EX4 とある商人の決意
原作の一場面
ミスターグラーヴマンの視点です。
正史アフタースペース300年 ギャラクシー スラム街の一角にて
俺は自分が善人だとは思っていない。この地位を手に入れるまでは金儲けのために人様を不幸にするような汚い仕事もしたし、商売敵を蹴落とすために賄賂や工作だってしてきた。きれいごとだけでは世の中は回っていかない。ギャラクシーに生きる人間なら子供だって知っていることだ。
それでもやってはいけないこと、超えてはいけない一線というものがある。例えば、子どもに武器を与えることだ。これは周り回って集団を崩壊させかねない。
最近の宇宙がまさにそれだ。ミキサーだかスピーカーだか知らないが、二足歩行ロボットなんてものが出回ってからかなり物騒になった。もともとはコロニー外壁での作業用だったはずなのに、ちょっと改造してドリルやらハンマーやらをもたせたら、簡単に船を破壊できるようになる上に、小回りが利くので逃げるのも容易い。何がひどいって手持ちの装備を捨てれば他のロボットに紛れ込めることだ。足がつきそうなら、ばらして、組み立て直せば証拠も消せる。
そのメリットに最初に気づいたのは宙賊だった。単機でも戦力になる上に、強奪した船をその場でバラすこともできる。宙賊にとって、これ以上に彼らのニーズを満たすはなかったわけだ。対抗するためにシップメーカーをはじめとした企業やコロニーのお偉いさんたちもロボットを揃えだすから、販売元はウハウハだ。降ってわいた特需にロボットやそのパーツを取り扱う商人も増えた。
こうして、急速に広がったロボットだが、一つだけボトルネックがあった。パイロットの問題だ。汎用性の高さに比例してその操作は複雑であり、従来の作業機械とは勝手が違ったのだ。そこで多くの企業が訓練所やシミュレーターを各地に設置して、その操作のノウハウを収集した。結果として操縦するためのOSやマニュアルはアップデートされたのだが、操作感の違いは無視できず、熟練の船乗りたちからは敬遠されるようになった。この恩恵は、船に慣れていない若者の方が大きく、若い世代ほどロボットの操縦がうまいなんてこともあった。
となるとどうなるかはわかるか。それぞれの組織が青田買いに走ったのだ。市民や軍属で適正のある人間はパイロットとして企業や軍にスカウトされて教育された。これはまだいい。新たな職種が生まれただけで、経済が活性化した。問題は宙賊や非合法な組織の連中だ。奴らはパイロットを確保するためにスラムや難民の子供からめぼしい人間を見出して、実戦で教育したのだ。世間知らずの若者を言葉巧みにロボットに乗せ、シミュレーションだとかゲームと言って仕事をさせる。ゲーム感覚で参加した若者が事実を知るのは仕事が終わった後だ。まあ、スカウトされる側も、くすぶっていた連中だ、その状況を歓迎して、そのまま仲間入りしていくやつがほとんどだった。そしてその多くが、エースだ、ホープだともてはやされて、更なる深みへとはまっていく。
こうして、気づけばロボットによる戦場の大半は若者がいるのが当たり前になった。
「しかし、ひどい闘いだな。まるで子供の喧嘩だ。」
「そうですな、あのボンボン、予想以上にば、ぐえ。」
「きたねえ口を開くな。」
つい先日起こったビックツリーでの大規模戦闘の記録を見ていた俺は、横から口を挟んだ部下を拳で黙らせた。八つ当たりな部分もあったことは正直に認める。俺はイラついてた。
「ガキを戦場に立たせるなっての。」
ビックツリーの現領主がクソボンボンというのは周知の事実だ。だが、それを理由に今回の結果を楽観している部下たちも、そこをついて勝利したクーデター軍も大事なことを見誤っている。
聞けばリンガット・ビックツリーはまだ17歳だったというし、クーデター軍の旗頭になっているビックオーシャンの姫さんも19歳の小娘だという。
この厳しい宇宙で生きていくため、人類は旧時代に比べて成長が早くなったとは言われている。しかしその精神までは違う。俺が彼らぐらいのころは、運送船のパイロットをやっと任せてもらえたぐらいだった。任された仕事を無難にこなすのが必死で、周囲に助けてもらっていた頃だ。
そんな若造を領主だ姫だと煽てて調子に乗らせて、責任を押し付けたんだ。おまけにビックツリー側は、途中から逃亡者が大半だったという。ここぞとばかりに自分たちの責任を死んだ領主様に押し付けたんだろうな。
こんな醜悪な結果になるのも無理はない話だ。もっと早くあの坊ちゃんを諫めたりなだめたりして、マナーや常識を教えていれば避けれたんじゃないだろうか。暴君だとか、クソボンボンと言われていたが、そうなる前に先代の前のように隠居させることだってできただろうに。
まあ、これは俺が部外者だからこそ言える意見だ。それに今更どうしようもない。
「ボス、ホープから通達が。」
「かあー、めんどくせー。ビックツリーの次がうちってことか。」
理性と秩序のため。宙賊および、世を乱す蛮族の討伐に協力されたし。
別の部下が慌てて持ち込んできた情報。それはギャラクシーの顔役たちに送られたホープからの協力要請だった。ビックツリーという楔がなくなり、勢力を拡大させたクーデター軍が隣接しているギャラクシーを仲間に引き入れることを見越して、先手を取ってきたのだろう。
ギャラクシーはこの戦争では中立の姿勢を示している。というか、ごった煮にすぎて意見をまとめられるやつがいないのだ。国際法というもはや紙切れ以下の約束事のおかげでコロニー周囲での戦闘は禁止となっているが、ホープの戦力が本気になったらそんなもの関係なく制圧されるだろう。それならば、クーデター軍と戦おう、そう言うやつが騒ぎ出したタイミングで広まったのがビックツリーでの戦闘データーだ。実行した姫さんは、正義と希望が残っていると訴えているが、やっていることは脅しだ。
いけ好かない統一思想を持ったホープに尻尾をふって、化物みたいなロボットたちと戦うか。
現状維持とか平和を謳うクーデター軍に協力するフリをして、ホープの大船団から逃げ惑うか。
ギャラクシーの住人達は、今、その2択を強いられている。二つの勢力の衝突はもはや避けられない。その中間点にあるギャラクシーが無事で済むわけがない。どちらにしろ俺たちのような脛に傷のある連中の居場所はなくなるだろう。より生き残る可能性が高い方に賭けるため、誰もが必死に情報を集めて知恵を絞っている。俺と俺の部方たちも同じである。が、一つ違うことがある。
「ど、どうしやすか。」
「そんなもん、決まってんだろうか。」
不本意ながら、俺ことミスターグラーヴマンには面子も意地もある。それを曲げて利益を取れるほど若くもない。
「うちを舐め腐ったアーテムとアルのくそ野郎をぶっ殺す。」
今やクーデター軍の英雄ともてはやされているアーテムとかいう、クソ戦艦とその艦長を名乗るアルとかいうクソ野郎。やつらはさんざんうちの縄張りを荒らしまわったんだ。その落とし前はつけないとならない。
「は、ですよね。クーデター軍もホープも嫌いですが。アーテムは許せないっす。」
「そうだ、兄貴の船を落としたあれを落とさないと腹の虫がおさまらない。」
俺の決断に部下たちはいきり立った。それはそうだろう、現場で煮え湯を飲まされていたのはこいつらだからな。仮に俺がクーデター軍に協力するといってもやつらは納得しなかっただろう。人間最後の決め手となるのは、利益とかメリットじゃなくて感情だ。それも怨みつらみだ。
やられたらやり返す。そう言う意味では、俺もリンガットも変わらない。
「いくぞ、お前ら、のこのことやってくるであろう、あのくそ船は俺たちで落とす。」
「「「おおおお。」」」
勝算は正直わからない。だが、数だけの烏合の衆だったとはいえ、ビックツリーの艦隊を潰した連中だ。盛り上がる連中を見ながら俺は冷静に戦略を練るのだった。
少なくともリンガットのように油断と慢心はしない。そう誓いながら。
原作では、少しだけリンガットに同情していたミスターグラーヴマンでした。
また、ロボットの復旧の流れに乗り遅れており、組織の運営のために宙賊としても活動してたのですが、そこをアーテムに乗る主人公たちに荒らされたので、その恨みから主人公たちと敵対しています。
感想でご指摘いただいたので補足
【タイトルと原作の「ハーモーニー」について】、
「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。
「軌道戦器ハーモーニーサウンド」
「ハーモニー」でなく、「ハーモーニー」なのは意図的です。
本作の各キャラクターやロボットの名称は音楽用語をもじったものが多いですが、タイトルがまさにそれです。
次章に向けてプロト整理のために少し時間をいただきます。次回は7月1日か、2日を予定しています。




