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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース293 リンガット10歳

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22 原作のラスボスはやっぱりラスボス級でした。

 ラスボス(戦艦)と遭遇しました。

 宇宙空間を切り裂く白い槍。

 誰が言ったか知らないけれど、その船とその軌跡にはそう賞賛されているらしい。

 

「あれがホワイトランスか、噂以上の迫力だねー。」

「こちらの監視に気づいた上で、なんのリアクションもありません。どこから見られても、仕掛けられても、困らないといったところでしょう。」

「まあ、起きてるライオンに喧嘩を売る生き物はいないよねー。」

「まさに強者の姿ですね。」


 「ホワイトランス」はホープの所有する巨大戦艦だ。その全長は2000メートル、うちが所有する軍艦の4倍以上のサイズで現時点では宇宙最大で最強の戦艦だ。次期領主の親善訪問とはいえ、まさかあの化物で訪れるとは思ってなかったので報告を受けたときはかなりびっくりした。

 そんなご立派な船が近づいていく様子を見守りながら、僕はスーザンと共に港へと向かっていた。お爺様から接待の役割を任されてから、あれこれと準備をし、今日はいよいよ、ホープ様達がいらっしゃる日だ。


「万が一にもアレとは戦いたくないねー。」

「そうですね、公開されているカタログスペックが半分でも事実なら、うちの防衛部隊はろくに抵抗できずに壊滅するかと。」

「逃げるだけならどうかな?ああ、例えばの話ね。」

「リンガット様、真に恐ろしいのは目と耳のいい獣です。そして目をつけられた獲物にできることは安息な終わりを願うことだけですわ。」


 珍しく冗談のようなことを言うスーザンだけど、彼女は本気だ。侍女であり、優れた戦士でもある彼女の目からしても、あの船は恐ろしいらしく、緊張を隠しきれていない。

 実際ホワイトランスはやばい。

 まずはその質量。全長2000メートルの船は見た目通りに重く頑丈だ。あの鋭い船首がかすっただけでも、コロニーに大穴が空く。それでいて搭載されている特注エンジンとバリアー発生装置の出力は強力無比だ。船体を囲むように展開される楕円形のバリアは隕石の衝突でも揺らがず、無造作に突っ込むだけで小惑星群がバラバラに弾き飛ばされ、他の船が安全に通れる新たな航路が作られる。

 各部に設置された砲台は、それぞれが並みの戦闘艦の主砲のクラスの威力を持ち、一斉に放たれるとまるでライオンの鬣のようにもっさりとしたエネルギーの奔流が生まれ、近づく敵を絡めとる。正面に向けて撃てば、数万キロ先の敵も撃ち抜く命中精度を発揮する。

 5万人近い人員が年単位で軍事活動が可能な設備が内蔵されており、艦載機やドローンの数だけでも並みのコロニーの防衛戦力を上回る。もはや船というよりも動く要塞だ。


(さすがは、ラスボス。レベルが違うわ。)


 はじまりのコロニー「ホープ」。本来ならばコロニー間の争いを諫める立場である彼らが独立を宣言し、周辺のコロニーを侵略したことで、「ハーモーニーサウンド」での戦禍は引き起こされた。

 たった数か月で3つのコロニーを滅ぼし支配下に置くことで、ホープはリーダーから独裁者となったのだ。そして、その蛮行を可能としたのが、ホワイトランスの戦闘力だ。

 圧倒的な戦力であるホワイトランスを筆頭とするホープの艦隊に対して各地のコロニーは対抗する手段は持たず、瞬く間に半数以上のコロニーが支配下に置かれ、恐怖による支配と、理不尽な搾取を受け入れざるえなかった。逆らえば自分たちの足場ごと消されてしまうのだから逆らいようがなかったのだ。

 フォルテシリーズなどの新兵器が登場し、いくつかの奇跡的な勝利によって、徐々に追い詰めらながらも、この戦艦があれば巻き返せると敵味方が思うほどにホワイトランスの戦力は圧倒的だった。

 物語を通して、必死に戦力を削り、物語終盤、主人公たちの命がけの作戦によって、ホワイトランスはやっと撃墜されるのだが、それによってホープ陣営の穏健派との交渉が実現し、原作が区切りとなった。このエピソードから、ファンの間では、ホワイトランスとその艦長はラスボスと呼ばれている。

 いやそんな原作知識関係なく、あんな化け物を見たらラスボスって思うわ。デカすぎんだろ。 


「ああいうのは、好みではないのですか?」

「うーん、流石に持て余すと思う。」

「そうですか、ロボット好きなリンガット様なら、ご所望になるのでないかと思ったのですが。」

「流石に要らないよ。」


 そんな記憶と知識に内心びくびくしながら、港で待っていると、豪華な見た目の小型船が堂々と入港してきた。今更だが、ホワイトランスを収容できるようなキャパシティーのある港は普通のコロニーにはない。なので、コロニー近くに停泊してもらい、乗員たちや物資は、搭載されている小型船でやり取りをするか、チューブのような連絡通路を接続して移動してもらうことになる。

 目の前の小型船は、お偉いさん向けの特別製で、これだけでもコロニー間の移動が可能な上に居住性も高く快適らしい。


『アロー1889420、接岸を確認しました。ようこそ、ビックツリーへ。』


 エアロックが締められ、ドック内に気圧が安定したことを知らせるアナウンスが流れるとゆっくりとハッチが開き、中から護衛と思われる人達がわらわらと出てきて列を作る。

 その列の間をゆっくりと歩いて現れたのは、輝く金色の髪と青い瞳をもった2人の兄弟だった。

 背の高い兄の方は、マッチョマンだ。ガチガチに鍛え上げられた身体は、礼服の上からでも盛り上がった筋肉がわかり、その足取りも力強い。それでもどこかシュっとしていて優雅なのは、生まれもった魅力とここまでの研鑽を感じさせる。

 対して弟の方はまだ若い。兄のようにマナーを意識した丁寧な足取りでありながら、視線はキョロキョロと動き、落ち着きがない。まあ、僕と同い年というのだからあれぐらいが普通だよねって思う。


「ゼーレ・ホープだ。歓迎感謝する。」

「リンガット・ビックツリーです、次代の「ホープ」と直接お会いできて光栄です。」


 その後の対応も見た目通りだった。次期領主として出口で出迎えた僕に対して、兄であるゼーレは丁寧にあいさつをして友好的に握手を求めてくれた。笑みを浮かべる表情は柔らかいけど、視線は真面目なもので僕を子どもと侮っている様子はなく、見た目や年齢で侮らず、対等な相手として扱っていると分かる。

 対して弟の方は、兄と僕が握手をしている様子に驚き棒立ちとなっていた。自分と同い年の子供が出迎えて兄と対等に接していることに驚く気持ちは分かるが、表情がとりつくろえていないのは減点だ。それにそのあともちょっといじけてるのもいただけない。腰に手を当て偉そうな態度で僕の前に立ち、横柄に挨拶をしてきた。


「アニモ・ホープだ。しけた歓迎だなー。」

 ゴン。

「いた、兄上、何をするんですか。」

「態度が悪すぎる。」

「ですが、兄上、次期領主とはいえ、こんな子供がしかも出口で待っているだけなんて。」


 うん、なかなか賢い子だな。

 アニモの指摘も間違っていない。コロニーの領主とその家族となればこの世界では最上位のVIPであり殿上人の類だ。それが親善訪問されるとなれば、コロニー全体で歓迎の式典やらセレモニーを開催するぐらいのことはされて然るべきだ。実際接待プランの中には、楽団による演奏とかレッドカーペットの準備なんかもあった。 

 まあ、そのあたりは面倒なので、ばっさりカットしたよ。港の関係者に出した指示は、他の業務や船を後回しにしてホワイトランスを最優先で入港させることだった。


「アニモ、それこそがビックツリー側の心遣いだと、なぜ気づかない。」

「はあ、なんで、これじゃただの入港じゃないですか。」

「ただの入港でいいじゃないか。むしろこれほどスムーズな入港は初めてだと気づけ。」

「あっ。」

「ありがとうございます。スタッフの手際と努力に気づいていただき、恐縮です。」


 再び落ちるゲンコツとともにアニモも理解できたらしい。というか、何も言っていないのに察せるゼーレがやばいな。

 何十日、下手したら何か月も宇宙空間を旅してきた人達にとっては、派手な式典や歓迎のパフォーマンスよりも、地に足をつけてゆっくりと休める場所のほうがありがたい。とくに、うちのような自然豊かなコロニーとなれば、少しでも早く、ちょっとでも長くコロニー内で滞在したいと思うものだ。実際それとなく要望も来ていたので、歓迎は簡素にして、他の乗員さん達もスムーズに入港できるように手配したのだ。事前にお爺様に相談したら、派手なパフォーマンスよりも、相手に寄り添った対応こそ、「ビックツリー」にふさわしいとほめてくれた。

 そして、それはホープ側にも好意的に受け止めてもらえたようだ。


「お前だって、広い空や森が早く見たいと愚痴っていたじゃないか。」

「そ、それは。痛、ごめんなさい。」

「相手の立場や気持ちに寄り添い、最適な対応をする。そのために本来の予定も変える、これを気遣いと言わずになんとする。」


 こちらの気遣いを理解してもらえたのはありがたい。お子様の教育として、場を問わずに指導している姿は好感が持てる。言っていることも全部正しいんだけど、たびたびげんこつが落ちているのは、心臓に悪いなあ。

 地味に、ゴンゴンと音が響くので、アニモが気の毒になってくる。怖いから助けないけど。


「すまない、愚弟が失礼をした。」

「ご、ごめんなさい。」

「いえいえ、気にしてませんよ。それにレイウッドではなく、僕が対応しているのは、我々の不手際です。アニモ様のご指摘も間違ってはいないかと。」

「レイウッド様が祖父ヘルニッツの対応をされるのは事前に聞いている。むしろ祖父のわがままでレイウッド様を振り回してしまい申し訳ない。」

「いえいえ、レイウッドも楽しみにしていたようですから。」


 お目付け役のヘルニッツ様は別の船で来訪予定で、そちらの対応はお爺様が直々に行うらしい。世代が近い僕が対応したほうがいいとの理由だったけど、それが建前で、旧友同士でのんびりと過ごしたいのが本音なのはバレバレだった。

 まあ、そのあたりの機微を理解するにはアニモには難しかったのだろう。その辺も含めて各コロニーの反応を見定めたり、ゼーレや僕たち次代の器を図っているのだろう。


「ははは、では改めて歓迎感謝する。そして今回の訪問が実りあるものを期待する。」

「よろしくお願いします。」


 そろって頭を下げる兄弟。うん、とても友好的だし、なんとも手強い相手だ。 

 さすがは原作のラスボスコンビ。途中退場のリンガットとは、器からして違うな。

 船の話だけで一話語りつくしたくなるのをぐっと我慢しました。 


なお、全長2000メートルで5万人という規模の参考として、

 白い悪魔な宇宙戦争に出てくる戦艦が300メートルから1000メートル。

 遥か銀河の彼方にある帝国の宇宙戦艦が1000メートルから3000メートル。

 歌姫が宇宙に文化革命を起こすアニメの人型に変形する戦艦は1500メートルで住民は5万人だそうです。

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― 新着の感想 ―
エースをねらえのオマージュSFアニメの第四世代航宙艦で一等宇宙戦艦は、全長7205m,乗員数25000名。 純粋な戦闘艦なので、大きさに比して少なく見える乗員数は普通である。 某歌姫が宇宙に文化革命…
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