参列
王太子殿下と聖女様の結婚式の日は、お2人の門出を祝福するかのように雲ひとつない晴天だった。
賢者様とともに大神殿での婚姻の儀に参列する。たくさんの参列者に驚いていると、
「これでも場所の都合で王家と密接な関わりのある家だけに絞っているはずだ」
賢者様が小さな声で説明してくれた。
メイド頭さんから借りた小説でいくつか結婚式の場面はあったけれど、実際の結婚式に出席するのは初めてだ。
そもそも魔界では結婚に関する儀式というものは存在しなかった。魔王様が海王様の伴侶となったのは私が魔界へ行くよりはるか前のことで、その時も魔王城で働く方々に軽く紹介しただけだったと聞いている。
婚姻の儀は厳かに進んでいく。
純白のウェディングドレスを身にまとった聖女様は、もちろん普段からお美しい方なんだけど、今日は一段ときれいだった。
私も一応は賢者様の婚約者だから、結婚する時はやはりドレスを着るのだろうか?どうもそのあたりはいまだに魔界の感覚のままのようで、実感がわいてこない。
婚姻の儀が無事終了すると、王太子殿下と王太子妃となった聖女様は王都の中心部をめぐるパレードに出発する。
数日前から街のあちこちにたくさんの花が飾られ、すでに沿道にはたくさんの人達が待っているようだ。
笑顔のお2人を乗せた馬車はゆっくりと動き始めた。
「ミーナ、行こうか」
「はい」
私達はパレードを見ることはない。これから行かねばならない所があるからだ。
王宮内でもかなり奥の方にある小さな会議室。
ここに入れるのは王族に近い、ごく限られた人達だけだらしい。
賢者様に連れられて私が入っていくと、数名の貴族男性達が座っていて、なぜか一部から小さな驚きの声が上がっていた。
国王陛下が立ち上がり、私に手招きするので行ってみると隣に立って話し始めた。
「忙しい中、集まってもらったことに感謝する。これから行われる結婚披露のパーティでも紹介するが、まずは先にここにいる者達に紹介しておきたい」
陛下が私の肩に手を置く。
「10年近く行方不明となっていた今は亡き我が妹の娘、ウィルヘルミナが辺境の地で平民として暮らしていたことが判明し、少し前に王都へ呼び寄せた。現在は教養やマナーを身につけさせているところだ」
陛下が目で合図してくれたので挨拶する。
「ウィルヘルミナと申します。どうぞよろしくお願い申し上げます」
淑女の礼をすると、陛下は賢者様を指差した。
「そこにいる賢者、我が息子の伴侶となった聖女、そして勇者の3名が遠征時に見つけだして保護してくれた。そして賢者には王都での後見人となってもらっていた」
壁際に立っていた賢者様が私の隣に並んだ。
「そして双方の希望もあり、先日ウィルヘルミナと賢者の婚約を認めた。結婚はウィルヘルミナが18歳になってからとする。両親の死後に途絶えたウィルヘルミナの家は、本人が近いうちに嫁ぐので復活させることはないが、今後は王族の一員としてよろしく頼む」
集まっている方々から拍手が起こり、私と賢者様はお辞儀で応えた。
次回は5/11(火)に投稿予定です。




