新たな仲間……とまではいかない
「忙しいとは思うんだけど、【薬酒】を持ち帰るのは大丈夫なのか?」
女性店員には申し訳ないんだけど、【イチバン】の外でポイが待ってるからな。ログアウトしてる時は仕方ないけど、【求】の中にいる時点では気にしてやらないと。
「ごめんなさい!! こんな状況だから、持ち帰る用のお酒は用意出来ないの。原初の森のダンジョンがクリアされるまでは無理じゃないかな?」
女店員姉がプレイヤー達に酒を運びながら答える。プレイヤー達は女店員姉が誰に話してるのかも分かってない状態だと思うし、そこまで興味もないだろうな。
「シークレットボスがいる可能性、ワンチャンあるでしょ」
「遭遇したくないだろ? 最初の戦闘はほぼ負けるの決定。そのペナルティも怖いし。そこから攻略が始まるんだろうけど……」
「地下何階まであるかも問題だろ? 未だに最下層、最上階までいけないダンジョンはあるからな。先に進むための条件が分かってないんだから」
プレイヤー達は本当に最新のダンジョンに夢中みたいだ。プレイヤー達も酒を飲む事によって、何かしらの効果があるのも分かってるから、ダンジョン対策に飲んでいるのかも。俺の場合、『一階から毒だらけのダンジョン』と聞いてしまうと、職業【毒】としては興味がないといえば嘘になる。ただし、LVが足りてなさそうで無理な話なんだけど……
「そんな……ガナナーガとの戦闘には【薬酒】が必要なのに」
誰のせいと言われたら、【原初の森】を開放出来るようにした職業【毒】である俺が一番の原因かもしれない。けど、これは自業自得とは言えないだろ。
「あんさん、けったいなスキルを持ってますな。お嬢ちゃんが声を掛けなかったら気付きまへんで。しかも、ガスマスクと洒落の効いた物をつけとるけど……他は初期装備やな」
「えっ……と、俺に声を掛けてきたのかな?」
浴衣のような服装をした坊主の男が声を掛けてきた。手に持つ瓢箪は酒が入ってるのか? 口に当てたりしているけど……プレイヤーが普通に声を掛けてきたのは初めてじゃないか?
「そうや。ワイの相方が勝手にダンジョンへ行ってしまったから、ここで戻っくるのを待ってるわけや。暇をしてたら、面白い人が来たと思てな。【薬酒】が欲しいんなら、差し上げましょか? 新人さんには優しくするもんや」
勝手に話を一人で進めていくけど、一体何者なんだ? 職業は……遊び人みたいにしか見えないぞ。それに酒場が無理と言ってる【薬酒】を俺に渡すというのも……
「見るからに怪しい奴と思ってるやろ? ワイの名前はアカツキ。こう見えても【調合師】のレアな職業をしとる。【薬酒】もレシピに載ってるさかい、拵える事が出来るんや。材料もあるさかい」
【調合師】は【薬師】や【鍛治師】同様、何かを生み出す職業だよな。しかも、レア職業。確か……作成する分野が幅広いんだったような……
「……新人なのは確かだけど、だからといって、俺に渡す理由になるか? 無償ってわけでもないんだろ。言っとくけど、Gもそこまで無ければ、レアアイテムも持ってたりしないぞ」
酒場より高いGで売りつけてくる。レアアイテムと交換と言われても、そんな物は持ってない。詐欺みたいな事は受けないからな。
「警戒心が強い人やな。新人にGやレアアイテムを持っとるとは思わんわ。人脈作りの一つとでも思っておき。あんさんの職業もレアそうな感じやからな……タダでええ」
それは……俺の職業が【毒】と踏んでの発言か? 先を考えると人脈作りは必要かも。アカツキという人物はそう思ってるみたいだし。
「ここまで言っても疑うんか? まぁ……LV次第では一緒にダンジョンに行って欲しい時もあるかもやけどな」
アカツキさんは馴れ馴れしく背中を叩いてくる。ダンジョンというのは、【原初の森】にあるダンジョンの事だよな。やっぱり、アカツキは俺が【毒】だと思ってそう……そこで職業を言うつもりはないけど。
「そこまで言うのなら」
「よっしゃ!! フレンド申請も出すさかい……やけど、すぐには登録せんでもええ。解除も簡単に出来るで」
フレンド申請。【求】の中で連絡を取り合う事が出来るようになるし、パーティーも組む事も出来る。勿論、登録した後で解除する事も可能。俺の目の前にはアカツキの宣言通り、【フレンド申請】メッセージが届いたと表示された。流石にフレンドに登録した途端に何かが……怪しい言い方なんだよな。
「それとや!! これを先に聞いとかんとな。あんさんの名前と、薬酒を何に使うか。こんな時に使うとすれば……ガナナーガ? ソロで行くつもりかいな」
彼は【薬酒】が【ガナナーガ】に効果がある事を知ってるみたいだ。しかも、ソロで行くのもお見通しみたいだぞ。他のプレイヤーと協力されば、【薬酒】は別に必要ないんだよな。そこについて、嘘を吐いても仕方がない。
「俺の名前はヤク中……ガナナーガの件は正解だけど……」
「あんさんの名前はヤク中はんか……ガナナーガに関しては協力するつもりはあらへんよ。ヤク中はんがソロでするために準備しとるのに、それを邪魔する事はせえへん」
そこは邪魔だとは思ってないけど……職業がバレてるなら、毒の取り込みに協力してほしいかも。ここまで正直に話してくれてる気がするし……




