表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタスペース294 リンガット11歳

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/71

41 アフタスペース294 クソボンボンは趣味に全振りします。

 前回と同様、強奪事件とその後の話です。

 カリカリのパン生地にのった、とろけて伸びるチーズはトマトとよく合う。程よい酸味とトマトの旨味はそれだけでもごちそうだ。そこに新鮮な輪切りトマトと薄切りしたベーコンとジャガイモが食べ応えを与えつつも噛むごとに素材の味を感じられる。程よく火が通ったローストビーフや焼き鳥もとろけるほどにやわらかくうまい。調理技術もさることながら、素材の質が段違いである。


「こればかりは、ビックツリーに生まれてよかったと心底思うよ。」

「ふふふ、リンガット様の働きがあってこそですよ。」

「ありがとね、スーザン。」

 

 微笑みながら給仕するスーザンにお礼を言いつつ、豪華な料理に舌鼓を打つ、気分は王様だ。 

 そんなわけで、次期領主としての箔をつけるために高級料理店を貸し切ってモグモグしています。旧時代の調理法を代々引き継いでいるこの店の一番人気は、窯焼きのピザやパンと炭火焼きに肉料理の新鮮なサラダだ。見た目は素朴ながらもどれも美味しい。オプションでBBQや焼き肉もできるそうだ。

 コロニーでもトップクラスの高級店で予約は必須だけど「わがまま」でねじ込んでみました。いや、冗談ですよ、急なキャンセルがあったから、向こうからお誘いがあったんだよ、ほんとだよ。

 それにこれは立派な仕事だ。

 領主というのコロニーの支配者であり、顔だ。そのふるまいや言動の一つ一つが注目され、評価を受ける。だからこそ、領主やその関係者にはある種の風格という者が求めれる。優秀でも常に忙しそうにしていては、仕える側や取引相手としては心配になるし、敵対する側としては隙があると思われるからだ。

そういう点でおいてお爺様は伝統派で厳格そのもの、人前では常に堂々としているし、判断に迷いがない、即断即決、公明正大、まさしく理想の領主という奴だ。

 一方で、厳しいばかりでは人はついてこない。実の孫である俺ですら、冗談とか通じないし、失敗したら怒られるんじゃないかとびくびくしてしまうのだから、他人から見たらお察しというわけだ。上司が真面目で厳しすぎると仕事は捗る、だが、楽しくはない。ミスや失敗を恐れ、ひどいときは隠そうとしてしまう。真面目な人間のもとにいる真面目な人間ほどそういうミスが多かったりもする。

 俺が子供っぽく、いや年相応に振舞っているのにはそういったお爺様の欠点をカバーする意図もある。仕事はこなしつつ、「わがまま」を言ったり、各地へ「遊び」へ行くことで、色んな人と交流して人脈を作る。時にはお爺様に怒られたりしながらも忙しい日々だ。おかげで優秀ながらもユーモアの分かる優しい次期領主とコロニーの人達からは評価を受けている。いや、もしかすると最近のお爺様が特に厳しかったのは、この評価を確立させるものだったのかもしれない。


「だから、こうして、高級なお料理を楽しむのも仕事なんですよ。」

「ははは、食事1つも気を使わなければならないとは、領主というのも大変ですな。」

「まだ、次期領主だけどね。」


 食事の相手は、ヨハン博士。普段は研究ばかりでぼさぼさな恰好をしているけど、高級店ということで身だし並みを整え、スーツでばっちり決めてもらっている。こうして食事を共にするのは初めてだけど、堂々としているというか、物怖じしていない。値段を見ないで次々に料理や酒を注文してはバクバクと食べている。その一口、一口がどれほどのお値段か考えたらもう少し味わってほしいところだけど、先日の一件でお世話になったお礼なので、俺も何も言わない。

 それもそのはず、今回の食事会は先日の宙賊討伐の慰労会なのだ。俺の迂闊さと不運によって迷惑をかけてしまった博士や部下たちを招待して、食事を楽しんでもらっている。

 もっとも、ここにいるのは、僕とスーザンと博士のみだ。ゴゲン艦長などの軍関係者やジルオールなどの部下たちには、別室でBBQを楽しんでもらっている。堅苦しいのが苦手な人も多いからね、お金だけだしてお店の人に丸投げしました。

 お金はかかったが、みんながみんな満足そうで、俺は満足である。


「全く今回は大変だったね。」

「いやはや、宙賊というのは厄介ですな。人の努力というものを理解せず、その上前だけを奪い取ろうとする、クズそのものですぞ。」

「それな。」


 しみじみと思う。今回の宙賊の一件は予想外な上に、めちゃくちゃ大変だった。

 ゲザウザとグラーヴマン向けに送り出した、販売用のミキサーと開発データーを搭載させた第一便。厳重に警備された貨物が宙賊に襲われるとは思わなかった。いや、襲われる可能性は少しだけ考慮していた。問題は運送業者の対応だ。

 あろうことか、業者は貨物を切り離して即逃げを決め込んだのだ。

 確かに緊急時の対応として、新型のジョイント部分は即時切り離せるシステムは説明していたが、宙賊

を補足するやいなや、通報もしないで逃げ出したのである。

 安全を最優先に行動した。といえば聞こえはいい。しかし、周辺の救助要請や自衛という手段を一切取らずに逃げ出し、貨物が奪われる様子を中継しながら通報したというのだから、報告を聞いたときは耳を疑った。しかも、運送業者は正規の手順として、距離的に近かったギャラクシーに連絡をし、出荷元であるビックツリーには連絡をしなかったのだ。その後も、色々と段取りが悪く、俺のもとに情報が届いたときには宙賊は逃げ出し、その行方は怪しいものとなってしまった。

 なにか作為的なものを感じた。だが、のちのち調査していくと、手続きそのものには何の不備もなかった。貨物そのものはゲザウザに販売済みのものであり、運送業者もビックツリーが雇ったものではない。襲撃があったエリアもギャラクシーよりであり、国際法に従ってギャラクシーとゲザウザへと連絡がはいった。礼儀、いやマナーとしてこちらに連絡があってもいいはずなのだが、誰かが連絡しただろうという、いわゆる火災現場の救急車のような状態になっていたらしい。ふざけんな!

 宙賊の襲撃で、貨物が強奪されたと聞いたときは、気が狂うかと思うほどの怒りを覚えた。犯人を八つ裂きにしてやろうかと思った。だが、俺に連絡が来た時点で割と手遅れだったことと原作での知識が俺を冷静にさせた。

 思えば原作の始まりはテロ事件のどさくさにまぎれた最新ロボットの強奪だ。肝いりの新兵器を奪われたことに怒り狂ったリンガットは主人公たちの持ちだした戦艦アーテムを執拗に追撃させ、毎週のように返り討ちあったことで、その戦力と人望を低下させた。一方で主人公たちは戦闘経験を重ね、各地に味方を作って戦力を増強させていった。その先に待っていたのが中盤の決戦であり、リンガットの破滅だ。


「これは、もうだめだね。諦めよう。」


 情報を精査していた俺の言葉に、部下たちが驚いたのちょっと面白かった。

 でも、考え方を変えたら冷静になれた。そう、別に奪われちゃってもいいやってね。

 そうなると、後は簡単だった。ギャラクシーから出航していく舟の流れを解析すれば、宙賊の住処はすぐにわかった。追撃は、うち以上に面子を傷つけられたゲザウザやグラーヴマンにその情報を流したら、喜々して行った。遅ればせながら派遣したうちの艦隊もいい仕事をしてくれたらしく、挟み撃ちの共同戦線によってビックツリーとギャラクシーの間にあった宙賊の拠点はその悉くがデブリとなった。根絶は出来なかったが、しばらくは安全が確保されたと思う。

 ゲザウザとグラーヴマンには謝礼と保証という形で、注文よりも多めにミキサーを卸すことで話がついた。貨物を捨てて逃げた運送会社は、支援という名目で買収して、関係者と経営陣を入れ替えてあげた。

 そこそこの出費であったけど、宙賊の拠点に隠されていた資源や鹵獲品のおかげで儲けていたので損はない。何より、今後ウチに対してなめた態度を取ったらどうなるか、内外に示すことができたのだ。

 一部の報道では、宙賊討伐の英雄とか、身銭を切って被害者を支援した聖人とか騒いでいたけど、すぐにおさまるだろう。あって損な評判でもないしね。


「それに、宙賊に奪われたミキサーも型番があるので、市場に出回ればすぐにわかることでしょう。」

「そうだね、そことは仲良くしたい。」

「悪い人ですなー。」


 商品の発信機や型番をつけるのは当然だろ。それこそ生産者にしかわからない場所と方法につけてあるので、模造品や非正規品はすぐに見分けられる。それでいて、テストで見せたようなトンデモ起動や火器の使用を制限する安全装置もつけてある。解除コードを別売りすれば、それでも儲かるだろう。

 

「結果オーライってことでいいのかな?」

「ええ、これでミキサーの価値は宇宙全体に周知されることでしょうな。」


 この秘密を知っているのは俺とスーザン、そして実際に作業してくれたヨハン博士だけだ。保証分の生産も含めて、博士にはかなり無理をいったが、こうして食事をしているぐらいには元気そうなのでよしだ。研究成果を放出することに関してヨハン博士はノリノリだった。


「個としての研究では進化は生まれませんからな。致し方ありませんな。」


 彼からすれば、労せずして、他のコロニーや他企業が開発を進めてくれるのだから願ったり叶ったりだそうだ。先に述べた安全装置や基本設計をこちらが握っている限り、彼らにできることはオプションの開発が精々。その間に、博士はロボットの研究に集中できる。


「何事も捉え方次第ですぞ。我々の目的はロボットの開発と進化でしょ。」

「そうだったね。」


 たしかにそうだ。破滅の運命から逃れるなら、ゼーレやホープに尻尾を振って引き篭もっていればいい。それを選ばなかったのは、デイープベースやその進化の先を目にするためだ。

 博士との会話でその目的を思い出した俺は、一先ずはこの状況を受け入れることができた。

 ジルオールや領軍の人たちには申し訳ないけど、今回の強奪事件のおかげで、サンブラーや二足歩行ロボットの基礎技術の研究はより一層発展していくだろう。


 とか思ってないとやってられない。

 今回の宙賊の襲撃とその後の流れはあまりにうまく行きすぎた。恐らくは、あのさわやか腹グロマッチョか、ミスターグラーヴマン、大穴でゲザウザの狸オヤジが裏であれこれ仕掛けていたに違いない。それこそ、そこを追求して、どんなトラブルと遭遇するか考えるだけで震えが止まらない。

 人間万事塞翁が馬。長い物には巻かれよ。

 何か巨大な陰謀が動いているような気がしないでもないが、俺がしたいのは趣味に全振りしてロボット開発を進めることだ。そういう闘争はしたい人に勝手にやってもらえばいい。

 

「で、リンガット様、次の構想なんですがな。」

「いいね、今度はロボット同士の連携システムとかどうです?」

「ほほう、面白い。機械の強みというやつですな。」


 ロボット好きな2人の会話は、有意義でとても盛り上がった。近くにいたスーザンが若干呆れていたような気もするけれど、しょうがない。男の子の趣味は、女子には理解されないものだから。



リンガット「きっとゼーレのシナリオに違いない。」

ゼーレ  「リンガットの企みはすばらしいな。」

ミスターグラ―ヴマン「リンガットってのは悪人だな。」

宙賊   「はめられた、リンガット怖い。」

ヨハン博士「リンガット様のおかげで研究が進みました。」

領軍   「損をしても、コロニーや船乗りの安全を思う。リンガット様の期待を裏切るな。」


 周囲の評価に全く気付いてないリンガット様でした。

 次回はEX回。そのあとはまた時間が進みます。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
それもこれもすべてリンガットってやつの仕業なんだ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ