EX2 レイウッド・ビックツリーの後悔
円盤の特典とかにありそうな特典小説風なお話
原作世界でのアフター291年のお爺様の話です。
私ことレイウッド・ビックツリーは、領主としても親としても一流とは言えない。
いや無難に仕事をこなすことしかできないという点では、3流以下の凡人かもしれない。
領主としての役目を全うできているのは、先祖から受け継がれてきた血統の重みとESPの恩恵によるものでしかない。
ビックツリー家は人類が宇宙進出したときに開拓チームを率いたリーダーたちの末裔だ。
約300年前、地球での文明継続が絶望的となったとき、人類はその思想と役割から13の集団に分かれて宇宙へと移住した。その時、いつの日か地球の木々や植物を再生させることを願い、無理をして植物の種や苗木、大量の土をを持ち出したのが私達の先祖だ。
開闢当時は疑似的に再現された地球環境しかなく、植物は実らなかった。木々が今のように大きく育つようになるまでは100年近い時間がかかったらしい。そこからさらに200年、積み重ねられたノウハウによって育てられた木々とその加工品は、在りし日の地球の自然を感じさせる高級品として取引されるにまでなった。
かつての地球を思わせる森林は、誇らしい光景だと思う。一方で、宇宙で生まれ、最初の100年の苦労を情報でしか知らない世代からすると、古臭い物と感じるものであった。若者たちは次々と別のコロニーへと移住し、13あるコロニーの中で最も人口が少なく、1億人程度しかいない。
そのため、ここ数代の領主たちに求められたのは、伝統を維持しつつも人口流出を抑えるための政策だった。だが残念なことに、私にはその才能も、画期的な発想を生み出す奇抜さもなかった。教わったこと、学んだことを淡々と行い、コロニーの現状を維持する。亡くなった両親や祖父母と比べると自分は地味でお堅いものらしい。
手堅く、真面目、おかげで公明正大、正義の領主。そんな評価も受けてはいるが、自分にはそれしかできなかった。法やノウハウが醸されたおかげで、それを守っていればコロニーを運営できたし、私の持つ、ESPもそれを後押しした。
「真贋判定」嘘を見抜く瞳は無難に領主や父親をこなすには役に立った。不正であれ、間違いであれ、嘘であるならば、それを指摘、訂正させればいい。
それが間違いだった事に気づいたのは、息子が一般人の女性と駆け落ちした時だった。
自分の跡を継ぐために生真面目に勉学や訓練に取り組んでいた息子だったが、適正時期を超えてもESPを覚醒させることはなかった。それでも領主のとして必要な能力はあったし、表面上は真面目に取り組んでいたので、私はあまり重く受け止めていなかった。ESPは便利だが、最先端の機器があれば代用可能であったし、持っている人間の方が少ないからだ。
覚醒しないことが普通。そう思っていたのが間違いだった。
自分や両親、息子にとっては祖父母に当たる人間も覚醒していたのに、自分だけが覚醒しなかった事実に息子は歪んでしまった。真面目に働くふりをして、裏では花街で遊び歩き、そこで出会った女性と恋仲になった。しかも、あろうことか子どもまで作って、その事実を隠ぺいしていたのだ。
「・・・なぜだ。」
「父上にはわかりませんよ。」
ふらりと現れ、絶縁を宣言した息子の顔は憎悪と欲に塗れていた。私への恨みを嘘偽りなくまくし立て、そのまま女とともにコロニーから姿を消した。あまりの変容っぷりに私はその行方を追うことすらしなかった。いや出来なかった。
怨みや嫉妬は本物だったのだろう。その感情に身を任せて息子はすべてを投げだした。愛欲の相手である女のみをつれ、まだ幼い孫を部屋に置き去りにしたのがその証拠だ。
何もかも捨てて、一からやり直す。
なんとも身勝手な行為。だが、その罪は私にもある。領主の当たり前を当たり前とし、息子の悩みや嫉妬に気づかず、ああなるまで追い詰めてしまった。
もっとも、それで息子の罪が許されるわけではない。もし出戻ってくるようなら、宇宙空間に放りだしてやろうと思うぐらいには怒りを覚えている。
だが、孫に罪はない。
何も理解できないままに、両親に置きざりにされたリンガットは聡明な子であり、自分の立場をすぐに理解したが、寂しさや怒りを口にしない謙虚さを持つ子であった。かつての息子のように勉学にも熱心だし、年相応に祖父や周囲の大人たちに懐いた。
今度は間違えない。
この子の幸せのために、どんな些細な願いも叶えて上げようと思ったし、傷つける存在は遠ざけた。いずれは私の跡を継いでこのビックツリーを導いていく義務があるとしても、リンガットはまだ子供だ。のびのびと自由に、そして幸せに過ごして欲しい。
例えESPが覚醒しなくても、能力が足りなくても、この子の性根がまっすぐであるならば、他の事は人材や、システムが補ってくれる。私のように手堅く領主をし、幸せな結婚をし、次代を産んでくれればいいのだ。
そのためならば、私の残り少ない命を削ることすらいとわない。
あのバカ息子が引っ掻き回した政情を安定させ、不穏分子は排除する。リンガットに残すのは、嘘をつかず、仕事に誠実で優秀な人材と優しい世界を用意してあげる。それが祖父としてあの子にしてあげられる唯一のプレゼントだ。
だから、あと少し、あと少しだけ時間を・・・。
アフタースペース 291年
レイウッド・ビックツリー没。
死因は過労による衰弱と脳卒中。
ESPによる脳への負荷を顧みずに多用したことで、寿命を縮めたのではないかと推測される。
原作のリンガットが甘やかされていた理由でした。
甘やかされた結果、傲慢で中途半端な実力のボンボンになってしまうことをお爺様は知らない・・・。
なお、原作では、悪い人達とつるむようになったけど、本編では不思議生物やマニアックな博士やアウトローな人達と仲良くしいます。
次回からはアフタスペース293 リンガット君は10歳になってます。




