↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百虫少女  作者: ホロウ・シカエルボク
戦争ゲーム
49/56

3


仲見が連れて来た全員がテーマパークの敷地内に入り切ったころにはもうすでに半数以上が死体となって転がっていた。あとから入ってきたものたちは、そのすべてが一刀のもとに切断されているさまを見て戦慄した。死を予感した、確信したといってもいい。戦争という概念がなければ、それはあっという間に絶望に変わっていただろう。けれど、男たちの戦闘民族の血がそれを許さなかった。すんでのところで自分を奮い立たせ、体制を整えた。刃物を持ったものと銃を持ったものがペアを作り、銃が援護しつつ刃物が間合いを詰めて来る、という算段らしかった。見え透いてるし、遅過ぎる。由佳もランも人数は問題にしていなかった。縛りがあろうとなかろうと結果に大きな違いはなかった。ジェットコースター空地に辿り着くころには、1500人は100人と少し、というところまで減っていた。由佳とランはその時点でもうこの戦いには飽き飽きしていた。

「仲見さん?いらっしゃってます?」

由佳がじりじりと忍び寄る団体に声をかける。おりますよ、と、いかつい顔と変な髪型揃いの精鋭を掻き分け、仲見が最前列に出る。

「私たちが、なぜ2人なのか、おわかりいただけましたか?」

「実際、痛感していますよ。仮にあなたたちのどちらか1人が相手でも、結果はこうなったかもしれませんね。」

随分素直ね、と由佳が茶化す。お好きに、といった調子で仲見は肩を竦める。

「しかしね、我々も面子ってもんがあります。ここまで来たらはい降参というわけにはいきません。」

「その先がたとえ死であってもですか?」

仲見はゆっくりと頷いた。なるほど、と由佳は言った。

「それなら徹底的にやらないといけないわね。」

由佳はふっと身体の力を抜く。由佳の身体は実態を失くしたかのように地面の中に消えた。えっ、と男たちがたじろぐ。その瞬間―


男たちの立っている地面が揺らぎ、すり鉢状に沈んでいく。その中心に由佳が居て、落ちて来る男たちを次々に切り刻んだ。全員が始末されるまで数分しかかからなかった。

由佳は蟻地獄を解いた。由佳は戻って来たが、ほかの連中は皆飲み込まれてしまった。由佳はもう一度だけ仲見の前に立った。

「さあ、仲見さん、あとはあなただけよ?」

「いやはや、まさかこれほどとは…。」

「なにか言い残すことはありますか?」

「そうですね…こういうのはどうですか。」

仲見は至近距離で由佳の腹部あたりに拳銃をぶっ放した。が、それ以上なにも起こらなかった。

「イマイチかなぁ。」

由佳にとっては想定済みであった。蜘蛛の糸を編んだシールドをあらかじめ用意しておいたのだ。そう言いながら由佳は仲見の銃を持った方の手を切り落とす。むぅ、と切り落とされた手首の辺りを押さえて、仲見が蹲る。続いた由佳の一振りが仲見の首を刎ねる。


終わったわよ、と、由佳が声を上げると、そこら中の建物から由佳の配下に下った者たちが現れた。そして、お疲れ様です、と、興奮した様子で頭を下げた。

「信じられない、あの人数を二人だけで。」

「姉さん、私は一生ついて行きます。」

大袈裟なのよ、あなたたちは。由佳は一喝の意を込めてそう叫んだ。ハイっ、と元気よく答える。由佳は、自分はいったいなにをやっているんだろう、と思いはしたが、まあ、目論見通りで結果オーライではあった。


それから由佳たちは、表で待っていたバスに一台残して帰ってもらうよう頼んだ。まだお金を貰っていない、というので運転手の名刺を貰って後ほど連絡する、ということにした。そして一台だけ残ったバスに貸し切り料金を払い、自分たちの街へと帰った。もちろん、このことはどこにも話さないように、と、念を押すことも忘れなかった。初老の運転手はだいたいのことはお察ししていたようで、はいっ、はい、と、大きくはっきりとした声で頭を下げまくった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。