91 アフタースペース298 環境問題はメンドクサイ。
新章です。また一年経ちました。
宇宙クジラの捕獲という一大ニュース。今まで謎に包まれていた不思議の生物の捕獲という大事件は宇宙中で様々な波紋をもたらした。
だが、そのすべてが好意的というわけではない。
「宇宙を生きる特殊な生き物を捕獲したんだ、これで人類は更なる発展を遂げられる。」
大半の人間はこの歴史的偉業に驚き、未知の素材がもたらす恩恵を期待した。スペースアントの捕獲という前例があったのも大きい。恒久的な金属資源の供給、その規模はわずかであるが、旧時代の農耕と似た安心感を人々にもたらしたのだ。
「また、ビックツリー、そしてリンガット・ビックツリーなのか、一体彼は何者なんだ。」
「いやいや、今回はホープの精鋭艦とビックオーシャンの助力があったからだろ。そもそも、宇宙クジラを発見したのはアビスだ。ビックツリーは幸運だっただけだ。」
「そうだ、でなきゃ、木しかない田舎コロニーがあそこまで発展するわけが。」
「もしかしたら、他のコロニーが何か隠してるんじゃないか?」
また一部の人間は、今回の奇跡に立役者たちに注目していた。次代の為政者たちが協力して成功させたプロジェクトはその話題性から、各コロニーで大々的に宣伝された。そして、その中心人物にここ数年で宇宙を騒がせているビックツリーのリンガットの名前があった。
「また、彼か。」
ある程度世の中の事情に通じる者たちは、そこに彼の名前があることに驚き、同時に納得した。7歳にしてESPに目覚め、落ち目の田舎コロニーを再起させた神童。彼の名を知らぬものはもはや、人類に存在しないだろう。彼が領主となれば、ビックツリーはもはや片田舎のコロニーとは言えなくなるだろう。そんな評価がまた一つ増えた感じだ。
また、ミキサーという新技術のパイオニアでもある。ありとあらゆる現場でも活用でき、運用次第では強力な兵器ともなりうる技術。それを積極的に公開しつつ、その流通をコントロールしている。本人は武器として使われることを恐れてのことと言っているが、自身の領軍には積極的に取り入れている。その実態が、火力コントロールであることは誰にも明らかだ。
そんな彼がわざわざ、宇宙クジラを捕獲に動いた。まさか、ただの学術的な興味などではないだろう。出遅れた残りのコロニーや組織は、ひそかに警戒を強めた。
「貴重な宇宙クジラになんてことを、殺すなんて野蛮で残酷ですわ。」
「そうだ、食うわけでもないのに、あんなカワイイ生き物を殺すなんて。」
「環境に影響がでたらどうするつもりなんだ。未知の病原菌が発生したり、クジラが暴走したりしたらどうするんだ。」
「ビックツリーは自然保護のコロニーじゃなかったのか。』
そんな中、一番大きな声をあげたは、この行動への非難する者たちだった。メディアや政府が、宇宙クジラの捕獲の功績やリンガットやアニモなどの若き才能を讃える中、それにも負けない勢いで彼らは、宇宙クジラを殺した事実を非難したのだ。
公共の掲示板やSNSで大騒ぎし、一部の企業は業務がボイコットして抗議の意思を現した。さらには旧時代よろしくプラカードをもって抗議活動をする連中までいる。
「リンガット様、クジラを殺すな―。」
「クジラ捕獲反対―。」
「さすがにまずいって気づいて―。」
領主邸の門前、ギリギリ公道の場所で、今日も彼らは声を張り上げる。領主邸の中にいるリンガットへと自分たちの意思を届けるために。少数どころか0に近い自分たちの声を大衆の意見であるかのように。
「リンガット様、いかがいたしましょうか。」
「放っておきなよ、ちゃんと届けでは出してるし、近隣の人達に迷惑をかけているわけじゃない。」
「ですが、領主に対する。騒音や誹謗中傷は。」
「そんなのは今更だよ。領民の生存と自由を保障するのも僕の務めだ。あっでも、少しでも違反があったら。」
「はい、監視の手勢は充分に。」
窓の外で騒ぐ抗議集団を見下ろしながら、俺は溜息とともに部下にそう指示を出した。
手を下すのは簡単だ。彼らがあと一歩でも前にでたらドローンやセキュリティに捕縛される。彼らが通りがかる人間にビラの一枚でも配れば、違法だと罰することもできる。実際、数日に一回は勘違いした愚か者が法の下に裁かれている。そんなことを何度も繰り返すうちに、彼らは狡猾にもこちらが手を出さないギリギリのラインを見極めた。いや、見極めれるほどに繰り返したのだ。
「3か月以上経つのに、よくやるよねー。」
宇宙クジラの捕獲が発表され、半年。徐々にその詳細が公開されるとともに、なぜか俺を非難する人間は増えている。いや、初期と比べたら爆増したともいえる。
何かの陰謀?そうではない。
宇宙クジラに、とどめを刺したのが俺だとバレたからだ。
段階的に情報が開示されていく中で、捕獲方法の説明のために使われたいくつかの動画。その一つとして、宇宙クジラの脳天を撃ち抜く俺の姿が大々的に流されたのが三ヶ月前のこと。二足歩行ロボットがビーム兵器で巨大な怪物を撃つ、旧時代のアニメーションのような光景は、とても好評だった。
しかし、その衝撃的な光景は、クジラ愛好家たちの逆鱗に触れるものでもあった。それまでは仲間内で不満を言い合っていただけの彼らは、火のついた花火のごとき勢いで、俺を糾弾しはじめた。
倫理的、思想的、打算的と理由は様々である。売名のためにあえて騒ぐ輩もいれば、真剣に動物愛護の精神や環境への影響についての懸念を訴える者もいる。中には俺が危険な兵器で儲ける武器商人だと今更な抗議をする者もいる。
公共チャンネルで毅然と抗議するものもいれば、脅迫文を送ってきたやつもいる。
「彼らの言い分ももっともですね。今後に生かしたいと思います。」
俺はその全てをこの一言で済ませた。法律的な違反がない限りは彼らを自由にさせた。代わりに個別の対応は一切しなかったし、メディア等の取材でもそれ以上の対応はしなかった。
勿論だがコロニーの運営に彼らの意見を取り入れる気は一切ない。職務と役割に忠実な部下たちとともに、粛々と日々の業務に務めている。最初は何事かと思っていた領民たちもすぐに慣れた。そして、3か月ほどたった現在、ちょっと騒がしいだけの集団を相手にすることもしない。
『事前通知した時間が過ぎましたので、解散してください。』
彼らに大声に答えるのは、管理システムによる無機質な通知だけだ。
吠える犬は相手にしてはいけない。俺は自分にそう言い聞かせる。
『くっそ、うぜえええええええ。』
とか内心では思っているが、今は我慢しないといけない。
リンガット「あれれ、おかしいな、心当たりしかない。」
テティス 「だから言ったのに。」
アニモ 「映像だけみると、グロ画像だしなー。」
プロト整理のための更新が遅れました。申し訳ない。




