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第3話  9月5日(月) 12:08

お疲れ様です。

間は空いてしまいましたが、第3話をお送りいたします。



 線画だけなら順調に進むけど、肝心の待ち望んだものが現れない。

 それどころか、カラッとした天気はそのままで、正直体が持ちそうにない……。



「そろそろお腹すいたなぁ」


 腕時計で時間を確認すると、ちょうどお昼休みのチャイムがなる頃だった。意外に集中できていたんだなあ。


―― キーンコーンカーンンコーン……。


 案の定、いつも通りの時間にチャイムが鳴った。



 連続で描き続けるのも体に悪いと思って、鉛筆を手放して、背筋を伸ばす。


「う~~~~~ん……」


 背骨がちょっとポキポキ鳴る。

 我ながらちょっと年寄り臭いな、って思いながら体をひねる。と、ポキポキ鳴る。


「あ~あ~……しばらく動いてなかったから身体の調子わっるいな~」



 簡易ストレッチを止めて、カバンの中からお弁当を取り出す。


「お弁当、中身なんだろ?」


 フタを開けてがっかり、彩り悪い、味薄そう、腹持ち悪そうの三拍子。


「まるで病人食……って私は病人だったっけ」


 苦笑ひとつで「いただきます」と手を合わせておハシを取る。


 その時だった。



―― ギィィィィー……。


 またしても屋上の扉が開く音が後ろから聞こえた。




「はぁ~……」


 振り向かなくても誰だか分かる。迷いなくこっちに歩いてくる気配。

 振り向くと、やっぱりその人が立っていた。


「な~に? まだ……何か用があるの? 立花くん」


 ビニール袋を片手で振り回しながら、真っ直ぐ歩いてくる立花くん。あいかわらず怒ったような顔をしてて身構えてしまった。


「そう身構えなくって良いっての。俺が悪者みたいじゃないか……」


 ぶつくさ言いながら、私が座ってるイスの隣にどっかりと座り込んで、ビニール袋を漁りはじめた。


「なにしに来たの?」



 全然意図が読めない。



「なにって、昼飯に決まってるだろ?」


 いえ、確かに今はお昼休みだから、お昼ごはんを食べる、確かにそれ自体納得はできるけど、そうじゃない。


「私が言いたいのはどうして来たの? ってことよ」


「ああ、俺、お前が真面目に授業に出るまで休憩時間は傍にいることにしたんだ」


 そう言って、立花くんはサンドイッチを取り出してかじり始めた。

 おハシで摘んでたたまご焼きがポロリと落ちる。



 彼は今、なんて言った? 「真面目に授業に出るまで休憩時間は傍にいることにした」って? そう言ったの?



 頭が痛くなりそうな言葉だった。いえ、本当に頭痛を引き起こしそう……。

 さっきも言った通り、私が授業中に絵を描くことは学園長にも許可をとってあることで、彼の出る幕じゃないのに……。


「どうしてそんなこと……」



 正直、困る。



 そんなことされても私は授業に出る気はないし、それは彼にとって大きな負担になるはずなのに……。


「そりゃあ、サボってる生徒は見過ごせないからな……俺、副会長だし」


 彼が口に出した言葉が一瞬理解できなくて、首を傾げた後、盛大にため息が出た。


 我が学校の副会長は飛んだ義侠心野郎でした。


 思わず手を合わせて拝んでやろうかと思ってしまった。「本気なの?」と聞けば「当たり前だろ?」と帰ってくる現実。


「……勝手にすれば?」


 もう、そう言うしかなかった。

 私がとやかく言ってもこの人は諦めない。そういう意地というか、信念を眼差しから感じ取ってしまっていた。


「そうさせてもらうよ」

 彼は、笑いながらサンドイッチを頬張った。



 昔から頑固なヤツだって言われていた私は、今まで絶対に、折れたくないことについては人に譲ったことはないのに……。

 本日この時を持って初めての敗北と相成った。




「本当は他にも色々と仕事あるんでしょ? 無理しなくてもいいのに……」


 季節は9月、もうすぐこの学校では文化祭が始まる。

 取り仕切りはもちろん生徒会のハズで、副生徒会長なんて立場の目の前の男の子は、私なんかに関わる暇さえないはずなのに……。


 ううん、そんなんじゃない。

 多分、私はそんなことを気にしているわけじゃない。

 もしかするともうすぐ消えるこの生命、そんな私に付き合わせるのが……とても心苦しくなる。



 横目で、そんな彼を見ていると、不意に顔を上げてこっちを見た。


「なんだよ? お前、昼メシ食わないのか?」



 私の心配なんてしなくても良いのに……。



 なにを言えばいいのか分からなくて、彼には苦笑を返すしかなかった。


 彼がなにを思ってここに居るのかわからない。

 どうして、私と一緒にいることを選んだのか。

 本当に、私にまじめに授業を受けさせようとしているだけなんだろうか。



 理解できない。



 本当に、理解できないことばっかり。


「なんだ?」

 

 脳天気に、サンドイッチを頬張りながら、首を傾げる立花くん。なんというか、屈託がないというか、無害そうとか、そういう感想を持てる表情だった。


「なんでもない……」


 彼の顔を見て、彼には悩みらしい悩みなんて無さそうだな、なんて失礼なことを思いながらハシを運ぶ。

 考え事をしているからだろうか? もともと味の無さそうなお弁当の中身、更に味気なく感じてしまった。





                         ― 続く ―

結構自分で校正はしているのですが誤字脱字が多い性分です。

誤字とか脱字があったらご指摘いただけたら幸いです。



5月9日の夜に『B Side』の更新予定です。

よろしくお願いします(ぺっこり

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