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由佳とランは門を開けた廃テーマパークの前で待っていた。周辺に何もない海沿いの土地で、どういう理由かはわからないが、「なにも使い道が無い」と言われてる広大な土地だった。バブルの頃、使い道が無いからテーマパークでも作るか、という話になって結構な資金を投じて作ったものの、そもそもそのテーマが曖昧な、いろいろな地方のテーマパークの真似事に終始したという有様で、それでも他になにも無いところだからひと時は繁盛したものの、バブルが終わってからは僅か2年しかもたず、あっという間に破産し、持ち主は行方不明、無駄に広いため壊すことも出来ず、ただ巨大な柵で囲んだだけで、荒らされもせず何十年もただ朽ち続けている。住宅地なら問題視もされただろうが、もともと捨てられている土地なのだ。まあそれならそれで置いておけばいいか、ということらしい。実際、こうした廃墟にありがちな不法侵入や不審火といった事件は一度も起こっていない。そもそもここにこんなものがあることを覚えている人間ももう居ないだろう。なお、航空写真やWebマップなどには、ここは表示されないということで話がついているそうだ。
「お。」
とランが声を上げた。観光バスが20台、並んでこちらへやって来る。由佳たちの数百メートル手前で止まり、仲見が例の護衛を連れて疲れた様子で降りてきた。
「1500人、連れて来ましたよ。なんせ移動費がかさむもんでね…。その代わり選りすぐりのモンを選ばしてもらいました。」
そう言いながら由佳の背後をじろりと見る。
「そちらの手駒はすでに中に入っているのですか?」
はい、と由佳。
「でも、彼らは戦闘には参加しません。新入りの教育もかねて、私たちの闘いをじっくり見てもらいましょうということで。いわば、新人教育ですかね。」
仲見はわずかに狼狽えたように見えた。
「つまり、そちらは…。」
「はい。私と彼女だけです。」
ランでーす、と愛嬌たっぷりのご挨拶。仲見はあっという間に紅潮し、舐めとるんか、と声を張り上げた。由佳はあっという間に仲見との距離を詰め、目の前で睨んで見せた。護衛もあまりのスピードにまるで動けず、呆気に取られたみたいに由佳を眺めていた。
「焦らないで。すぐにわかるわよ、仲見さん。」
ではもう開始ということで宜しいかしら?と由佳が微笑みながら聞く。あ、ああ、と、仲見は間の抜けた返事をしてしまう。いま自分が目にしたものが信じられないのだ。
「私たちは今からこの中に入ります。あとはどうにでもしてください。どんな策があろうと結果は同じですからね。」
由佳はさっと踵を返すと、ランと一緒に門の中に消えた。おい、と仲見が護衛に声をかける。護衛は頷き、背後のバスに指示を出す。途端、バスからぞろぞろと荒くれものたちが降りて来ては様々な武器を手に雄たけびを上げながら門を突っ切っていった。
テーマパークはとにかく歩いて歩いて、展示や食べ物や遊具コーナーやアトラクションなどを巡っていく定番スタイル。由佳とランは今回いくつか縛りルールを自分に課した。姿は消さない、毒や糸などの罠は仕掛けない。スピードに特化した戦い方をするつもりだったし、あまり圧倒的に勝ってしまうのもつまらない。由佳は門を潜ってすぐ左サイドに、ランは右にと別れた。そして最初に目についた建物に滑り込み、敵を待った。まずは誘い込んで一人ずつ始末しようか。敷地の最奥部には巨大ジェットコースターを撤去した空地がある。数を削りながらそこに誘導して、最後に大立ち回りという段取りだった。時間をかけずに終わらせることも出来るけど、折角だから―そう、折角だから。




