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由佳はそれから三件の組事務所を回り、お見舞い金を渡し、聞き取り調査をしたが、たいした収穫はなかった。どの被害者も夜に灯りの無いところで後ろから襲われていた。それからファミレスで作戦会議をして、少しの間由佳とランで新加入組の周辺を見張ることにした。
「虫を使役することとか出来るのかな?」
出来なくはないけど、とラン。
「夜動けるコはあまり居なさそうね。」
ふーむ、と由佳。
「とりあえず襲われてない組に絞って張ってみますか。」
「賛成。」
「遠くと近く、どっち行く?」
遠くかな、とラン。
「根拠はないけど、散らすつもりじゃないかな。」
「私もそう思う。でも、裏をかきに来る可能性もあるわよね。」
「私はどうしましょう?」
「吉田さんは事務所に戻って通常通りに。」
「わかりました。」
吉田は何か言いたげに由佳を見た。
「どうしたの?」
「もし襲撃犯を見つけたとして、そいつどうするんです?」
由佳は右腕を軽く上げて見せた。
「即殺しよ。」
「そうなると、完全に敵対することになりますぜ…もしや、それが狙いなんですか。」
そうよ、と由佳。
「黒幕もわかるし、まとめて殺っちまえば手っ取り早いでしょ。ウチのいい宣伝にもなるし。」
「まあ、そうですよね。姉さんはそうですよね。」
「諦めたみたいに言うのやめてくれる?」
あ、いや、すいません、と吉田は苦笑いして去って行った。
由佳とランは頷き合って姿を消し、それぞれの目的地へと向かった。
ビンゴ、と由佳は呟いた。最後に襲われた組から一番近いところに張り込んでみたのだ。おそらく下っ端を数人、あちこちにばら撒いているのだろう。組事務所から出てきた幹部らしき男を、暗がりでかなり距離を取りながら尾行している二人の男が居た。二十歳前後だろうか、いかにも族上がりです、と言った風貌の痩せぎすのハイエナみたいな二人だった。ほんの少し慎重に差があるだけで、あとはほぼ同じ感じだった。兄弟ではなさそうだけど。手には鉄パイプを持っていた。カーゴパンツのポケットにはナイフらしきものも入っているようだった。人気がまるでなく、薄暗い川沿いの道に出たところで彼らは行動に出た、かと思ったら見えない糸に引き摺られて由佳の居るところまで数百メートルを引き摺られた。
「…なに?」
二人が起き上がり、体制を整えようとしたところで由佳は姿を消したまま二人の首を刎ねた。ボン、ボン、という音がして二人の首は地面に転がった。由佳は死体をそのままにして次の組に向かった。
その夜、各地で十人近い人数が二人の手によって殺された。担当した刑事たちは頭を抱えた。犯人の情報がまるで無いのだ。そして、同時多発テロみたいに近隣のあちこちの路地だの川沿いだので似たような事件が起こっている。凶器の特定すらままならなかった。切れ味の鋭さは日本刀を思わせたが、この現代日本で、そんなものを凶器として持ち歩いてたらあっという間に捕まるだろうに。おまけに死体のそばには凶器どころか足跡すら残っていなかった。幽霊に殺された、と言われた方がまだ説得力があった。謎だらけの連続殺人事件は、ちょっとしたニュースになった。由佳とランは事務所でそのニュースを見ていた。
「あとは待つだけね。」
「まあ二、三日じゅうにはいらっしゃるんじゃない?」




