58 アフタスペース296 リンガット様、疫病神説?
結果発表?な話です。
悲嘆の5段階モデルというものが存在する。死や失敗など受け入れが難い事実に直面し、それを受け入れるまでの5つの段階だ。
まずは「否認」
深夜に発生した異常な量の情報リークによって、致命的なスキャンダルが暴露されたとき、被疑者の多くは、何かの冗談だと思って笑っていた。自分たちの隠蔽工作を疑わなかったし、情報が多すぎて自分が対象になっていると信じなかったのだ。
2番目は「怒り」
スキャンダルが自分にとって致命的だと理解したとき、彼らは管理者の杜撰さをせめ、裏切りを疑い、情報をリークした相手への報復を考えた。しかし、どんなに調べても実行犯の足跡すら追えなかった。それだけ巧妙な手口だったし、そもそもスキャンダルを手に彼らを追い詰める人間が多く、まともな時間もなかった。
3番目は「交渉」
勝てないと思った彼らは、交渉や懇願、論点のすり替えなど、あらゆる詭弁を用いて少しでも有責カウンターを減らそうとした。しかし、そう思ったときには時すでに遅し。彼らの進退はどうにもならないレベルにまで追い込まれていた。
4番目は「抑うつ」
天災のように理不尽でありながら、おのれの過去の所業による自業自得。それをどこかで理解しながら、彼らは己に降りかかった不幸を嘆き、子どものように泣き叫んだ。
5番目は「受容」
彼らが真の意味で己の所業に向き合って反省する日。それが来るのはまだ先になるだろう。
数時間の仮眠ですっきりした頭で各地からの報告を読んだ俺は、そんな心理学の基礎を思い出していた。
「思った以上に対応が早いな。」
「否定。充分混乱していると思うが。」
「そだねー。」
夜なべして作り上げたプレゼントは、たった数時間でビックオーシャンに大きな混乱をもたらした。
一番わかりやすいのは経済関係だろう。財務省の官僚による横領と脱税の暴露をきっかけに、一部の税金が一部のお偉いさんの個人的な資産とされていた事実が発覚した。それがなんと流通関係の給料に関わるものだったのだから、現場の人間は大激怒、未払い分の給料が支払われるまでは働かないとストライキ―が発生した。その結果、各地の店舗では商品の入荷ができず、品不足の不安から買い占めに走る客も現れ、街中は大混乱らしい。
また、一部のアイドル、もといインフルエンサーは裏金を貰って商品の効果を盛って喧伝したり、悪評を流していたことが暴露されて信用を失った。ネット上では、あることないこと書き込まれて大炎上しているらしい。本人もそうだが、依頼していた企業にも報復が向けられ、一部の市民が暴徒となって押しかけているとかいないとか。
軍関係者はまだましな方だ。幹部クラスの人間が、自分に有利な人事を仕組んでいたことが発覚し、収賄などの疑惑で何人もの人間が軍人としての資格をはく奪される事態となった。色んな意味で力のある人間ばかりなので、彼らは真っ先に糾弾され、自宅謹慎、あるいは収容所へと送られたので、街の惨状を直接見ることはなかった。だが、中には機密情報を宙賊に流していた馬鹿者もいたらしく、市民の怒りは大きく、無関係な軍人たちにも冷たい視線を送っている。
普通、こういうのって、大きな事案に意識が集中するものだが、そこは人の性である。自分だけで悪役になるのが嫌な被疑者たちは、必死になって仲間の悪事を暴露、それが職種の垣根を超えて行われているのだ。中には事実を捏造する者まで現れ、混乱は今もなお加速している。
そうなれば、ビックオーシャン側が俺達に構っている余裕はない。夜の間に行われた嫌がらせは、潮を引くようになくなり、俺達を含めた他のコロニーの関係者は、自分たちの舟や宿泊先に引き篭もって、状況を見守っている。
当然ながら、訪問も延期、いや、この調子ならキャンセルになるだろう。
「これ、いよいよ信ぴょう性がでてきたよね。僕が関わると、なんでか予定が早まる。」
「逆ではないかと、リンガット様だったからこそ、あの程度で済んだんだと愚行します。」
「はは、ありがとう。」
ふと思ってしまったネガティブな考えをスーザンにフォローされた。
思えば、俺が関わると想定外なことばかり起こる。
未調査地域の調査をすれば、スペースアントの巣を発見し、大捕り物になった。
ホープからの使者を接待していたら、謎の勢力に襲撃されて、予定が前倒しになった。
ギャラクシーで、ミキサーの売り込みをしたら宙賊の襲撃にあい、初出荷の荷物は宙賊に強奪されて、宇宙中に技術が散逸してしまった。
大きな例をあげるだけで、これである。一部では、「リンガット様疫病神説」とかいう都市伝説があるとかないとか。
からの、今回の騒動である。この宇宙時代は日進月歩で賑やかだとしても、我ながらちょっと運が悪すぎじゃないだろうか。そもそもが、実の両親に捨てられるところからのスタートだし・・・。
うん。客観的に振り返るとリンガット・ビックツリーは、運が悪すぎる。そんな中でも故郷と領民のために健気に頑張ってるよねー。
「リンガット様、領主様から緊急通信が入っています。すぐにでも直接会ってお話をしたいと。」
「うん、そうなるよね。すぐに向かうと返事をしてもらえる。」
とか思っていたら、予想通り、面談のアポイントメントが来た。さてさてどうなることやら。
リンガット「わー、すごいことなったなー、大変ですねー(棒)」
これでも手加減してました。とリンガットはのちに語る。




