賢者side:それから
※前話を一部修正しました
「ミーナ!どこへ行った?!」
結婚して1年ほど経った頃。
ミーナの置き手紙を握りしめて屋敷の中を探しまわっていると、庭の片隅でのんきに剣の手入れをしている勇者に出くわした。
勇者は半年ほど前に私の屋敷のメイド頭と結婚した。現在はうちの離れで暮らしており、結婚後も2人はそれぞれの仕事を継続している。2人が結婚すると報告された時はかなり驚いたが、ミーナはずいぶん前から知っていたらしい。
「ミーナなら魔王城に行っちまったよ。ありゃ、かなり怒ってたな」
思わず頭を抱える。
「どうせ研究に夢中になってミーナをほったらかすとかしたんだろう?」
ニヤッと笑う勇者に思わずため息が出る。
「…否定はしない」
「ミーナはかまってくれないから拗ねてるわけじゃなくて、お前のことを心配してのことなんだからな」
「もちろんそれも理解している」
小さくうなずいた。
ミーナことウィルヘルミナは、王太子殿下と聖女の結婚披露のパーティで、正式に国王陛下の姪であることを明かすと同時に私との婚約を発表した。そしてミーナが18歳になるのを待って結婚。
当初、私もミーナも結婚式というものにさほどこだわりはなかったので、書類だけでよいと思っていたのだが、周囲がそれを許さなかった。
特に国王陛下の力の入れようはかなりのもので、大切に保管されていたミーナの母上のウェディングドレスや宝飾品を出してきて、ミーナはそれらを身につけて結婚式に臨んだ。
そのドレスは国王陛下の許可を得て魔王城での結婚の挨拶時にも着用し、魔王城の使用人達から感嘆の声が上がるとともに、その姿に涙する者も多かったという。魔王城でいかにミーナがかわいがられていたかを改めて知ることができた。
国王陛下といえば、王太子殿下と聖女の間に男の子と女の子の双子がつい先日誕生し、すでに孫達にメロメロだ。女の子の方は王族女性にのみ現れるというミーナと同じ紫色の瞳だった。
時々王宮を訪問しているミーナは、聖女とともに子守唄を歌ってあげているらしい。そのせいか王宮の庭の植物の成長がやたらと早くなっているという現象が起きているのだとか。
自室に戻ると、机の上にある魔王殿から結婚祝いとして贈られた魔道具が点滅していることに気付く。
点滅していれば魔王城へ転移可能なのだが、消えている時は行けない。主導権はあくまで魔王殿の側にある。こちらが行きたいと思っても、行けるとは限らないのだ。
ため息をついてから点滅する魔道具に触れて魔王城へと転移した。
次回で最終回となります。5/17(月)に投稿予定です。




