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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース293 リンガット10歳

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29 アフタスペース293  争いは避けられないそうです。

 色々不穏な気配です。

 突然起きたリンガット様襲撃事件。一歩間違えば大惨事となりかねない一件だったけど、スーザンや優秀な部下たちの活躍のおかげで秘密裏に処理することができた。表向きには爆発事故と重機の暴走と報道され、残骸と残兵は回収されてリサイクルへ、アニモは五体満足でホテルに送り届けることができた。

 が、それで終わるわけにもいかない。どこかにまだ不穏分子が隠れている可能性がある以上、視察は即刻中止となった。ゼーレたちは夜のうちにホワイトランスへと戻り、翌日には出発することになった。

 目立った被害こそなかったが、この情勢下で取り締まりと歓待を同時にするのはお互いに負担がかかるからね。


「この度は、こちらの不手際で本当に申し訳ない。」

「構わない。昨日だけでも充分な成果があった。それにお土産もたくさん用意してくれたじゃないか。兵たちも喜んでいる。」


 お詫びも兼ねて食料などのお土産は奮発したせいか、ゼーレたちは残念に思いつつも、反対はしなかった。主であるゼーレの安全の確保は最優先事項であり、ホワイトランスはいつでも出発できるように準備されていた。ホープ側からすると、仕事が短くなった上にタダで貴重な物資をもらえたという棚ぼた展開とも言える。本来なら財布が軽くなるのは向こうだったはずだったが、物資だけ持っていかれた結果となり、こっちは大赤字である。


「ともあれ、残念なのも事実だ。まだまだビックツリーで学びたいことが多かった。リンガットとは、今後も良き付き合いをしていきたいものだ。」

「そうですか。」

「動じないか・・・。リンガット、やはり君は素晴らしいな。君のように優秀な人間がいるならば、ビックツリーは安泰だ。また会おう。」


 素晴らしいに、優秀ね。

 別れの間際、ゼーレはキラキラと輝くさわやかな笑顔でそう言い残した。ゴキゲンで去ってもらって結構だが、ホテルに帰ってから別れる瞬間まで、襲われた当事者である俺やアニモへの気遣いはなかった。あの程度のトラブルは乗り越えて当然という評価をもらったのだと思っておこう。

 まあ、今回のトラブルのおかげで面倒な接待が短くなって嬉しかったのはこちらもなので、どっちもどっちと言える。

 

「やっぱり、安全と平和が一番だよねー。」

「全くです。」

「こういう心臓に悪い仕事はちょっと困りますねー。」


 去り行くホワイトランスをラウンジから見送り終えた後。温かいお茶を飲みながら僕がそんなことをつぶやくと、スーザンたちに同意された。なんだかんだこの3人でまったりするのも久しぶりだ。


「スーザンのおかげで助かったよ。アニモにケガはなかったし、下手人も生け捕りにできた。」

「おほめに授かり光栄です。尋問も滞りなく行われているので、首謀者もいずれ判明することでしょう。」

「スラムの協力もあって、不穏分子の排除もすぐに終わりそうですよ。」

「だといいねー。」


 願いを込めてそう答えたけど、これで解決なんてことは、まったく期待していない。

 今回の件ではっきりしたことだけど、リンガットには敵が多すぎる。

 どこぞに雲隠れしたくそダディーとその手勢は、未だに僕やお爺様に懐疑的で反抗的だ。彼らがこっそり(と本人たちは思ってる)と手引きしているせいで、うちの警備には穴がある。

 スラムの改革で職にあぶれた連中の逆恨みもメンドクサイ。数こそ少ないけど、その職種のせいで危ない組織とのつながりがあるので油断はできない。

 最近は他のコロニーから侵入してきた不審者も目撃されている。サイト40で上がった収益やスペースアント関連の鉱物資源や新技術を狙ったスパイ。なんだかんだお金の気配がする場所には色んな人が湧くものだ。

 それらを踏まえて、あの襲撃は謎が多い。

 まず、僕とアニモの行動は完全にイレギュラーな思い付きだったのに、襲撃者たちはやけに手際が良かった。スラムで騒ぎを起こした人達の身元はよそからの流れ者らしいけど、その装備は結構な高級品だったらしい。おそらくは、彼らが騒ぎを起こした隙に襲撃という計画だったのだろうけど、それだとあまりにもお粗末な計画だった。だと言うのに、爆発を起こした襲撃犯たちは、その手際の良さからきっとどこかの組織の専門家だと思われる。そのわりに軽率な行動だったのは、うちを侮っていたからだろうか?

 そして、あの重機たちだ。ぱっと調べた限り盗まれた重機は確認できず、今回の訪問の準備のドタバタしているときにこっそり持ち込まれたものと判明している。アルさんの推測通り、見た目は普通の重機だったけど、制御するパソコンやセンサーはハイグレード品で、襲撃目的で用意されたものだけは、はっきりしている。これらの重機がピンポイントで僕たちの下に送り込まれたのだ。

 改めて考えると、あの場所が特定された理由だけが分からない。

 最初の襲撃は分かる。僕とアニモの行動は別に隠していたわけじゃない。ホテルにいた人間が情報を漏らせば僕たちを襲撃することは可能だ。物資の出入りも、最近の忙しさで有耶無耶な部分を通せば誰でもできる。だが、スーザンが身体を張って逃がしてくれたシェルターの場所だけは違う。逃げ込むタイミングは完璧だったし、すぐに移動したので僕以外は正確な座標は誰も知らなかったはずだ。カウントに連絡を取ったのだって、重機の存在に気づいてからだから、裏切りや監視によ場所が割れたの可能性はほぼ0だ。

 それでもピンポイントに重機を送り込めたとしたら、首謀者が僕の性格やシェルターの性能を正しく理解し、移動ユニットの動きからこちらの行動を予想するしかない。

 それができるのはこの宇宙広しといえど、1人しか思いつかない。


「ゼーレの仕業だったりして。」

「さすがにそれは・・・、ジルオールにも観察させていたんですよね。」

「うん、だから冗談だよ。そうでなくてもあの御人がそんなことをするメリットがない。」

「はい、アニモ様も最初は懐疑的でしたが、別れ際にはかなり友好的でした。」


 視察中、ジルオールに頼んでゼーレとアニモの兄弟の様子を観察してもらっていた。彼のESP「感情看破」は見ただけで相手の感情を読み取る優れものだ。その報告を聞く限り、2人からはこちらに対して好意的な感情が向けられていた。ただ、彼のESPは表面的感情しかわからない。そういう目で見られていると気づいて取り繕うことはできるし、心底そう思っていた場合は、ジルオールにもその感情は見抜けない。

 だからこそ思う。もしもゼーレが黒幕で、悪意もなくこれらの行動を当然のことと思って計画していたのなら、今回の襲撃はすべて納得ができてしまうと。アレの持つESPはそういう性質を持っている。


「まあ、しばらくはコロニー内の掃除だね。幸いなことにスラムの人達も協力的だから、これを機会に怖い人達は一斉に取り締まろう。」

「「お任せください。」」

 

 けれど、それを誰かに相談することはできない。スーザンとジルオールという一番信頼できる2人に冗談半分で可能性を示唆するのが精々だ。本来、ESPは切り札となるカードである、僕やお爺様のようにあえて公開していない限りは、お互いに踏み込まないことがマナーだ。僕がゼーレを含めた主要人物のESPを知っているなんて事実はまだ隠しておく必要がある。

 そもそも、ゼーレが関与している根拠も証拠も何もない。もしかしたら僕の被害妄想なだけかもしれない。そんなわけで、本命の可能性は口にせず、細々した処理は部下に任せて僕は屋敷へと戻った。流石に疲れたので今日はもうお休みにすると宣言してあるので、邪魔も入らない。


「でも、あのセリフ。間違いなくゼーレの仕業なんだよな?」

「問。何を悩んでいる。」

「ははは、メトル、これは勘という根拠のないものだよ。人間特有の感覚だよ。」

「疑問。ならばなぜ口にしない。」

「口にしたら、ホントになりそうだからだよ。」


 しれっといるメトルにちょっとだけ愚痴った。彼女は口が堅いので、心情を吐露しても心配はない。彼女がいなければ僕はとっくにつぶれていただろう。

 もしかしなくてもゼーレは僕を敵とみなしているのかもしれない。襲撃以外、いや襲撃も含めて完璧な接待をしたし、相手の態度も良好だった。今後のホープとビックツリーの関係が良好だろう。と誰もが思うほど親善訪問は大成功だった。現時点で、両者が敵対するの可能性は僕の妄想でしかない。

 だが、僕が妄想する通り、ゼーレが黒幕だとしたら、最悪だ。

 原作では、ホープに尻尾を振ってその傘下に入っていたリンガットとビックツリーだったけど、俺にその予定はない。だとすると数年後の戦争ではホープとビックツリーは敵対する可能性がある。

 僕はそれを甘く見ていたかもしれない。いや認識が甘かった。

 実際に遭遇したからこそわかるが、ホープの力は絶大だ。原作云々言う前に敵対したら未来がない。

 例えば、武力。ホワイトランス級が一機あるだけで、ほとんどのコロニーは抵抗もできずに制圧されるだろう。サンブラーやフォルテシリーズなどの原作兵器が出揃った終盤であっても、主人公サイドの勝利は奇跡に近いものだった。しかもそれは、原作ではリンガットを筆頭に各地のボスが手柄欲しさに暴走したせいで、戦力の逐次投入という愚策になったからこそ、なんとかなったものだ。ちょっとした掛け違いでホープ陣営の勝利になっていたという考察は数多ある。

 例えば、政治力。今回の一件は、ホープに借りを作った上に、ビックツリーの信用を落とす結果となった。襲撃の犯人はどうこうという問題ではない、他のコロニーのVIPが訪問したタイミングで事件が起き、しかも関係者を巻き込んでしまった。これは政治的な疵となる。今回は友好的に終わったけど、今後何かあったとき、この疵がどんな影響を与えるか想像するだけで頭が痛い問題だ。だというのにホープ側には何一つダメージがない。

 例えば、領主の実力差。ゼーレは善良で公平な人間だと思う。原作での数々を所業を知りながらも僕はそう思ってしまった。そう思わせるだけ自信に溢れ輝く存在だった。アレが今回の黒幕だった場合、おそらくはマッチポンプな仕掛けで僕に恩を売ろうとした企みだったのだろう。優秀なESP能力者や護衛という名目の数々の監視をしていたにも関わらず、証拠も残さずこの一件を引き起こした。しかも実の弟であるアニモの身柄もあっさりと賭けてだ。万が一、アニモに何かあっても気にしない、いや、アニモごと俺の身柄をどうこうできていた場合のメリットを彼は選んだのだ。正直、器が違い過ぎて勝てる気がしない。

 ああ、もう最悪だ。

 主人公たちと仲良くなったから破滅は避けれたと思っていたけど、このままではもっと早く、コロニーごと消されてしまうんじゃないか?そんな怖い未来しか想像できない。

 正直、布団をかぶって引きこもりたい。だが、自慢じゃないが、今のビックツリーは俺がいなければ速攻で乗っ取られるだろう。そして、働けば働くほどゼーレが俺を危険視して、潰しにかかる可能性が高くなる。


「君は素晴らしいな。君のように優秀な人間がいるならば、ビックツリーは安泰だ。また会おう。」


 あのセリフは、友好的なものと見せかけて、従わなければ滅ぼすよというゼーレからのメッセージである。かといって従えばどんな無茶ぶりをされるかわかったものじゃない。なにより、原作のシナリオ通りの展開となって破滅フラグが立つかもしれない。従わない場合は、ホワイトランスによる襲撃か、謀略による破滅が待っている。

 どっちを選んでも、未来には苦難しか待ってないじゃないか。

 僕はただ、ロボットに乗りたいだけなのに、どうしてこうなった。

 

色々と気づいてしまったリンガット様の今後の運命はいかに。

EX回を挟んで、次はまた時代が進みます。

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