46 アフタスペース296 このヒロインにニーズはなさそう1
今回こそ、ヒロイン登場なるか?
オーベンとドゥシュのマウント合戦は、その後もひどいものだった。
「では、応接室に。」
「だーかーらー、客室へ案内して休んでもらおうよ。」
「うん、ここは、ミキサーの性能を実際に見て頂けますか。パイロットたちも準備できてますから。」
「そ、そうか、なら早速、先ほどの素晴らしい装備の説明を。」
「うーん、ここはパイロットたちの説明を聞きたいな。実際動かす人間の意見って気になるんだよね。」
「順を追って説明させていただきますね。」
面倒な二択を躱すために、第三の選択肢を提案すれば、更に要求をしてくるのは当然のこと。
「なるほど、ではリンガット卿、こちらで詳しく説明を。」
「こっちの方が見やすいんじゃない?」
「安全面の懸念もあるので、お二人はそちらでお願いします。」
見学がはじまれば、何かと理由をつけて俺を傍に置こうとするし、その後の交流会でも隙あらばツーショットを狙おうとする。そうやって少しでも俺と仲良くしたという実績作りに必死だった。
それが友好的なものならまだいい。面倒なのは、ビックオーシャンの特有の上から目線だ
「なるほど、この機動性には流体金属が使われているからなのか。そうなると特殊溶液の需要が高まるわけだな。うむうむ、任せたまえ。」
オーベンは堂々としながらもビックオーシャンに関わりがありそうな案件があると食いついてきて、恩を売ろうとしてきた。しかし、そのあたりの商談は既に話が済んでいるので、彼の一言は恩着せがましい余計なものだった。
「すごいねー。」
「そうですよ、ミキサーはうちの自慢の商品です。」
「そうじゃなくて、リンガット卿がすごいって話。まだ13歳なのに、しっかりしてる。」
ドゥシュのほうは何かと俺を持ち上げて、親密な雰囲気をだそうとしてきた。だけど褒め方が雑であり、年上マウントにしか思えない。
なんというか、孫に気に入られるために空回りしているお爺ちゃんって感じ?いや彼らはまだアラサーなので、甥っ子に気に入られるために必死なおじさんというべきだろうか。
ともかく、すげえめんどくさかった。あの手、この手で躱しまくって初日のスケジュールを消化した自分をほめてあげたい。
「疲れたー。」
「お疲れ様です。お茶の用意をします。」
「おねがーい。」
客室に案内されてすぐに、着替えもせずにベットに倒れ込んだのも許して欲しい。服がしわになるとか、お行儀が悪いとかそんなこと言ってられないぐらい疲れていたのだ。普段なら窘める側のスーザンやメトルが何も言わなかったのも、俺の消耗具合を理解していたからだろう。
「問。あのどちらかが、次代のビックオーシャンなのか?」
「らしいね。どっちもどっちだけど。」
「理解。あれはどちらも極端。足して2で割るぐらいがちょうどいい。」
「いやいや、アレは足したら0になって無能になるタイプの極端さだよ。」
だらんと横になりながらメトルとたわいもない話をする。この後は、夕食までしばらく休憩なので気持ちと体力を回復させよう、そう思っていた。
前世の知識と、ロボットへの執着でそれなりに面の皮は厚いという自覚はあるけど、流石に限界だ。
「失礼します。リンガット様、面会を求める方が。」
「はあ、まじで?」
そんなタイミングでアポなしの来客は、さすがに空気が読めなさすぎではないだろうか?
「どちら様?」
「え、ええっと。お断りしましょうか?」
スーザンが言い淀むレベルの不機嫌な声になってしまったが、気にせず俺は起き上がった。
「着替えるから、少しだけ待っていただけるようにお伝えしてもらえる。失礼のないようにね。」
「わかりました。そのように。」
相手がだれかは知らない。だが、この状況でスーザンが俺に確認を取るような相手だ、失礼のないようにしないといけない。俺は慎重に服を選び直して身嗜みを整え、応対の準備をした。
決して相手を待たせようなんて意志はない。急なアポだというのに10分と掛からず準備したのは、急いだ方だと思う。
だが、来客はそれが気に入らなかったらしい。
「お待たせして申し訳ない。」
「まったくですわ、客を待たせるなんて、何を考えてるのかしら。」
「いやはや、急だったもので、申し訳ない。」
「そもそそもですわ、そちらから挨拶に来るべきだったのは?まったく、これだから。」
初手の会話がこれである。そして、言葉以上に態度も服装も尊大な相手だった。来客用のソファーに深々と座り、出されたドライフルーツ(ビックツリー産)をすべて平らげ、俺が現れてても立ち上がろうとしない。いや、そもそも着ているドレスが豪華すぎて立ち上がれないんじゃないだろうか?それ、会食とか式典とかで着るようなレベルの豪華なやつですよね。サテンのような光沢のある質感の布を幾重にも重ねたドレスは日本の12単衣を連想させるが、身体のラインは隠すものではなく、15歳とは思えない発育具合もあって、なんとも色っぽい。なかなかの舌鋒であるが、その整った顔は、いかにもお姫さまって感じだ。その姿と顔をリンガットが見間違えるわけがない。
「しかしながら、訪問初日であなたに会えるとは光栄です。」
「そうなの?なら、その幸運に感謝することね。」
テティス・ビックオーシャン。現領主の長女にしてオーベンとドゥシュとは年の離れた末っ子にして、ビックオーシャンの姫様だ。そしてリンガットの怨敵である。
プライドが高く高飛車な自信家であった彼女は、公務中に宙賊に襲われ、主人公たちに助けられる。その過程で、ゼーレ達が作り出そうとしている宇宙の歪さを知り意識を改める。その後、なんやかんやあってビックオーシャンの領主となり、反乱軍のリーダー的存在になる才女だ。
ちなみにその公務というのが、停戦協定のための政略結婚。お相手は我らがリンガット様だったりする。面子を潰されたリンガットは、主人公たちの船アーテムを理由にビックオーシャンに様々な攻撃を仕掛けるが、政治や軍事、経済のあらゆる分野で、テティスや主人公たちに敗北し、その権威を失っていくことになる。
政治的手腕はもちろんのこと、公明正大、勇猛果敢。でありながら主人公にはツンデレな美少女ということで、作中でも人気の高いキャラだった。
まあ、それは4年後のアフタスペース300年の話。今の彼女は意識改革前の高飛車ガールである。蝶よ花よと愛され育った上に、能力もそこそこ高い。自分が一番すごくて偉い。そういうのを隠そうとしないのだ。その人となりが、事前の身辺調査通りなことは一目でわかってしまった。
分からないのは、なぜこのタイミングで彼女が現れたかだ。
「で、何の用ですか?」
「はっ、あなた、それ本気で言ってます。」
我ながら間抜けな質問をしてしまったと思う。末っ子はいえ、一応はトップ同士の対談だ。こういう場面では、ある程度の相手を意図を読み取る、あるいは世間話をしてクッションを挟んでから会話の流れでそれとなく聞くというのがマナーだ。だが、疲れもあったし、彼女に対して過剰に警戒してしまっていたものもあり、直球の質問となってしまった。
しかし、意外と正解だったのかもしれない。
「呼び出したのはあなたでしょ?何言っているの?」
真顔でそう返すテティス。これまたメンドクサイことになりそうな事実を早々に知ることができたのだから。
リンガット「疲れている時に、一番のヤバいのかきた。」
テティス 「やっと登場ですわー。」
ついにヒロイン登場。しかし、その出会いは原作以上によくないようです。
体調を崩していたのもあり、投稿に間あいてしまい申し訳ありません。




