タダではございません
「おっ!! ここがクエストを受託出来る酒場で合ってるのかな?」
「冒険者様、お待ちしておりました。クエストの依頼はございます」
プレイヤーから見向きもされなくなった酒場に、二人組のプレイヤーが来たぞ。事前情報を調べなければ、クエストを受けに酒場を訪れるのは当然だよな。引き受ける云々は別として……
「そうなると……早めに爺さんのクエストを達成するべきかな」
【空気のような存在】で二人組は俺に気付く事なく、女店員とクエストについての話を始めた。引き受けた場合、爺さんのクエストに気付かずに進んでいくかもしれないし。
「晩飯前と違って、凄そうな人達がいるんだけど……」
【求】の時間が朝でも、こっちの時間では夜。NPCよりもプレイヤーの方が多い。それも初期装備じゃないプレイヤーや、エルフや獣人のプレイヤーを見るのは初めてかも……そんなプレイヤー達が【イチバン】に何の用があるんだ? シークレットボスの情報が入ったとか?
「流石に今の状態で挑むのは無謀だし」
シークレットボスに負けた場合のペナルティが痛い。【装備全破壊】とか、【スキルをランダムで初期化】、【LVが十分の一減少】が確認されてるんだよな。毒の種類によってLVはあるけど、それを一つで扱われると全て無くなる可能性もあると思うと……恐ろしい。
「あっ……なるほどな。プレイヤー達が集まる理由はそれか」
ポイを見に来た……というわけじゃない。ポイも毛皮を羽織るだけじゃなく、毛皮のちゃんとした服装になったお陰で周囲からそれほど視線が向かなくなった。まぁ、それでも振り替えるプレイヤー達はいるわけなんだけど……それとポイは手を繋ぐ事はなく、俺と少し距離を取っている。親離れ……じゃなく、【空気のような存在】の事を気にしてくれてる……わけはないか。そんな気分なだけだな。
「行くタイミングを逃してるような……」
プレイヤー達の目的は【原初の森】だ。職業【毒】が【イチバン】にたどり着いた事で解放された。それがプレイヤー達に広まったんだろう。あそこは素材はキノコばかりで、【料理人】や【薬師】なら探索しても意味と思うんだけど……そんな事は知りようもないからな。俺が知らないだけで、イベント進行に必要な場所かもしれないし……
そんな状況の中で【毒(幻覚)LV1】を使用するための【夢キノコ】を探しに行き辛い。
「はぁ……薬草は爺さんのいる場所までに採取しとくか」
【ガナナーガ】に負けたせいで道具は全ロス。【蛇皮の財布】でGの損失はなしだけど、【薬草】を買うのは勿体ない気がする。【イチバン山道】や【原初の森】に生えているからな。道を外れて進めば、問題なく見つかるはず。
「いらっしゃい!! 新装備が発売されたよ。今回取り扱うのナイフだよ」
武器屋が客引きをしているな。【イチバン】は最初の街の一つだから、外から来たプレイヤーには物足りないかもしれない。それともプレイヤーが売った素材で新しく作ったのか?
「どちらにしても、覗いてみるか。力の数値が関係するのじゃなかったら良いんだけど……」
装備には力や耐久の数値が関係するのもあると説明があったからな。【ガナナーガ】にダメージを与えるため、パラメーターに頼れない分、武器で補わないと。毒さえ効けば問題なかったんだけど……今回の件で身に染みた。でも、【ガナナーガ】に毒が効く可能性はゼロじゃない。
「おっ!! 何だか存在が薄そうな冒険者だね。そんな君にこんな武器はどうだい?」
道具屋と一緒で、俺が武器の一つに触れようとするとすぐに気付いてしまう。しかも、存在の薄さに関係する武器なんかあるのか?
「投げナイフ十本入りだ。使用したら無くなっていくが、不意討ちを与えるにはいいだろ? パラメーターによるの変化はあるが、装備なんだけど、道具扱いなのがポイントさ。誰でも使用出来る」
【投げナイフ】の十本入り……良いんじゃないか!! 力に関係するんだろうけど、装備出来ないわけじゃない。これに【毒(付与)】が付けてたら、【ガナナーガ】に接近せずに試せるぞ。
「けど、そんなオススメするって事はお高いんでしょ?」
「へへっ……そんな事はねぇさ。120G……本当販売記念品で五本プラスでサービスするよ」
十本120Gのところが五本プラスだと……一本の値段が毒消し草よりも安いんだから得じゃないか。前回の所持金は126Gだったので問題ないはず……
「よし!! かっ……ない」
現在の所持金126→116だと……【蛇皮の財布】で半分にはなってないけど、10Gが何故無くなっているんだ?
「酒場。ご飯」
俺が足りないGを眺めていると、その理由を教えてくれた……あれはタダで上げたご飯では無かったらしい。だからといって、放置扱いしたポイを怒るのも……




