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ダンス

 夕刻より王太子殿下と王太子妃となった聖女様の結婚披露の夜会が始まった。

 出席者は大神殿の婚姻の儀よりはるかに多い。王宮でこれほどの規模の行事はそうそうあるものではないらしい。

 私は賢者様とともに壇に近いあたりで待機している。

 国王陛下の挨拶の後で王太子殿下と聖女様のお2人も挨拶し、来賓の祝辞などの一連の流れが終わってから、再び国王陛下が壇上に立って私を呼び寄せる。

 そして先ほどの会議室と同様に、私を紹介して婚約もあわせて発表された。

 私の保護に関しては、王太子妃となった聖女様の功績ということもあり、盛大な拍手が送られた。



 最初のダンスは、本日の主役である王太子殿下と王太子妃となった聖女様。

 聖女様は婚姻の儀の時とは違う華やかなドレスで、これも素敵だ。

 そして2曲目は引き続き王太子殿下と聖女様が踊るのだが、国王陛下が私の手を取ってダンスフロアに進み出て、会場から驚きの声が上がる。

「さて、ウィルヘルミナ。練習の成果を見せてもらおうか」

「はい!」

 陛下は王宮でのダンスの授業で時々お相手してくださっていた。だから、たくさんの人の前でもあまり緊張せず、なんだかとても楽しく踊れた。

「こういう場で踊るのは久しぶりだったが、楽しく踊れたな。ありがとう、ウィルヘルミナ」


 曲が終わると、私の手は陛下からいつの間にかすぐ近くまで来ていた賢者様に渡された。

「ウィルヘルミナのこと、よろしく頼むぞ」

「かしこまりました。我が命に代えましても」

 3曲目は私と賢者様、そして国王陛下は義理の娘となった聖女様と踊る。


 軽やかなステップを踏みながら賢者様に話しかける。

「賢者様はダンスもお上手なんですね」

「貴族の家に生まれたからには一通り学んではいる。もっとも、これまで一度も踊ることはなかったが」

「え、そうなんですか?」

 ちゃんとリードしてくださっていて、踊りやすいからとてもお上手だと思うのだけれど。

「実はミーナが王宮へ泊まりに行った日に知人に頼んでダンスの特訓を受けていた。ミーナにみっともないところは見せられないからな」

 少し照れくさそうな賢者様。

「そうでしたか。私のためにありがとうございます」


 その後はしばらく踊らずにずっと賢者様と一緒にいたけれど、いろんな方に声をかけられてご挨拶をした。

 お母様の友人だったというご婦人方は、私を見て涙を浮かべていた。どうやら私はお母様の若い頃にとてもよく似ているらしい。パーティ前に会議室で紹介された時の驚きの声も、おそらくはお母様に似ていたからなのだろう。


 そしてラストダンスはもちろん賢者様と踊った。

「正直、あまりこういう場に出る機会はないのだが、これからは家でも時々2人でダンスの練習をしようか」

 賢者様の提案にうなずく。

「そうですね。楽しいですもの」


 今日という日は私にとって忘れられない1日になった。


次回は5/13(木)に投稿予定です。

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