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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース297コーダ リンガット14歳 アビス訪問編

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EX6 とある研究者の無関心

 区切りなのでEX回 原作でのアンポル博士の視点です。

 旧時代のさらに古代、人々が空を飛ぶことすら夢物語だったころ、アテナと呼ばれた古代国家に、優秀な鋳物師のペリロスという男がいた。彼は時の支配者の命令で、犯罪者を処刑する道具として「ファラリスの雄牛」という金属製の牛を作りだした。その見事な仕組みは支配者たちを満足させる素晴らしいものだったらしいが、ペリロスは、その雄牛の最初の犠牲者となった。


「まあ、伝説らしいけどな。」


 次々と落とされていく同胞の船を観察しながら、私はふと、どこぞで読んだおとぎ話を思い出していた。特に意味はないし、他にも似たような話はある。ただ自ら生み出したもので、その身を炙られている状況が似ているなと思っただけだ。

 

 数年前、偶然確保できた宇宙クジラの死骸、そこから採取された新元素を使った新型エンジン。それは、船や各種機械の性能を格段に向上させる画期的な発明だった。これは外宇宙という未知の領域を目指すアビスにとってはまさに福音であった。

 しかし、その実用化は困難を極めた。最初の十数個の成功例を除き、ありとあらゆる変数を試してもエンジンは安定せず、貴重な新元素は徐々に消費され、時には暴発して研究設備に多大な被害をもたらした。もともとは、生物の細胞組織だ、恐らくはなんらか要素が経年劣化して不安定になったことが原因ではないかと思われるが、それに気づいたときには新元素はほとんど枯渇していた。

 量産が不可能と判断したアビス上層部と一部の傲慢な研究者は、新型エンジンを物語のアーティファクトのように扱い、高値で各地のコロニーに売りさばいた。一部の船だけを強化することよりも資金を充実させることを選んだわけだ。

 その結果が、船外で繰り広げられる地獄絵図だ。

 新型エンジンを搭載したホープのホワイトランスは、圧倒的な火力と航行速度をもってアビスの旅団を急襲し、半時と掛からずにその半数を撃ち落とした。

 勧告も警告もなく行われた蹂躙。それでも従来の戦力差ならここまで一方的な展開にならなかっただろう。決め手となったのが新型エンジンの性能によるものなのは間違いない。数個のエンジンを連結させることで何倍にも向上した砲撃は、こちらの船のバリアをガラスのように溶かし、幾重に重ねられた相手のバリアは、こちらの攻撃でわずかな波紋を広げるだけだった。

 ホワイトランスは人類が持つ中で最大の戦艦だった。それが今は無敵の悪夢と化している。

 まるで伝説の職人のように、アビスは身をもって新型エンジンの驚異的な性能をお披露目したというわけだ。


「数が限られている、だから価値がでる。だが、力を独占できると分かったら独占しようとする。そんな心理すらみぬけなかったのか。ヴァーチェン。」


 この事態を引き起こした張本人であるヴァーチェンがどうなったかは分からない。ただ、彼や上層部が乗っていたと思われるアビスの旗艦は、一番最初の砲撃で沈められている。爆発を直接目にしたわけではないが、脱出する暇などなかっただろう。

 まあ、彼らは私から研究成果を盗み、新型エンジン開発の失敗を私に押し付けて閑職へと追いやった愚か者たちだ。恨みこそあれ、同情や憐憫の感情なんてものはない。

 まあ、閑職だから重要度の低い船にいたおかげでまだ生きている自分と、旗艦勤めのエリートだったから命を落とした愚か者どもを比べて少しだけ愉快な気持ちとなる。

 

 ドーン。

 

 そんなことを思っている間にまた一つ船が落ちた。ホワイトランスの脅威に怯えて逃げ出そうとした船だった。


『総員に告ぐ。我々は、ホープの降伏勧告を受けれいれた。先方は停戦と待機を指示している。逃げ出す気配があれば撃ち落とすという警告つきだ。くれぐれも短気を起こすな。見ていたろ。』


 同時に艦内通信で悲痛な声が響き渡る。なるほど、脱出しようとするのもだめなのか。ただここ数年で荒れに荒れた社会情勢やホープのこれまでの所業を考えると、逃げ出したくなる気持ちもわかる。

 この世界に再び戦乱をもたらし世界の覇者となろうとするゼーレ・ホープという男は、敵と判断した相手にはどこまでも冷酷で、骨の一本、細胞の一つまで使い潰すと聞く。


「そう考えると、消し飛んだ奴らの方が幸せか?」


 この先どうなるか、私はもう興味がなかった。ESP持ちの研究者として飼い殺しになるか、このまま船ごと宇宙のゴミとなるか、どちらにしろろくな目には合わないだろう。

 正直どうてもいい。生きるにしろ、死ぬにしろ、あの時ほど、私の好奇心を掻き立てることはきっとない。


「できることなら、もう一度見たいものだな、宇宙クジラを。」


 優雅に宇宙を泳ぐ姿をまた見たい。あるいはもう一度あの不可思議な標本を解体して、私の好奇心を満たさせてくれるならば、私は悪魔にだって魂を売る。

 まあ、叶わないだろうけどな。

 あのエンジンは独占できる程度の数だからこそ、圧倒的な価値が生まれる。あの暴君が真っ先に旗艦を潰したのも、これ以上エンジンを作らせないためだろう。


「天才と聞いていたが、とんだ暴君だな、ゼーレ。」

 

 そういえば、あの伝説には続きがあったな。鉄の雄牛を作るように命じた支配者は、最終的には失脚し、最後は雄牛で火あぶりにされて、その生涯を終えたという。

 願わくば、言葉を交わしたこともない暴君の末路が伝説と同じであるように。

 神様も呪いも信じない私であるが、そう思わずに入られなかった。


原作 3つのコロニーの支援がなかったことで、宇宙クジラの素材が希少資源になる。そのためアビスはエンジンを高値で裏取引するヴァーチェン博士を黙認、完全に黒幕ムーブ。アンポル博士はその状況に達観していた。が、戦争後期にホープによって襲撃、半壊している。


本編 3つのコロニーの協力で貴重な標本ができた上に、裏取引もなくなり、アンポル博士は研究の主導権を獲得。その後は・・・。


色々とクジラの取り扱いについて感想をいただき感謝です。それを聞いて。

リンガット「クジラは資源、乱獲します。」

一同   「まて、早まるな。」

 そんなひと悶着がありそうな気配ですが、次回からまた新章です。



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