表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタスペース296 リンガット13歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/71

55 アフタースペース296 一方そのころ③

前フリが長くなりましたが、本題です。

 海鮮鍋は美味しかった。これも美味いぞと振る舞われたサザエのつぼ焼きと締めのラーメンまできっちり食べ、気づけば1時間ぐらい食事をしていた。待たせていることが気になっている俺と違い、先輩たちは、まじで普通に食事をしていた。

 だというのに、ブレスト隊長は素知らぬ顔で外へ出た。そして、テラス席で俺たちを待っていたヒゲに対して悪びれることなく声をかけた。


「待たせて、悪かったな。」

「構わない。むしろ急いで食事をされていたら、私たちは更に恨まれていた。」


 隊長の言動があからさまな挑発であることは俺にも分かった。のんびりとした食事も悪びれない態度は、相手の要求がなんであれ、言外に交渉の余地はないという意思表示だ。だがヒゲは怯まなかった。


「そういえば、まだ名乗っていなかったな。私は、バルト・ムスタシュ。ビックオーシャンで少将を務めさせてもらっている。」

「将官殿でしたか、どうりで威厳があるわけだ。自分はビックツリーはアーテム所属にする、ブレスト・オブリガート大尉であります。」

「そうか、まあ、かけてくれ。今の私はただの使いっぱしりでしかないからな。口調もそのままでいい。」

「それはどうも。お前たちも座れ。」

「「「はい。」」」


 隊長の指示もあり、俺たちは用意されていたテラスのテーブルにつく。

 ここでもし、別の場所へ移動と提案されていたら、適当に難癖をつけて帰るつもりだった。相手の誘いを断るのはどうかと思うが、アポもなしに食事中の俺たちに声をかけたのは向こうであり、この場限りという条件つきでも、話を聞こうとしているだけ、譲歩しているのである。

 相手もそれがわかっているのか、ぴくっとまゆを動かしただけだ。招待などの話を蒸し返すこともなければ、追加の飲み物を注文することもなかった。

 

「単刀直入に言おう。貴公らをビックオーシャンにスカウトしたい。」

「答え、聞きます?」

「条件は相応のものを用意するが?」


 ヒゲ、もといバルトの要求は、俺たちのスカウト、もとい、引き抜きだった。これは事前にリンガット様から警告されていたものだ。


「君たちの技術は驚異的だ。とくに、昼間の救助活動。あれは装備ではなくパイロットの技量によるところが大きいのだろう。」

「我々の口からはなんとも。技術関連の問い合わせは別口ですので。」

「ふふふ、謙遜と判断させてもらおう。」


 ビックオーシャンはどこよりも、二足歩行ロボットとその恩恵を求めている。

 人間が生きていく中で水は欠かせないもので、真水や水関連の生産物は、常に需要がある。それゆえに、それを担っているビックオーシャンは安泰である。というのは子どもの俺だって知っていることだ。

 だが、それは幻想である。増え続ける人口に対してビックオーシャンの土地は有限であり、その拡充も容易ではない。そのため、今の成長曲線のままでは、近い将来、宇宙全体の需要を賄うだけの生産力を維持できなくなる。それを解決するために、ミキサーによる効率化を図りたい。

 というのがリンガット様の推測だ。

 

『だからこそ、相手はあの手この手で勧誘してくるだろうけど、話はその場で聞くにとどめなよ。それこそ、相手は必死になって君たちを抱き込もうとするはずだから。』


 それを聞かされた時、俺を含めて大半の人間は、大袈裟だと思った。

 サンブラーやミキサーが素晴らしいのは分かる。二足歩行ロボットという物珍しさで注目されてから数年、その拡張性と機動力の高さが周知され、気づけば様々な場面で活躍している。

 しかし、2年前の強奪事件でミキサーに関する技術の大半が流出しており、それなりの設備があれば模倣品の生産は可能となっている。おかげで儲からないとお偉いさんたちが良くぼやいている。

 ビックオーシャンの抱えている問題の規模は分からないが、人口や国力はビックツリーの倍以上。生産はおろか、自力で開発を進める土壌は充分なはずなのだ。


「そもそもの話、技術提携となれば領主レベルの話なのでは?俺たちは末端ですよ。」

「そこは、わかっている。領主レベルの交渉も同時に行われている。だが、今我々が一番求めているのは優秀なパイロットとその育成ノウハウなのだ。」

「それを言っちゃいますか?」

「公式の場ではない、私的な交渉と思ってほしい。」


 交渉のためなのだろうが、あまりのぶっちゃけ具合にブレスト隊長は苦笑した。

 引き抜き、ヘッドハンティングと言われる交渉があると聞いたことはあった。それこそ、アーテムの人員は、いろんな組織からリンガット様がそうやって集めたメンバーだ。

 それだって気を使っていたと聞く。上役である艦長や役人に許可をとり、本人と交渉、代替人員の確保や資金援助など色々と根回しをした上で、本人たちに交渉を持ちかけたらしい。

 それを知っているからこそ、食事の場に押し掛けていきなり要求を伝えるバルトの交渉は不躾で失礼な物に見えてしまう。


「私は主のため、どんな手を使っても君たちを引き入れたいのだ。」

「職務に対する熱心さはすごいですけど。だったらご理解いただけますよね?」


 逆に言えば、それだけ本気ともとれる。到着当初に言っていた別会場も本気で用意していたのだろう、そして、それをあっさりと切り捨てて、身銭を切ってでもこちらの機嫌を取り、こうして交渉の場を作り出した。

 なるほど、隊長が油断するなといったわけだ。


「バルト・ムスタシュ少将。アナタの本気度と誠意は分かった。だが俺たちだって、ビックツリー所属の軍人だ。仕えるべきはリンガット・ビックツリー様と決めている。」

「そこをなんとか、一度、主と話をしてもらえれば、気が変わるかもしれない。」

「自分の主を高く評価したい気持ちは分かります。ですが、今は任務中につき、そのような時間はとれません。」

「くっ。わ、わかった。今日はこれで引き下がろう。」

「もしあれならば、上を通してください。許可が下りれば交渉に応じる余地はあります。」

「う、うん。今日は時間をいただき感謝する。」


 塩対応な隊長を前に、バルトは素直に引き下がり、そのまま部下を引き連れて帰っていた。

 まだまだ、食い下がろうとする気配を感じたけど、それがこちらの心証を悪くすると判断したのだろう。


「引き際を弁えていたな。あれは厄介だぞ。」

「ですねー。こちらが真っ向から拒否しづらいギリギリを攻めてきました。」


 通りの向こうへと去っていくバルト達に、ブレスト隊長とドルチェ姉さんはそんな感想を言っていた。たしかに、初対面での対応や内容はともかく、バルトという人間は嫌いに慣れないタイプだった。要求云々はともかくとして、次、話しかけられたら返事をしてしまう。そういう話ができていたと思う。


「カルマート、連絡は?」

「録音込みでデーターをスーザンさんに送ってあります。」

「そうか、我々もすぐに戻るぞ。」

「えっ?」


 そんな感慨を持っていたら、先輩たちはもう既に動いていた。


「カナデ君、想定ラインAだよー。」

「えっ、それって。」

「頭が追い付かないなら口を閉じてろ。」


 状況の急な変化に混乱していた俺は、顔を引き締める先輩たちに腕を引かれ、訳の分からないまま、すぐにその場を後にした。


「カウント、想定ラインAってなんだったっけ?」

『YES。ミキサーの強奪または攻撃に備えろだ。』


 後になって、カウントと確認したとき、自分の迂闊さに凹んだのは内緒だ。



優秀なパイロットのスカウトに失敗、そうなれば・・・。


Q 少将クラスの人間にこの態度でいいのか?

A 軍隊の階級制度はコロニーごとに差があるので、問題はない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
別に戦争しようってわけでもないんだから、訓練とかお願いしたら普通にさせてくれそうですなのになって。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ