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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi


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4 アフタースペース290 お爺様を説得しよう。2

お爺様とのお話が続きます。

 お尻をもぞもぞと動かし、絨毯の踏み心地を確認する。木製の椅子は僕のサイズに合わせて作られているのか非常に座り心地がよい。沈まない程度に程よく柔らかいの弾力の絨毯は素足で飛び跳ねてもきっと痛くないだろう。今更だけど外から戻ったときのままなので靴が汚れているけどいいのだろうか。

 

「覚醒しました。」

「・・・っつ。」


 そうやって居住まいを正した上で、短く発せられた言葉に、お爺様は目を見開き、息を呑んだ。だが余計なことは言わず、その右目がわずかに充血させた。


「・・・嘘ではないようだな。」

「はい。」


 「真贋判定」

 お爺様の持つESPは、物体や会話の真贋を見抜く。商品や書類ならば、それに付随された情報が本当に正しいかを見抜き、会話ならば相手が嘘をついているか、冗談なのかを見ただけで看破する。リンガットがかつて聞いた話では、本来の意図とは異なるものが分かるとのことで、製品や薬品などの効果がカタログスペックと異なるかどうかわかり、会話の場合は相手が嘘をついているかどうかを見抜けるらしい。

 もっとも、お爺様の知識にない物質の真贋はわからないし、話し手が本気で信じていることは嘘と認識できないので、使い勝手はイマイチらしい。 

 だから、僕が嘘をついていないことは伝わっただろう。お爺様はそのまま先を促した。


「発言したのは恐らく「解析」です。詳しくはメンタル診断を受けないと分からないと思いますが、事故の時、周辺の状況や事故の原因について冷静に分析できたのはこのESPのおかげだと思います。」

「なるほどなー。」


 お爺様は複雑そうだった。  

 ESPの覚醒というのは本来喜ばしいものだ。コロニー領主の血を引く僕は、遺伝的な要因によって覚醒しやすい人間だ。だが素養がある人間がすべて覚醒するわけではない。ビックツリー家の親戚筋でも数人程度、本家の血統ではお爺様につづき40年ぶりの覚醒者となる。

 覚醒すること、それ自体が稀有な才能を持つエリートの証明と言える。

 

 だというのにお爺様が複雑なのは、二つの理由からだろう。


 一つは僕がまだ7歳ということだ。一般的にESPの覚醒は15歳から20歳ごろと言われている。それはESPっが脳や感覚機能の発展、延長上にあるものであり、ある程度の知識や訓練の蓄積が覚醒のトリガーとなるからと言われてる。例外として老人や子供が覚醒したり、先天的にESPを取得しているタイプもいたりする。こうした例外は往々にして、数奇な運命をたどる変人が多い。それが知識頼りな「解析」となれば、心配となるだろう。

 ビックツリー家の代々の覚醒者は、お爺様もだけど知識量が精度に直結するESPなことが多く、「解析」をもったご先祖様もいたらしく、それはそれは苦労されたそうだ。それを知っているからこそお爺様は喜びよりも心配が勝るのだろう。


 そして二つ目、こっちは家庭的な事情なんだけど。僕が覚醒しているのに、リンガットの父親が覚醒してなかったことだろう。

 父であるベルベット・ビックツリーは、勤勉な性格であり、ESPの覚醒訓練も熱心だったそうだ。だが、努力したから必ず覚醒するものではない。本来ならばそういうものと割り切れるものだが、彼の生まれたタイミングが悪かった。今は亡きひい御婆様に、お爺様と2代ほど続いて覚醒者がでたことで、周囲と本人の期待が高すぎたのだ。

 20歳を過ぎても覚醒する気配もないベルベットは荒れに荒れた。なまじお爺様が有能であったため、領主としての仕事を任されることもなく、訓練に集中していたが、それも良くなかった。20前後から、己の才能の無さに失望したベルベットは、裏では堕落し、裏町で遊び惚けていたらしい。

 そして、25歳のときに、誰とも知らぬ商売女との間に子どもを作るというスキャンダルを起こした。

 で、生まれたのが僕ことリンガットである。

 最初は父親、母親としてそれなりに愛情をもって、リンガットを育ていた二人だが、もともとが遊びの関係であり、子育てがうまくいくわけなく、僕が3歳の時に、お爺様に押し付けて姿を消したらしい。

 らしい、というのは、リンガットの記憶には、4年前のある日に、母と暮らしていたアパートから突然連れ出され、この家の前に置き去りにされたとあるだけだ。

 お爺様は、次期領主として仕事にでていると嘘をついてくれていてたが、解析によって過去に見聞きした使用人などの会話を精査されたことで、僕は捨てられたという真実を理解できてしまっていた。

 ただ、それが分からないお爺様からすると、一人息子がぐれた原因と、孫の不遇のきっかけとなるESPに複雑な思いがあっても不思議ではないだろう。

 てか、今更だけど、リンガットがくそボンボンになったのってこれが原因じゃないのか?。僕の記憶がない状態で親の不始末と顛末を聞いたら、ショックを受けるだろうし、妙な腫れ物扱いで甘やかされたとか、色々考えられる。あるいは、7歳にしてESPに覚醒した天才としてもてはやされたとか?原作でも「俺は天才なんだぞ。」って言っていたような。

 ともあれ、ESPの覚醒という本来ならば祝いたい場面であるが、状況は複雑だ。


「お前が妙に落ち着いているのも。」

「恐らく、客観的に自分の状況を把握できたからだと思います。」

「そうか。」


 その瞳を赤く充血させながら、お爺様は目をそらさなかった。まるで目につく何かを否定したいと言わんばかりの目力だが、これ以上はまずい。


「くくく、この能力が忌々しいと思ったのは初めてだ。」

「お爺様、あまり酷使されるとお体にご負担が。」

「なるほど、そこまでわかるか。」

「はい。」


 お爺様のESPは任意発動が可能だが、眼球と脳神経への負担が大きい。そのために使用には制限があり加齢とともに辛くなってきている。というのは以前教えてもらったことがあるけど、

 すげえな、よくわからないけど、お爺様の能力の制限時間がHPバーみたいなので表示されてる。このわずかな時間に5割ほどになっているのは、それだけ力がこもって言うのか、継続して使用できるものではないということだろうか。お爺様が気を緩めると同時にみるみる回復しているので心配はないが、今後は心労をかけないようにしないとな。


「そうだな、リンガット。あらためて覚醒おめでとう。ESPはなにかと厄介なものではあるが、磨けばお前の人生を豊かにしてくるものだ。精進なさい。」

「はい、ありがとうございます。」


 優しいいつものお爺様の顔になった。どうやら目的は達成できそうだ。


「それで、お前はこれからどうしたい。」

「僕のESPは、知識を蓄えれば蓄えるほど、できることが増えます。なのでいろんなことを学びたいと思います。」

「そうか、無理はするなよ。ESPがあるからと言って、私の孫だからといって義務があるわけではない。」


 その言葉はどこか投げやりだった。きっと今はどこぞのコロニーで自堕落に生きているであろう父、ベルベットを思っての言葉なのだろう


 あえて何も言わずに僕はうなづくだけにした。。


 お爺様の無念は分かると言えばわかる。

 父であるベルベットの気持ちも分かると言えばわかる。

 僕がただのリンガットだったなら、そういった事情によって歪んでいたかもしれない。

 

 でも僕という前世日本人な意識と記憶がそれらに対しての思いを冷めさせた。

 

 いやだってさあ。リンガットにとってベルベットってたまに来る男の人って感じだったのよ。3歳のときの人の識別なんて曖昧じゃん。むしろ母親と離されたことの方がショックだったみたいだったようだ。それでも、母親は不在なことも多かったようで、3歳までの記憶はものすごく希薄だ。むしろ引き取られてからの4年間の生活の方が濃厚なまである。

 その上で、自分の未来と客観的な視点による分析が加わると、両親なんかどうでもいいである。


「お爺様、コロニー運営の資料や図書室の閲覧の許可をください。」

「かまわん。好きにしなさい。適当に人をつける。」

「ありがとうございます。」


 そして、この放任、いや白紙委任状か?

 愛情はあっても、孫とどう接したらいいかお爺様も未だに掴みかけているらしい。まあ僕としては、のびのびと情報収集ができる環境をゲットできてラッキーなので、これ以上は求めない。


 その後、僕の覚醒は正式に発表され、そのどさくさに紛れて事故の事実と関係者への追求はなくなった。まあ、お爺様が気を利かせてくれたのもあると思う。

 なんだかんだ、孫に甘いお爺様だ。

なんだかんだ、悪役にもバックボーンがあるという設定、嫌いじゃないけど、吹き飛ばしたくなる。

それはさておき、長い設定的なお話はここまで、次回からは本格的に知識チートしていきます。

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