誰に買って貰ったんだ?
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「戻って来たわね。彼女が待ってるわよ」
声を掛けてきたの……誰? 爺さんがいた村からのスタートじゃなく、【イチバン】にある酒場だ。マスターの姿はなく、前にいた女性店員と同じ顔、同じ声なんだけど、髪の色が違う。前回は黒で、今回は白。
「マスターと姉さんは休んでるわ。朝のうちは私一人で十分だから」
御丁寧に今の時間が朝で、マスター達が休んでる事を教えてくれた。同じ顔なのは双子の設定かもしれない。それと酒場の店員ともあって、俺の存在にはすぐに気付いたみたいだ。
「なるほど……彼女が待ってるというのは」
ポイがご飯を食べてる最中だった。毒だけを食べると思ってたけど、そうではなかった……いや、よく見ると消し炭のような物が皿の上に置かれているんだけど……
「……ポイは一体何を食べてるんだ?」
「ハムエッグだけど? 少しミスしたのを欲しそうな目で見てたから」
ハムエッグ……あれを食べたらダメージを受けそうなんだけど、それだからポイは普通に食べてるのか? 酒場の中はNPCの客は誰一人おらず、ポイしかいない。
「貴方にも何か作りましょうか?」
「いや……大丈夫。HPは満タンなんで」
流石に女店員が作った料理が毒の取り込みにならないだろ? ダメージだけを受けて、Gを取るなら尚更いらない。
「ポイ!! そのご飯を食べたら、もう一度爺さんのところに向かうぞ……あれ? 何かが……服だ!!」
ポイの姿をよく見ると、毛皮を羽織ってただけなのが、ドレスのような服装に変わってるじゃないか。素材は毛皮のようだけど……ポイは俺が何で驚いてるのが意味が分かってないのか、首を傾げている。
「あの!! ポイ……彼女は誰かと一緒に酒場に来たんですか?」
【ガナナーガ】との戦闘で俺は死んでしまったわけだが、プレイヤーの誰かが酒場まで連れてきてくれた可能性はある。下手したら、みすぼらしい姿に装備を渡してくれたのかも……ポイの服を買ってやる程のGは無かったから……
「いえ……気付いたら、その場所にいたので……誰かと一緒に来たわけじゃないです。私達は冒険者が来る事には敏感ですから」
俺の【空気のような存在】が効かないぐらいだから、説得力がある。俺が死んだ事によって、一緒にこの坂場まで移動する事になった……となると、服装が変わらないはずなんだよな。
「ヤク中。弱いから」
ポイはそれに対する答えのつもりなのか、俺の胸に刺さるような言葉を……確かに【ガナナーガ】に為すすべなく負けてしまったけど、ストレートに言わなくてもよくないか?
「そこは置いとくとして、その服はどうしたんだ? 誰かに買って貰ったのか?」
「服? 何。変わった? 私も。LVアップ?」
ポイは自分の服が変わった事も気付いてない? という事は誰かに貰ったんじゃないのかも。ポイ自身が分からないのなら、知る事は無理だな。次は報酬が手に入ったら、ポイに何か買ってやる事にしよう……何となしに思ってしまった。
「ポイにもLVがあったなら、そうかもしれないな。ポイは興味がないかもだけど、あの爺さんがいる場所まで戻るからな」
いや、爺さんが酒場に来る可能性もあるのか? クエスト発生条件が出てるから、移動する事はないのか?
「あっ……あの爺さん、以前に孫を亡くした爺さんが、酒場に来る事はないか? もしくは、新しいクエストが増えたりなんかは……」
酒場はクエストを貰う場所なんだから、マスターがいなくても対応してくれるはずだ。念のために確認をしておこう。クエスト発生条件は【ガナナーガとの戦闘】であって、倒すとか撃破という言葉は無かったんだよな。晩御飯を食べてる途中で思い出した。
「新しいクエストはありませんね。あの人なら、当分は酒場に寄らないと思いますよ」
となると、爺さんのクエストが終了しないと、酒場に顔を出さないって事だよな。【ガナナーガ】を弱体化させる何かを持っているのは、あの爺さんの可能性が高いよな。




