第2話 9月5日(月) 09:42
今晩は。
本日の更新は『B Side』と同時更新です。
気が向いたら向こうの方ものぞいて頂けると嬉しいです。
なかなか腕がうまく動かない。
少し体調を押し過ぎただろうか、一瞬だけ目が霞んだように感じる。
「いけないいけない、水分とらないと……」
スクールバッグからスポーツドリンクを取り出して口をつける。その時――
―― ギィィィィー……。
屋上の扉が開く時に出る特有の、重苦しい音が後ろから聞こえて振り向く。
男の子がひとり、怖い顔をして立っていた。
「え……? 立花くん……?」
同じクラスの立花くんだった。
腕時計を見て確認する9時42分。部室棟の屋上は、そもそも放課後にしか開放されない決まりが有る。こんな授業の合間を、というか1時間目の放課に来るなんて、全くの想定外だ。
「どうして立花くんがここにいるの?」
思わずイスから立ち上がって、少し視界が揺れる。
慌てて、足を踏みしめて悟られないように気を張って立花くんを見る。その顔は怖い表情のまま、どうやら悟られることはなかったみたい。
「さっきの授業中、偶々お前の姿が見えたんだよ」
ゆっくりと歩きながら、私を見据える。
「そんなことよりも、授業をサボってどうしてこんなところにいるんだよ? 小鳥遊」
「別に……どうでも良いでしょ?」
彼に答える必要なんて、無い。
そう思って、ため息をつく。
厄介な人に目をつけられたものだ。
クラスの有名人にして、生徒会副会長。立花智樹と言えば正義感が強く、面倒見が良い、責任感が強い、なんて評価をされている義侠の人だ。
その裏を返せば。融通がきかない、一本気、等々……。
人気はあるし、そんなに嫌いなタイプじゃない。
でも、間が悪い。自分の不運さに少しだけ落胆した。
「これって……風景画?」
気づいたら目の前まで来ていて、肩越しにキャンバスをのぞき見られてた。
あんまり、見られるのは良い気はしないけど、見られたならもう仕方ない、と諦める。
「ああ、これね? ……うん、今描いてるとこなんだ」
キャンバスの縁を軽く叩いた。
まだまだ線画の段階で、見て面白くはないものなのに、なんで興味を持つのかしら……。
「これは、授業をサボってまでやることなのか?」
やっぱりそうか、と思ってため息をつく。
どうやら彼は、私が授業をサボっていると思って、注意をしに来たみたい。
見上げた義侠心だと思ってほめれば良いのか、それとも呆れれば良いのか……。
「そう……だね……」
呆れる、という選択肢を取って、イスに座る。
私には時間がない、ということを思い出して鉛筆をとった。
「授業をサボるのは悪いことだと思ってるけど、これが今、私がするべきことなんだよ」
だからそっとしておいて欲しい。
「そんな訳ないだろ? いくらなんでも授業サボってまでやることじゃないだろ!?」
想いはなかなか通じてくれないのか、彼は辛辣な口調で抗議してきた。
そっとしておいて欲しい。それが私の願いであっても、彼には容認できないことなんでしょうね。どうしたら諦めてくれるのかしら……。
なんとか彼にあきらめて欲しくて、その方法を考えながら鉛筆をはしらせる。
「おい、なんとか言えよ?」
いい方法が……思い浮かばない。
一体なんて言えば追い返せるのか、分からなかった。
本当のことは言えない。
言ってはいけない決まりはないけれど、これからの行動になにかの制限が生まれると思って軽々しくは言えない。
「おい、聞いてるんだろ?」
「あっ……」
急に肩を引っ張らないで欲しい、危なく手が狂いそうになったじゃないの。
肩にかかった彼の手を振り払って睨みつけると、一瞬だけ怯んだように見えた。
「放っておいてよ!」
あまりにもしつこく言われたせいで、心がささくれだってきた。
こんなことで、時間を奪われたくない。そう思った矢先だった。
「……明るく真面目な頃のお前はどこに行ったんだよ!?」
一瞬なにを言われたのか分からなかった。
「勝手なこと言わないで!」
明るい? 真面目? それだけで人生生き抜けれるなら苦労なんて要らないのよ。
「それに学校には許可取ってるんだから!」
妙な正義感だけで、私の時間を奪わないで欲しい。
一瞬だけ驚いた表情を見せて……。立花くんは苦い顔をしながら振り向き、屋上入口へ歩き始めた。
これで、邪魔者がいなくなるとホッとした瞬間――
「それなら俺にも考えがあるからな!」
捨て台詞とも聞き取れる彼の声が、背後から聞こえて振り返る。
憮然とした表情で、一瞥して校舎に入って行った。
「なにアレ……」
考え……とはなんなのか分からないけれど、まだ関わってくると知って大きなため息が出た。
― 続く ―
結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。
誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。




