帰宅
魔王様と海王様に改めてお礼と挨拶をして、私と賢者様は人間界へと戻ってきた。
いつもなら賢者様のお屋敷に直接帰るのだけれど、今回は私が勇者パーティに保護される前にお世話になった方を訪ねるという設定になっているので、馬車を預けていた所に戻ってきた。魔王様の協力を得て、賢者様が辺境の地の工芸品やお菓子などをお屋敷の皆さんへのおみやげとして用意してくれていた。
賢者様のお屋敷に帰ると、みんな笑顔で出迎えてくれた。
行ってもいない場所のおみやげを配るのは少し心苦しかったけれど、魔界や海王様のお屋敷に行ってたなんて知られたら大変なことになりそうだから、しかたないのかも。
少し疲れたので、私専属のメイドさんに手伝ってもらって着替えてから自室でお茶を飲む。
「ミーナ様、旅行中に何かございましたか?」
メイドさんに尋ねられる。
「えっと、どこか普段と違ってますか?」
「上手く言えませんけれど、表情や雰囲気がほんの少し違うように感じられましたので」
出かけている間にいろんな出来事はあった。だけど、私自身の気持ちの変化で思い当たるのは1つだけ。
「あの、私、この旅で自分自身の気持ちに気づいたので、賢者様に好きですって言ったんです。賢者様も私のことを…その、愛してるって言ってくださって、改めて求婚されたんです」
「まぁ、おめでとうございます!」
メイドさんが笑顔でそう言ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
なんだかとても照れくさい。
「本当は私もミーナ様のお世話をするために旅行に同行させていただここうとしたのですけれど、旦那様が『今回は2人きりで出かけたい』とのことでしたので、断念してお見送りしたんです。きっと2人きりの時間が大事だったのでしょうね」
本当は私が海王様のお屋敷に行っていたのでしばらく離れ離れだったけれど、今にして思えばその離れていた時間も必要だったのかもしれない。
その後は少し部屋でうとうとし、夕食の時刻になったので呼ばれていくと、お屋敷の使用人の皆さんに
「「 ミーナ様、おめでとうございます! 」」
と言われ、照れてしまった。
「今日はミーナの好きなものばかりにしてくれたそうだ」
先に席についていた賢者様が笑顔で待っていた。
その日の夕食は本当に私の好きなものばかりで、盛り付けも凝っていた。
そして最後に出てきた小さなケーキには
『おめでとうございます 使用人一同』
と書かれたメッセージカードが添えられていて、とても嬉しかった。
ケーキを食す前に立ち上がり、そばに控えていた使用人の方々に向く。
「あ、あの、皆さん本当にありがとうございます。そしてこれからもよろしくお願いいたします!」
そう言ってペコリと挨拶すると、皆さんから拍手された。
ふと気づくと、いつのまにか賢者様が私の隣に立っていた。
「今までも、そしてこれからも、ミーナは私の大切な女性だ。みんなもよろしく頼む」
そう言うと私を抱きしめてキスしてきた。
みんなの前でキスなんてすごく恥ずかしかったけれど、拍手はさっきよりさらに大きくなっていた。
次回は5/1(土)に投稿予定です。




