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百虫少女  作者: ホロウ・シカエルボク
時は流れるから
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4

それからしばらくの間、大きなことはなにも起こらなかった。が、小さなことはたくさんあった。新しく由佳の下についたものの中には、こちらに居を移したものも何人か居て、彼らとこの街の連中とでしょうもない小競合いがよく起こるようになった。由佳は一週間様子を見たが、進展がないとみると吉田に指示を出して一度でも揉めた連中を全員事務所に呼びつけ、巨大ミミズで拘束してカマキリの頭で散々脅して態度を改めさせた。解放してから二人ほど行方がわからなくなったが、そんなことはどうでもよかった。由佳は吉田を通して、自分の下に入るということはどういうことなのかということを全員にもう一度教えた。それでだいたいの揉め事も不満も出て来なくなった。由佳はしかし、まだ納得してなかった。自分と吉田で可能な限り街全体を見回り、必要ならば掃除もし、空家を見つければ持主に交渉して管理を任してもらい、手直しをして使えるようにした。自分ですることも出来たがすべて下のものにやらせた。建築や土木の経験者は新しく出来た名簿を漁ればなんとかなった。直すことの喜びを覚えた彼らは、自ら商店街やら住宅街を回り、適正価格で修理を請け負うようになった。初めは警戒していた街の人間も、由佳のところの人間だとわかると、じゃあ大丈夫だねと安心して任せてくれるようになった。


由佳がとりわけ気に入ったのは街外れの廃神社だった。管理していた人間が亡くなってからは放置されているそうだ。島田が扱っていた不動産の方で管理を請け負うことに決め、ひとりで修繕をした。由佳は新しい発見をした。虫の力全般、リフォームさせると超強い。要所要所に蜘蛛の糸を仕掛ければ、害虫対策も出来た。倉庫を開けてみると、神輿や太鼓など、祭りで使っていたらしいものが見つかった。図書館やら役所やらであれこれ調べてみると、百年前までは毎年夏にお祭りが行われていたらしい。これは復活させるべきよね。吉田に当たってもらって、祭りの運営に慣れている人間を揃えてもらった。

「そんなに特別なことはない、ごく普通の夏祭りだったみたい。商店街の人たちと協力して、諸々決めて頂戴。」

集められたメンバーはウス、と堅苦しい感じで、それでもどこか嬉しそうに準備に取り掛かった。

「みんななんだかんだ、街の人たちと仲良くしてるみたいで、良かったわ。」

由佳がそう言うと、吉田はぽかんとした顔を浮かべて、言った。

「なに言ってるんですか。それは姉さんのおかげなんですよ。」

「えっ…なんで?」

「姉さんと島田さんが、ずっと街の為に動いてたでしょ。この街のひとたちみんなそれを知ってるんですよ。」

「マジで…?こっそりやってたわよ、私たち。」

「姉さんはこっそりだったかもしれない。いや、島田さんもこっそりやってましたよ。でもね。俺らと飯なんか食いに行くと、姉さんの話ばっかりするんですよ、あの、でかい声でね。だから、皆に聞こえちゃう。だからみんな姉さんを見ると姉さんって呼ぶでしょ。あれ島田さんのせいなんですよ。」

由佳はもの凄い仏頂面で髪を掻いた。島田。あの世に追いかけて行ってミミズで巻いてやりたい。


家に帰ってランに、そういうことになってるという話をすると、ランは、ケタケタ笑いながら、「セーラー服と機関銃」みたいね、と言った。由佳は眠そうに笑いながら、薬師丸ひろ子は神だわと呟いた。

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