたのも、ここできっちり話をつけようということだろう。

 回りくどいが分かりやすい。この対応には好感がもてる。俺を子ども扱いせず、手強い交渉相手としているところもポイントが高い。


「お手柔らかにお願いします。ミセスビックオーシャン。」

「あら、それはこちらのセリフよ、ミスタービックツリー。」


 今後の両者の関係を決定づける重要な対談は、最初からバチバチで、心臓に悪いものだった。

 

リンガット「また、癖の強そうな人がでてきたー。」

ドーリス「私はまとなほうよ。」

 そして、はじまるビックマムな女傑とクソボンボンの対談は次回をお楽しみ。

 新キャラの描写で長くなってしまい、分割せざるおえなかった・・・。

 


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― 新着の感想 ―
有能ぶっているけど、このおばさんもあのボンクラをよしよししていた一味なんだよな。本当に話が通じるのかわからんね。
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