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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース293 リンガット10歳

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29/42

26 アフタスペース293 命を狙われるのも想定内です。

 VIPのお忍び 何も起きないはずがない。

 アニモが希望した場所は、最初に行った展望台だった。


「夜に見たら、また違ったものが見えると思うんだ。」

「なるほど、僕もこのタイミングで行ったことはないなー。」

 

 わざわざ見に行くものではない。だが、夜の森はなかなかに見応えがあった。

 宇宙に浮かぶコロニーに昼夜の概念ない。光源の調整とシャッターによって昼間と夜で明暗が分けられているだけだ。コロニーによっては、常に明るいなんてこともあるが、植物の健やかな成長のためにビックツリーでは適切な時間に夜が作られている。

 

「静かだ。」

「そうだね。」


 展望台から見える森林に光源はなく、ぽつりぽつりとある建物も夜は消灯している。視覚的な影響もあるからか、まるで時間が止まっているかのような錯覚を覚える。


「だが、不思議と音が聞こえる。これは木の呼吸なのか?」

「そうかもしれないねー。」


 実際は違う。夜の森というのは恐ろしく静かで冷たい。だからこそ、風音や衣擦れなどの音が響き、それが木の呼吸のように感じるのだ。

 アニモの夢を壊さないために指摘はしないけどね。


「ホープは効率優先でほとんどが昼なんだ。寝るときは個室を暗くすればいいし、どのシステムもシフトを調整して24時間体制で動いている。」

「それは便利そうだねー。うちは緊急時以外は夜になると役所だって閉まるよ。」

「だから、夜はのんびりというのは新鮮なんだ。」

「へー。」


 確かに、原作でも一部のコロニーはシャカリキに動いてたっけ?

 ビックツリーが牧歌的で地球に似たコロニーだったのに対して、ホープはビルが立ち並ぶ中を移動ユニットが縦横無尽に走り回る都会って感じだった。公園などはあったし、観葉植物などもあったけど、常に夕方のようなオレンジ色で、ここみたいな光景はなかった。

 なるほど、言われてみれば、これってすごく贅沢な時間じゃないか? うん、商売になるな。


「やっぱり、違う視点ってのは面白いね。」

「どういうことだ?」

「だってそうじゃないか、アニモが夜の展望台を見たいと言ってくれたからこそ、僕はこの景色を見ることができた。ここのシステムは既に完成されているから、君がいなかったら、夜にここに来ることはなかった。おかげで気づけたけど、この景色は観光資源として有益だと思う。」


 ナイトサファリみたいなツアーを組めば人気がでるだろう。昼間とは違う光景は、一見の価値がある。壁面に星を映してプラネタリウムみたいにしてもいいかもしれない。娯楽の少ないビックツリーの住民にとっても新鮮なものとなるだろう。観光客受けもよさそうだ。お手軽に旧時代の環境を体験してデトックスみたいな?


「すごいな、なぜ、そんなにすぐ思いつく?」

「たまたまだよ。それにきっかけは君だよ、アニモ。協力者の名前に君の名前を載せたいぐらいだ。」

「俺は、思い付きでわがままを言っただけだぞ。」

「その思い付きが大事なんだって、人が気づけないことに気づけたことに価値があるって、ゼーレ様だって言ってたじゃないか。要は、思い付きを行動に移すかどうかでしょ?言うだけならタダだけど、言葉にしないと無価値じゃないか。」

「・・・確かに。」

 

 そんな商売の可能性を語ったら、なんかすごく感心された。まあ、前世、もといなぜか付随している日本人な知識と価値観のおかげなので俺としては誇れないんだけど。

 そんなことよりも、自分の言葉がきっかけで大きな商売が始まろうとしていることにアニモは驚き、そしてちょっと喜んでいるようだった。


「俺、もう少し頑張ってみる。兄上とは違う視点ででホープと各コロニーの関係を築けるように頑張る。」


 視察の時間はわずかだし、交わした言葉は少ない。だというのにアニモの顔はずいぶんとすっきりとしたものだった。どうやら、何かを掴んで自信を持てたらしい。


「そうだね、応援してるよ。少なくとも、君とはいい友人になれそうだ。」

「・・・ありがとう。」


 ぜひとも頑張って欲しい。そして、ゆくゆくは、アニモにはゼーレの勢いに負けずに意見を言えるようになって欲しい。そうすれば、あの悲劇的なコロニー戦争は避けられるかもしれない。いや、無理か?

 そんなことを思いつつ、延長戦はお開きになり、僕たちはホテルへと帰ることになった。

 

 と思っていたのだが・・・。


 その気配に最初に気づいたのは、スーザンだった。


「リンガット様!」

「うん、なに?」


 彼女にしては珍しい慌てた声に、反射的に腕置きを掴んで身体を固定する。

 直後に急ブレーキによる衝撃が僕らを襲い、追い打ちをかけるように轟音と火柱が上がった。


「あ、あぶねー。」

「襲撃です。」


 だよねー。スーザンが気づいて移動ユニットを止めていなかったら火だるまになっていただろう。森から離れた工場地帯でよかった。いや下手人も森が火事になることを望まなかったのかな?

 

「リンガット様。」

「うんうん、しょうがないねー。」


 爆発には驚いたけど、すぐに冷静になれた。これも次期領主としての教育と訓練のおかげである。多少のトラブルで動じていては為政者は務まらないのだ。


「掘削用の爆薬かな。地雷的な仕掛けじゃないってことは、近くにまだいる?」

「さすがの御慧眼です。」


 いや、解析さんが教えてくれました。火柱の色と音の大きさから、危険な領域が線引きされ、原因と思われる爆薬の種類が表示されている。そして、高確率で人為的な仕掛けであることもわかってしまった。


「え、ええ、リンガット、一体なにが。」

「ごめんね、アニモ。お出かけはここまでみたいだ。」


 爆発に動揺するアニモに朗らかに笑いかけ、僕は端末を操作して緊急連絡の信号を発信する。移動ポットは緊急時に司法関係に通報するシステムがあるのだが、エラーメッセージとともにアラームがなった。


「まあ、当然のように封鎖されてるよねー。」

「だ、大丈夫なのか。」

「問題なし。」

 

 次期領主とホープの関係者が乗っている移動ユニットを襲ったんだ。準備をしてないわけがない。ネットワークの封鎖ぐらいはするだろう。まあ、解析さんとハッキングのテクニックで即座に解除できるから問題はない。数分で警備隊が現着するだろう。


「通報はできたよ。」

「そうですか、では。」

「お願い。危険手当は弾むから。」

「問題ありません、これが私の仕事です。」


 緊急通報を済ませたら、移動用ポットをマニュアル操作に切り替えて運転はスーザンに任せる。そんなことをしている間に、移動用ポッドの周辺には見知らぬ車が数台迫ってきた。ありふれた作業用ポッド、本来は宇宙での作業用だが、コロニー内でも運用が可能な物なもので、別に珍しいものではない。流石に、これだけだと下手人の特定はできないか。


「まさか、テロか?」

「どっちかというと暗殺じゃない?」


 爆発によって交通事故を起こし、同時に周辺の通信を遮断する。事故でターゲットが仕留められたなら、よし。ダメな場合は後続の部隊が追い打ちをする。防衛部隊や司法関係の人間が現場に駆けつけるころには、ターゲットも下手人も残らず爆発の現場だけが残る。

 そんな筋書きだったんだろうか。うん、めっちゃ怖いわー。


「遅いですね。これならこのまま振り切れると思いますが。」

「いや、アニモもいるから最善を尽くしたい。スーザンには悪いけど。」

「構いません、これが私の役目ですから。」

「ありがとう。君がいてくれてホントによかった。」

「過分なお言葉、感謝いたします。」


 いやマジでスーザンがいてくれてよかった。この手の荒事のエキスパートである彼女がいればたいていのことは乗り切れる。そう思えば震える身体を誤魔化して笑みを張り付けるぐらいは僕だってできるってもんだ。後はアニモがいるってのも大きい、ここぞとばかりに虚勢を張らなくては。

 そのまま倉庫街へと移動ユニットは走り、ポッドたちもそれに追いすがる。もはや正体を隠す気はないのだろう、急加速で体当たりを仕掛けたり、爆発物を投げてきたりしたが、そのすべてをスーザンは巧みなドラテクで回避し、なんなら距離を離している。


「リンガット様、今です。」

「OK。君も気を付けてね。怪我とかしたらダメだからね。」

「お気遣いありがとうございます。微力を尽くします。」

「お、おい、何を。」


 ごめん、それに答えている余裕はない。僕はアニモがシートベルトで固定されていることを確認する。注意するまでもなくがっつりシートにしがみついているので大丈夫そうだ。

 そう確信し、僕は端末を操作して、緊急プロトコルを起動した。


 ボッシュ。


 軽い音とともに扉が開き、僕とアニモが座っていたシートは移動用ポットから飛び出た。一瞬の浮遊感のあと、シートはそのまま、近くにあったコンテナへと吸い込まれる。中には落下対策のエアクッションがあり、僕らはケガ1つなく受け止められた。

 これはコロニー内に幾つか用意してある緊急用のシェルターだ。一度逃げ込んで扉を閉めれば、あとは内部からしか開閉できない。食料や簡易トイレも完備された安全な場所だ。

 

「リンガット?」

「静かに。」

 

 遠ざかる車の気配から成功を確信できた。どうやら、下手人は僕とアニモが脱出したことに気づかなかったようだ。さらにスーザンには移動ポッドで爆走してもらって、下手人たちの目を惹きつけてもらえば、より安全に乘り切れるだろう。


「まずは、一安心だね。」

「リンガット、これは?」

「もしもの時の備えだよ。」


 あれだ、将来的な破滅の可能性を考慮して、色々とコロニー内にはこういった避難設備をいくつも作ってある。なんならこのまま宇宙へ逃げ出すことも可能だ。今回はそこまでしないけど。


 まさかほんとに使うことになるとは思ってなかったけど。

 

 備えあれば患いなし。なんだかんだ、破滅が怖いので万が一の備えはたくさんしているリンガットでした。


 いつも誤字報告や感想ありがとうございます。

 設定含めてまだまだ甘いところがあると思いますが、少しでも皆さまに楽しんでいただけるようにがんばっていくので今後もよろしくお願いします。

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